カテゴリー 22024年採択

一般社団法人KURUMIRAI

対象者数 900名 | 助成額 500万円

https://www.kurumirai.or.jp/

Program『高校生が作るギフト』

 本プログラムは、高校生が地域の協賛金を得て、自校地域から掲載商品を集め、「○○高校の生徒が作るカタログギフト」を製作・販売するもの。年間を通じて販売し、その収益金を学校へ教育支援金として還元若しくは、次年度の製作費に充当される。ギフト購入者には地域貢献、地域共創、高校生の社会課題解決への貢献、そして地域活性化という多重的なメリットを提供する。

 地域と共創する商品選定、生徒主体のカタログ制作、多様な販売チャネル、地域貢献と教育効果という、持続可能なプログラム構成となっている。

 成果としては、地域活性化、高校教育改革、生徒の社会貢献意識向上、地域住民との交流促進、また持続可能な地域社会の形成が期待される。

 生徒の成長と地域活性化を同時に実現する、教育効果と社会貢献効果を兼ね備えた画期的な取り組みであり、生徒の地域愛の育成に大きく貢献できるプログラム。地域の未来を担う高校生と地域が協働することで、持続可能かつ、循環型社会の形成に大きく期待できる。

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生徒の成長と地域の活性化を同時に実現する、実践型の学習プログラム

 「高校生が作るギフト」は、高校生がカタログギフトの企画・制作・販売を通して多様なスキルを育む、実践型の学習プログラムである。カタログギフトとは、贈られたカタログの中から好みの商品を選べるギフトのこと。「選ぶ楽しさ」「不要な商品を贈られるムダがない」といった魅力から、結婚式の引き出物や企業の記念品など幅広く活用されている。「本プログラムのカタログギフトには、高校生が暮らす地域の魅力が詰まっています。生徒たちは、掲載商品の選定から事業者との掲載交渉、カタログのデザイン、広報・販売戦略の立案・実行まで、一連のプロセスを地域と連携しながら経験することで、『実社会で役立つスキルの習得』と『地域課題解決への貢献』を同時に実現できるのです」と語るのは、同プログラムを手掛ける一般社団法人KURUMIRAI(くるみらい)の代表理事、山室徳紘氏だ。

 プログラムを通して習得できるスキルとしては、大きく以下の6つが挙げられる。まずは自ら考え、行動することで養われる主体性。次に、チームでの協働や地域の大人との交流を通じて育まれるコミュニケーション力。第三に、地域産業の現状を把握・分析することで培われる課題発見・解決力。第四に、カタログ制作やプレゼンを通じて磨かれる表現力。第五に、実際のビジネスに触れることで得られる社会理解や職業観。そして最後に、確かな成果物や成功体験から生まれる自己肯定感。これら実社会で求められる6つの力を総合的に養成できることが、本プログラムの大きな魅力と言える。

 また、地域社会に対する貢献も期待できる。「本プログラムでは、参加する生徒はもちろん、地域住民や購入者も含め、関わるすべての人が幸せになることを目指しています。生徒たちはカタログ制作を通じて、自身が暮らす地域の魅力や、その背景にある歴史や文化、そして地域の大人たちの“想い”に改めて気づくことで、『地元は誇れる場所だ』『将来は地元で働きたい』という意識が芽生えます。地域にとっては、魅力発信につながるのはもちろん、地域の将来を担う若者との接点を創出・拡大する機会になるなど、双方に意義のある取組みと言えるでしょう」と山室氏は語る。

一般社団法人KURUMIRAIのサイト https://www.kurumirai.or.jp/
同法人を立ち上げた山室氏はもともとはITエンジニアとして経験を積み、2017年に地元・熊本県で独立。システム保守を軸に飲食、美容など事業を多角化する中で、地域密着型のカタログギフト制作を担う「株式会社けんさんぎふと」を設立した。本プログラムの開発・運営にあたって同社を「みらふるホールディングス」に改組するとともに、一般社団法人KURUMIRAIを設立し、代表を務めている。

