第4回 オンラインセミナー「理系ブロッサム」RIKEI BLOSSOM 開催レポート

2025年7月12日、理系進学を志す女子高校生を対象にしたオンラインセミナー「第4回理系ブロッサム」を開催し、全国から約90人の高校生に参加いただきました。
当日は東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構・学際情報学府の横山広美教授と、教育系YouTuberのパイオニア葉一さんのトークセッションからセミナーが始まりました。その後、参加された女子高校生には、三菱グループの理系出身若手女性社員と現在理系を専攻している女子大学生、大学院生とのワークショップを通して、今後の進路を具体的に考えるきっかけとしてもらいました。

横山広美さん、葉一さんの
トークセッションからスタート

 最初に当財団の妹背正雄常務理事から開会の挨拶をさせていただいた後、理系出身の人文社会科学者である横山広美さん、教育系YouTuberの第一人者である葉一さんのトークセッションをスタートしました。横山さんはニュートリノ物理で博士号を取得の後、専門を科学技術社会論に変更。幅広い分野にわたる研究の一つとして、日本で理系を志す女性が少ない問題も扱っています。一方、葉一さんは東京学芸大学卒業後に営業職、塾講師を経て独立し、現在のチャンネル登録者は210万人以上を誇ります。  横山さんからは、物理学に目覚めて科学雑誌『Newton』を小脇にバスケットボールの部活に向かっていた中学時代のお話や、物理学と並行して文章を書くのも好きで、将来は科学について考えたり書いたりする人になりたかったというエピソードを語っていただきました。当時ぼんやりと想像していた理系と文系をつなぐ仕事を、現実のものとした横山さんのお話は、文理選択に悩む高校生の皆さんには、特に興味深く感じられたようです。葉一さんからは、先生に対して斜に構えていた高校時代に一人の恩師に出会ったことで、教師を目指し、教師とは別の道で教育に関わっているお話などを伺いました。  お二人の対話では、「女子は理数が苦手という日本に強く残るジェンダー・ステレオタイプが、理系女子を阻む一つの理由」という横山さんのお話に対して、「最終的には理系女子枠もなくなって、性別のカテゴライズのないフラットな世界になればいい」と葉一さんが発言。横山さんも「女性にとっても男性にとっても生きやすいインクルーシブ(すべてを包括する)な社会になってほしいと願っている」とお話されました。  対談後は、高校生からの質問に答える時間に。「漠然と理系を目指しているけれど、いつになったら自分の選択に確信が持てるのか」には「3カ月後かもしれないし5年後かもしれない。でもその間にもパズルのピースを少しずつ拾っていて、いつかきれいな絵が見えたときに確信めいたものが生まれるはず」。「学校の先生から『理系の授業は単位を取るのが厳しい』と言われているが本当か」には「確かに授業の数などは多かったりするけれど、それだけいろいろなことを学べるお得なコースと考えて」。「宇宙について学ぶのが大好きだけれど、将来は会計士になりたい」には、横山さんが油絵を習っていた自身の経験を例に「絵は趣味として続けられるけれど、物理は一人で勉強し続けられないと思った。進路選択にはいろんな考え方があっていい」など、お二人から丁寧な回答がありました。   最後にお二人からのメッセージとして、「理系科目に限らず、高校の授業は学問の基礎として確実に身に付けなくてはならないものと割り切って勉強するといい。その中から、例えば推し活のペンライトとか、スマホの半導体とか、身近な世界に学びとのつながりを見つけることで楽しみが広がるはず」(横山さん)、「ネットの情報には後ろ向きなものも多く含まれているので、それらに振り回されることなく、オープンキャンパスなどに行って、自分の目で実際に確かめることが大切」(葉一さん)などというアドバイスを頂きました。

理系に進んだ先輩方のアドバイスとは?

 続いて、三菱グループ各社で働く理系学部出身の若手女性社員(企業名は下記参照)とファシリテーターとして参加した理系の大学・大学院生、それぞれ28人に協力いただき、Zoomのブレイクアウトルームに分かれて、各3~4人の高校生と対話をしていただきました。アイスブレイクとして、まずは社員の自己紹介。高校生・大学生時代に興味を持ったことや、どんな学びを経験し、それが現在にどうつながっているかなどを語っていただき、フリートークでは、ファシリテーターのサポートもあって、会話がなごやかに進んでいきました。その後、組合せの変わった高校生とファシリテーターだけのチームに分かれ、どんな対話や気づきがあったのかなどを発表。そのチームで2回目の対話と、情報共有の場が設けられました。得られた情報をリフレクションし、さまざまな視点からの感想が受け取れるようにすることで理解を深めながらセミナーは進行しました。  トークの内容はグループによってさまざま。「苦手の科目をどう頑張って克服するか」「理系に進むにしてもどんな学科を選べばいいか」「部活と受験勉強を両立するには」など、さまざまな視点からの質問が飛び交いました。  社員の皆さんからは、「将来に対する答えのない問題に悩むより、どの方向にでも動き出せるよう最大限の勉強をしたうえで冷静な選択を」「大学、大学院、さらに就職してからも、新たな選択肢がどんどん増える。専攻・専門が何であろうと、学んだことは無駄にならず、選択の際の切り口になる」「大学は自ら学びを見つける場。どんな学部を選ぼうが、何を勉強するかは自分次第」など、自身の経験を基にしたアドバイスが聞かれました。また、自身も就職という進路選択の最中にあるファシリテーターからは、「どのタイミングでも、理系から文系への転向よりも文系から理系への転向のほうが難しいのは確か。だからとりあえず理系というのも選択としてはアリ」「理系に進んだからといって受講科目が全て理系の科目になるわけではない。教養課程では文系の必須科目もあるので安心してほしい」などの話もありました。大学生ファシリテーターの中には、高校生の時に本セミナーに参加した方がおり、より身近なアドバイスも寄せられていました。  最後に全員で感想を共有。「進路選択に自信が持てなかったけれど、進む道はいつでも変えられることが分かって安心した」など、参加する前の不安や悩みを払拭し、未来を見据えた感想が多く聞かれました。   設定された3時間はあっという間に過ぎ、参加した高校生にとっては、進路に関する重要なヒントを手に入れられたようです。

