カテゴリー 22024年採択

一般社団法人52Hz

対象者数 500名 | 助成額 566.6万円

http://52hz.world/

Program中高生が自分らしくグローバルに輝くために
探究活動を加速させる伴走プログラム【52Hz Accelerator】

 いま最も勢いのある海外大進学コミュニティ52Hzから始動するこのプログラムでは、グローバルな進路を志しつつも社会の障壁にぶつかって踏み出せずにいる中高生に対して、一人一人の内面から湧き起こる「夢中」と、現役海外大生メンターや仲間との化学反応から生まれる「憧れ」をもとに、グローバルな視野で自分らしい生き方を夢中になって実現するための「自己開拓力」を育成することを目指す。

 自身のワクワクを深掘ることでユニークな進路・キャリアを実現した多様な海外大生が、ロールモデルとなって意欲的な中高生が相互に高め合う良質なコミュニティに一年間伴走し、一人一人が探究学習・課外活動に没頭できるよう促す。

 VUCA時代を生きる若者には、他者との関わりの中で自己を自覚・受容し、内面から湧き起こるワクワク・モヤモヤを起点に実際にアクションを起こして、自分なりに仮説検証することを通じて個性を活かした社会との関わり方を自律的に探究し、独自のインパクトをもたらせると信じて未来に向かって主体的に歩み続ける力が求められている。

 そこで、内発的な知的好奇心をもとにワクワクを追究するだけでなく、プロジェクトを発展させるための論理的思考力や戦略的想像力なども育むことで、行為主体性(エージェンシー)を培う成功・挫折経験を積み重ね、将来のチャレンジへの原動力となる自己効力感などの向上に繋げる。

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日本中の孤独な鯨たちに寄せた思い

 52Hzという印象に残る法人名は、実在する「世界一孤独なクジラ」に由来する。他のクジラには聞き取れない52Hzという高い周波数で鳴きながら大海をさまよう一頭のクジラの孤独を、海外大学へ進学したくても理解を得られない中高生の孤独と重ね合わせたもので、そのアイデアはコミュニティに届いた匿名の高校生の投稿だったという。

「元々52Hzは代表理事を務める梅澤凌我が2022年に立ち上げた、海外大学への進学に興味を持つ人のコミュニティでした。2024年に、持続的な組織として海外大進学を切り口に主体的な進路選択をサポートするために法人化し、同時に本プログラムを開始しました」と語るのは事業責任者で理事を務める谷津凜勇氏。プログラム立ち上げの背景には、日本における海外大学進学の断念率が80%という現実がある。海外大学への進学など前例のない進路を目指しても学校から十分な協力が得られないケースも少なくない。梅澤氏も谷津氏もそうした障壁を乗り越えて、海外の有名大学に進学した経験を持つ。また両者ともに関西の出身で、地方と東京周辺との情報や機会の格差も実感し、孤独感や無力感を抱く「52Hzのクジラたち」が、地方に多く存在することも知っている。そこで、どこからでも参加できるオンライン完結型のプログラムで全国の意欲的な中高生をつなぎ、互いに切磋琢磨できる場を用意するという骨子が生まれた。

 プログラムは5~6人の少人数ゼミの形で週1回、10カ月にわたって続けられ、日常的に受講生と接するのは、メイトと呼ばれる現役の海外大学生だ。彼らからは1 on 1での個別相談も受けられる。また希望に応じて追加のゼミも用意し、その他にも月に1~2回程度、若手イノベーターによるレクチャーも行われる。しかし、そこで海外大学受験のノウハウを教えることはない。「受験そのものを目標にするのではなく、探究活動を通じて内省と試行錯誤を繰り返したという自己効力感を持って、この先どんな道でも進んでいける人材を育てたいと考えています。海外進学や国内の総合型選抜入試は、あくまでもその途上にある選択肢にすぎないと思っています」と谷津氏。ゼミの内容は、「まず自己分析をして自身の興味・関心を整理します。社会課題も含めた各々の関心事を深掘りし、仮説検証と試行錯誤を繰り返して、自身のプロジェクトを推進していく探究学習の支援を行います」と谷津氏は話す。プロジェクトは、ボランティア、生徒会、学生団体、模擬国連、課題研究と形は問わない。仮説検証と試行錯誤のプロセスを身につければ他にも応用でき、結果として自身の望む道も拓けると断言する。

 パイロットプログラムとして実施した、2024年度0期の受講者は約30人。小論文を課した書類選考の後に面談を行い、プログラムとの相性を考慮した上で決定した。倍率は約3倍という狭き門。受講者の約半分は、参加者数800人超の規模を持つコミュニティ「52Hz」からの応募で、残り半分がSNSやプレスリリースを介しての応募だった。「選考では応募者とプログラムとの“相性”を一番に考え、心の中に本当にやってみたいことを持っているかどうかを重視しています」と語るのは、プログラム実行統括を担う橘優香氏。応募者それぞれの興味や関心、学校生活での挑戦、バックグラウンドなどを深く掘り下げて判断しているという。