プログラムの運営組織として一般社団法人を設立したのは「営利目的でなく、地域の教育や産業に貢献したいという活動方針を明確にするため。後発企業に営利目的で利用されないよう、株式会社けんさんぎふとにてプログラムの特許も取得しました」と山室氏は語る。「KURUMIRAI」という法人名には、「やがて来る未来に子どもたちをつなげたい」との想いが込められているという。

地域理解から社会への発信まで、一貫した挑戦が確かな成長を促す

 本プログラムの導入から実施に至る流れを見ていこう。KURUMIRAIの活動は、プログラムに興味を持った学校を訪問しプレゼンテーションすることから始まる。「近年、特に地方都市の高校では、『探究学習の質を高めたい』『生徒に社会とつながる経験をさせたい』『地域に開かれた学びを実践したい』といったニーズが高まっています。そうした学校に本プログラムの魅力を伝えると、非常に興味を持っていただけますが、実現するには教員の負担やカリキュラムへの反映といった体制づくりが課題となります。そこで私たちは、学校ごとの要望に応じた実施案の設計から、教材や管理アプリの提供、地域社会への呼びかけ、コーディネーターを配置しての伴走、オンラインショップなど販路の提供まで、トータルに支援することをお伝えして、導入を後押しします」と山室氏は多岐にわたる役割を語る。

 学校ごとの状況に応じて導入できるよう、プログラムの自由度は非常に高い。「4~12月の通年型、4~9月の前期集中型など複数のパターンを用意しており、探究授業に組み込むほか、キャリア教育や部活動など幅広い枠組みで柔軟に導入できます。当初は数名の有志による活動からスタートし、次第に周囲の生徒を巻き込んで全校化していくケースもあります」(山室氏)。

 実際のプログラムは、大きく「インプット期」「企画・制作期」「アウトプット期」の3期に分けられる。まずインプット期は、地域の産業・商品について学ぶことからスタート。単なる調べ学習に終わらず、地域企業へのリサーチを通じて、背景にある歴史や地理、文化への理解を深めながら、現状と課題を分析する。

 続く企画・制作期では、「この地域の魅力は何か」「どんな価値を、誰にどう届けるか」を言語化し、カタログギフトのコンセプトを決定。これに基づいて掲載商品を選定し、実際に企業を訪問して交渉を進める中で、ビジネスの流れや社会との約束事を体得できる。掲載する商品ラインナップが固まれば、構成やパッケージデザイン、さらには広報・販売戦略を検討し、カタログに込めた想いを「伝わる形」に変換していく。

 最終ステップとなる「アウトプット期」には、完成したカタログギフトを完成報告会などの学校行事やSNS、オンラインショップなどを通じて広く社会に発信。販売による収益は教育支援金として学校に還元される仕組みだ。

 これら一連の取組みを通じて、生徒たちは多くの学びを得るが、山室氏が特に重視するのが「自分にもできる」という自己肯定感だという。「プログラムに参加したある生徒が、『人と話すのが苦手なので工場への就職が決まっていたが、地域企業の皆さんがとても親切で、話すことが楽しいと感じられた。もっと早くプログラムを受けていたら違う進路も考えたかも』と語ってくれたのが印象に残っています。他にも、当初はほとんど話せなかった生徒が、完成報告会で壇上に立って懸命に説明するなど、活動前後で明らかに表情が変わっている生徒の姿が、このプログラムの意義を物語っています」と山室氏は確かな手応えを語る。

2023年度にプログラムの先陣を切った熊本県立小国高校は、「全国高校生マイプロジェクトアワード」で表彰されるなど、高い評価を糧に活動を継続。3年目となる2025年度は、カタログギフト制作にととまらず、複数の食品メーカーにコラボ商品の開発を提案し、地域の新たな魅力を創出するなど、大人たちの想像を超える成果をあげている。

完成報告会は、協力事業者や保護者、地域の関係者を招いて開催され、活動の成果を広く発信する場となっている。「完成報告会の動画やスライドを共有するとともに、優れた取組みを表彰するなど、参加校同士で刺激や気づきを与え合う場を作りたい。将来的には全国から参加校を集めて『カタログギフト甲子園』を開催したいですね」と山室氏はビジョンを語る。