協力企業:AGC、キリンホールディングス、東京海上日動火災保険、ニコン、三菱化工機、三菱ガス化学、三菱重工業、三菱商事、三菱地所設計、三菱製鋼、三菱倉庫、三菱総合研究所、三菱マテリアル、三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、明治安田生命保険 (16社)

アンケート結果
イラスト

参加した感想を聞かせていただきました!

セミナー後、69人の方から、素晴らしいコメントを頂きましたので、ご紹介します。

参加いただいた皆さまの都道府県

Q1 理系ブロッサム全体の評価を
5点満点で教えてください。

グラフ:全体の評価 5点 52人 / 4点 13人 / 3点 1人 / 2点 1人 / 1点 2人

Q2 理系ブロッサムの感想を
教えてください。

理系は難しく厳しい世界だと言われ不安がありましたが、実際に学部に入っている学生の方々や企業に就職されている方の話を聞くことができて、自信を持つことができたし、理系の中の選択肢が広がり、有意義な時間を過ごせました。

どんなイベントか想像がつかず不安だったのですが、気軽に質問や思いを言い合うことができて、とても有意義な時間になりました。また私と同じような悩みを持っている仲間が全国にいることが分かって安心したし、とても刺激になりました。

いろんな地域の高校生や学生、社会人の方とお話して、自分の興味のある分野に突き進んでいるのが素敵だなと思いました。私も自分が興味のある職業につけるように頑張ろうと思います。

Q3 理系ブロッサムへの参加を、
後輩に薦めたいと思いますか?

グラフ:オススメ度合い 評価10 30人 / 評価9 13人 / 評価8 16人 / 評価7 5人 / 評価6 3人 / 評価5 2人

【薦めたい理由】

先輩方の貴重な意見や、同じ高校生たちの新しい着眼点などを知ることができて視野が広がるから。

文理選択に迷っているならば先輩の意見を聞くことも大切だし、文理選択は今後の人生を変えることになるので、真剣に考えるべきと思うから。

将来のビジョンがまだつかみきれなくて悩んでいましたが、たくさんのことを知ることができたので、進路について悩んでいる人にはぜひ薦めたいです。

悩んでいた進路への気持ちが少し楽になったので、お薦めしたいです。今回は学校でチラシをもらったのがきっかけで参加したので、チラシをもらった後輩の子がいたら「理系に進もうか迷っているのなら参加してみるといいよー」と言ってあげたいです。

Q4 トークセッションについての
感想を教えてください。

葉一さんの動画はずっと見ていたので、直接お話を聞けて嬉しかったです。横山さんからもとても参考になるお話を伺い、今後心の支えになりそうです。

女子だって理系に進んでいいとはっきり言っていただき、自信がつきました。日常の小さなきっかけから、理系への興味を深めたいと思った。

難しい話ばかりだったらどうしようと不安でしたが、とても分かりやすく、かつ心に響く深い内容があって、時間があっという間に過ぎました。

すごすぎる存在のお二人にも迷った時期があったと知り、少し安心しました。本当に好きなことが見つかった時のために、日々こつこつと勉強したいです。

横山先生のお話はとても分かりやすく、私も将来こんな女性になりたいと思いました。大学で学んだことと全く違う分野でも、学んだロジックは活かせるというお話が印象に残りました。文理選択に性別は関係ないということも改めて感じました。

Q5 企業講師との対話の感想を教えてください。

自分が志望している会社の方の話も聞けて、文理選択にとても迷っていたけれど少しスッキリしました。

高校から就職までのお話を聞き、自分の将来にも役立てていきたいと思いました。まだ選択肢がたくさんあり、何にでもなれる私たちだからこそ、自分で情報を集めてやりたいことに向かって頑張っていきたいと思います。

実際に働いている方のお話を聞いて、仕事につくまでの道のりは本当に人それぞれなんだと思いました。そして、決められた型はないので、自分なりに新しい方法を考えてみようと思いました。

グループをシャッフルすることで、違ったケースを知ることができ、理系といってもさまざまな種類があって、選択肢も多いことを実感することができました。

理系を選択して学んだ先に、どのような仕事があるのか、そのやりがい、さらに理系を学んだからこそ活かせることなどを教えていただき、将来の選択肢が広がりました。また、必ずしも大学で専門的に学んだことを仕事にするわけでもなく、大学で学んだことはいろんな分野で活かすことができると聞き、とてもワクワクしました。

その他のコメント

自分が目指している大学などを諦めずに進んで良いということを、このセミナーを通じて実感しました。

最初は不安だったけれど、学生スタッフの皆さんのおかげもあって、リラックスして発言することができました。

トークセッションの後に、他のグループのメンバーと感想や意見を共有する場があったのが良かった。考えを整理でき、他の人がどのような話を聞いたのかが分かった。

学校だけでは得られないたくさんの情報を得ることができました。クラスメートともシェアしてみようと思います。

なりたい職業として思いつく候補が1つしかなく、他の職業を考えることができなかったが、このセミナーに参加して、自分の選択肢を絞りすぎず、いろいろな可能性を考えながら選択していけばいいということを学びました。結果的に失敗しても、その経験は大きな財産となり、きっと今後につながる糧になることも知りました。

イラスト
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