「1年目に、海外大学生がゼミごとに多様な中高生に合わせて、それぞれ独自にコンテンツを提供するというスタイルを試した結果、2年目に向けて、ワークシートなどをベースにした、ある程度汎用性のあるスタイルへの変換の見通しも立ってきました。1年目の卒業生たちは、探究活動での全国規模コンテスト入賞や起業家育成プログラムへの採択、進路に関しても有名海外大学への合格や奨学金の獲得、また総合型選抜との併願で国内の難関大学に進んだ例、進学せずに起業や海外でのインターンに取り組む例など、想像以上にバラエティに富んだ成果を見せてくれました」と谷津氏は振り返る。全体の7割程度は海外大学進学を目指しつつも、プログラムを体験するにつれ進路選択に対して柔軟に考えられるようになり、納得感を持って選んだ進路に進む受講生が多かったという。

 また、プログラム内で学びを完結させず、社会との接続が可能なアクションに促しているのも特徴だ。その代わり、各種コンテストへの参加や企業・自治体との協業、シンポジウムの登壇などへの一歩を、海外大学生が自らの経験を基に後押しする。主体的に自らの進路・キャリアに踏み出すスキルを身に付けてほしいからだ。

52Hz Acceleratorのオンラインゼミの様子

試運転の0期を経て2025年に本格始動

 0期はプログラムの可能性を十分に示してくれた一方で、いくつかの修正や方向転換の必要性も示唆した。2025年度の第1期募集要項で、改めて「受験対応は対象外」と明示したのもその一つだ。ただし、ギャップイヤーの取得、内部進学が決まっているといった理由で、受験以外に力を注ぎたいとする高3生は受講可能としている。

 また、費用の有料化も大きな変更点だ。金額は入学金85,000円、受講料月額39,800円。ただし、東京・神奈川・千葉・埼玉以外の道府県からの参加者は入学金が免除で、受講費も家庭環境に応じて奨学金制度を適用するため、実質の月額は平均約24,000円程度に収まっているという。

「教育事業は長く取り組み続けなければ、本質的なインパクトを出すことができません。有料化は今後も法人として持続的に価値を届け続けるための施策の一つです」と谷津氏。また、地方からの受講生に対する入学金免除は非常に有効で、受講生の半分以上を地方の中高生が占め、地域格差の解消に一役買う結果を生んだ。

 カリキュラムにもマイナーチェンジが施された。ゼミごとの調整が多かった0期の経験から、ある程度統一したカリキュラムに移行することで、属人化を防ぎゼミごとのブレを低減できた。また、直接受講生と関わるメイトのスタンスにも変更が加えられた。「海外大学生自身もグローバルで主体的な進路選択のために模索中という姿勢をより自覚してもらうため、“伴走”から高校生と共に挑戦し続ける“共走”メイトとして再定義しました」と語る谷津氏。海外大学生を“教師的な存在”ではなく、“切磋琢磨する意欲的な仲間”と位置付けることで、お互いに学びの価値を実感できる教育モデルを確立したいと語る。

 また、橘氏もメイトの選抜に関し、「自分の過去の経験をシェアして教えてあげるというよりは、今も試行錯誤しながら挑戦している自分の様子を見せながら、受講生に等身大の手助けができる方を選んでいます」と語った。

現役大学生にしていくつもの事業を展開する起業家・フミコーンさん(ZOOM画像中段左)の特別レクチャーなど、外部ゲストを招いてのイベントも実施

自分の人生の舵取りができる人材を輩出する

 5~6人という少人数で構成されるゼミだけに、メンバーの組み合わせは非常に重要な要素だという。最初のグループ分けは面接の結果から行うが、その後何度か組み換えることもある。例えば新しい気づきを得たり、一つの壁を乗り越えたと思われる受講生が現れれば、フェーズ感を合わせるよう組み換えを行う。そのため運営スタッフは、受講生と何度も面談を繰り返すという。「海外大学生メイトも含め、似た課題感を持ち、同じような成長過程にいる受講生を、学年を問わず集めるようにしています」(谷津氏)。受講生の成長については、4観点・10段階のルーブリックを作成。海外大学生メイトにも同じルーブリックを使い、自己・相互の360°評価を定期的に重ねて可視化している。

 眼前の目標としての海外を後押しすることもあるが、プログラムの本来の目的は受験対策ではないという内容を理解していただくために、保護者に対するケアにも気を遣っている。オンラインで3カ月に1回程度の保護者会を開催し、毎回5~10人程度が参加している。その結果保護者との信頼感も次第に醸成されてきて、「受験勉強以外には全く興味がなかった子が、さまざまなことに関心を持つようになった」「子どもの生き生きとした表情を見るうちに、勉強だけではないことに気がついた」という声もあり、保護者側の価値観にも変化が見られるという。

 継続性のある枠組みが整いつつある中、外部連携にも力を入れている。一般社団法人 ウィルドアからプログラム設計やメンター研修などの面でサポートを受けているほか、株式会社 ベネッセコーポレーションとワークショップの設計などで協業を進めているという。広報活動においては、ネットによる周知だけでなく、地方の学校へ直接訪問しての出張授業や説明会なども精力的に行っており、その成果も徐々に出ているという。

 プログラム終了時に発行される修了証は、入試時の探究活動の証明として機能もするが、受講生が獲得する最も大切なものは自己効力感。そして活動の真の発表の場は、自身の手によって見つけた進路と、その後のキャリア形成にこそあると言える。「目指す人材像を一言で言い表せば“自分の人生の舵取りができる人”です」と谷津氏。52Hzの鳴き声は、仲間たちに確実に届き始めている。

 

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