プログラムの価値をより多くの学校に届けるため、弛まぬ改善を続けていく

 本プログラムがスタートしたのは2023年の春、地元・熊本の小国高校の生徒から「探究学習の一環としてカタログギフトを制作したい」との相談を受けたことが端緒だという。「こちらも『もっと地域活性化に貢献できないか』との想いを抱えていたところで、生徒たちの話を聞くうちに『地域に暮らす高校生だからこそ、地域の魅力を発掘・発信できる』との発想を得て、同校と二人三脚でプログラムを作り上げました」と山室氏は振り返る。

 同校での成果を糧に、翌2024年度から社団法人化とともに他校への展開を本格化し、香川、福岡、佐賀、大阪、沖縄で計6校がプログラムを導入。2025年度には累計16校まで拡大している。各校とも実施後の満足度は非常に高く、多くの生徒が「地域の人々との関わりが増えた」「地域への愛着が深まった」と回答。スキルアップを実感する生徒も多く、特に対人コミュニケーションスキルが向上したとの声が多く聞こえる。「実際、多くの生徒がつまずいたのが電話でのアポイント取りでした。時には断られて落ち込むこともありましたが、段階的な練習やロールプレイングを通じて少しずつ不安をやわらげ、最終的には堂々と対話できるようになったのは、社会に出ていく上で貴重な体験になったはずです」(山室氏)。

 複数校での実施・伴走を通じて、同法人が得られた学びも大きかったという。まず課題となったのが、運営側の負荷低減だ。長期間にわたって伴走する労力は大きなものがあり、今後、より多くの学校に提供していくためには、いかに効率化するかが問われる。そこで2025年度は、培ってきた仕組みやノウハウをガイドブック化。さらに、山室氏のもう一つのビジネス分野でもあるITのノウハウを活かして、事業者とのやり取りをデジタル化する専用アプリを開発するなどDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進している。

 導入校の拡大に向けては、従来の「まずは学校に提案し、学校から生徒に告知する」という手法に加え、「SNSなどを通じて生徒や保護者に直接、働きかける」手法も検討している。またプログラム継続に向けた資金調達の仕組みとして、教育現場への支援をCSRや採用ブランディング強化につなげる事業モデル「ジツガク。を開発し、企業に提案して後援拡大に努めている。実はこの「ジツガク。」のアイデアも小国高校の生徒からヒントをもらったのだと山室氏は話す。「小国高校の生徒が実際に協賛企業へのアプローチを行う中で、『単に協賛をお願いするだけではなく、企業側にとってのメリットや意義を整理し、価値として提示しなければ継続的な関係構築は難しい』という課題認識が生まれていました。このような現場での実践と気づきを背景に、「ジツガク。」の構想が生まれました」。 生徒たちが実践の中から得た知見や課題意識をKURUMIRAIが受け止め、現実的なソリューションとして形にしていくという連携により、「高校生が作るギフト」は年々進化を見せている。

「本プログラムの目的は、ギフトを作るプロセスで生徒一人ひとりの才能(ギフト)を引き出し、地域に恩恵(ギフト)を届けるという“3つのギフト”を叶えること。私たちの地元・熊本に限らず、全国各地で過疎化や学校の統廃合、人手不足が深刻化する中、本プログラムの導入により、地域の魅力を発信しながら、地域で活躍したいという若者が増えれば、課題解決の一助になり得ると考えています。そのためには、やはり参加校を増やしていくことが不可欠ですので、2026年度に30校、2027年度には100校達成を目標に取り組んでいます」と山室氏は将来へのビジョンを力強く語った。

2025年度には熊本放送の協力を得てテレビCMも実現。出演した高校生にとって貴重な体験になると同時に、学校の魅力向上にもつながったという。「CMはプログラムの認知拡大の手段と思われがちですが、それ以上に生徒たちに非日常を体験してもらうことを重視しました。それが本プログラムの大きな魅力だと思っています」と山室氏は狙いを語る。

2025年度には新規導入した沖縄県立開邦高校では、女子生徒4名の主導でプログラムを実施。KURUMIRAIのコーディネーターは現地には赴かず、オンラインによるサポートのみでカタログギフトを完成させた。「地域を問わず、全国どこの高校でも導入できるモデルケースとなりました」と山室氏は評価する。

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