Programワカモノ未来共創部
~自分たちのアイデアで病院や暮らしの現場を変えてみよう!~
全国の病院や学会と連携し、各地で開催される共創イベントを舞台にワカモノ(主に高校生)の社会参画を推進するプログラム。社会参画型スタディツアーとして、地域体験のインプットに留まらず、自身の取り組みに関する発表・提案や、ブース出展、スタッフ参加など、共創イベントで何かしらの役割を担ってもらい、地域共創を自分ごと化して体験してもらう。ワカモノが各地を訪れ、多様な地域住民との交流を通じて、地域で新たな共創プロジェクトの萌芽を目指す。
医療系の進路志望者に限らず、多様な高校生たちに、実際の医療や暮らしの現場を体験してもらい、豊かな感性と溢れる情熱で地域をどんどん変化させていってもらう。
病院マーケティングサミットJAPANが連携している多くの医療・介護・福祉関係者が本プロジェクトに賛同し、ワカモノとの交流を起爆剤にした未来共創が各地で始まっている。180名を超えるメンターの背景は多岐にわたり、受講生の興味ある分野の第一線で活躍するメンターと出会える。「自分たちのアイデアで社会の現場が変わるなんて面白い!」と思ってくれるワカモノを、多彩なメンター陣がさらにモチベートしていく。
地域、分野、世代を超えた共創の経験を通じて、受講生には「未来づくりの主語は自分達ワカモノ」と実感してもらい、プログラム期間終了後も各地での新たな共創に積極的に挑戦していただく。
<主なプログラム>社会参画型スタディツアー(現場体験、未来アイデアの企画・提案、実装など)

活動レポートReport
大人たちの背中を思いきり蹴飛ばしてほしいという思い
一般社団法人病院マーケティングサミットJAPANが設立されたのは2018年。もともとは循環器内科医でもある竹田陽介代表理事の人脈を基に、病院広報関連の勉強会という形でスタートした。年に1回総会を開き、各地で実践されている共創プロジェクトの事例を発表し合ったり、他分野の専門家の講演を聞いたりしながら情報交換をするというコミュニティで、掲げたテーマは「すこやかな暮らしの共創」。ここで言う「すこやか」とは、身体的健康のみを指すのではなく、ウェルビーイングやウェルネスという精神的・社会的・文化的側面までをも含み(WHOの健康の定義と同じ)、そうした観点から病院と地域の関係を考え直そうというものだった。
各地の医療法人や医療関係者を中心に、コミュニティは年々広がりを見せ、核となる病院などの主催によるイベントも数多く開催されるようになったが、そうした中で竹田代表理事は、若干の停滞を感じるようになったという。「大人たちだけで組織立って動いていると、どうしてもさまざまな事情でスピード感が削がれます。この活動に若い世代を引き入れ、大人たちの背中を思いきり蹴飛ばしてほしいという思いで立ち上げたのが“ワカモノ未来共創部”というプログラムです」。ワカモノの主体は主に高校生だが、カタカナ表記にしたわけは、年齢や身体的背景によらず挑戦する心さえあれば、子どもでも高齢者でも障害があっても誰もが死ぬまでワカモノという意を示している。
「ワカモノ未来共創部」という名を冠した活動は、2022年から高校生と同法人関係者によるZoomメンタリングという形で始まり、2023年になると病院などへのスタディツアーへと活動の幅を広げていった。スタディツアーとは、参加者を募り医療現場などの見学・体験をする企画だが、その他にも主に病院などが主催する各地のイベント内でのカンファレンス登壇やブース出展、アイデア提案、運営スタッフとしての参加など、多種多様な共創活動へと形態を広げながら発展していった。その中で、参加する高校生が必ずしも医療関連志望ではなく、割合としてはむしろ少ないということも分かってきた。「将来の進路や課題解決という堅苦しい話ではなく、単純に『面白そう』『ワクワクする』という動機から発生している活動。そこに医療という非日常の舞台を持ち込むことで、さまざまな発想が生まれやすくなるのではないでしょうか」と竹田代表理事は語る。病院を共創活動のハブとするという発想は、病院とは日常的にやや距離のある若い世代には抵抗感なく受け入れられたのだろう。
2023年に実施された県立熊本高等学校×大隅鹿屋病院のスタディツアー
「未来共創ドラフト会議」をはじめさまざまな企画がスタート
これまでの活動の中から生まれたアイデアの一つとして、「あんこエネルギーチャージ×夜勤・救急外来」がある。佐賀県の老舗菓子店がアスリートの要請で開発した“飲むあんこ” 「餡MMu (あんむー)」の商品パッケージに、病院ごとのオリジナルデザインのシールを貼り、夜勤の栄養補給だけでなく、メッセージや進捗確認なども書き込めるコミュニケーションツールとしての機能も付加した。
病院オリジナルデザインのシールを貼った「あんこエネルギーチャージ×夜勤・救急外来」
他にも東京の高校生と静岡県の病院、スーパーの連携で開発されたのが「健康づくりインクルーシブ弁当」。不揃いで商品価値のない野菜を活かし、フードロス削減に寄与する活動だが、高齢や障がいがあっても活躍するインクルーシブ社会の実現に向けたメッセージも込めている。「特許なんて大それたものではなく、開発費もさほどかからない、ワカモノたちと専門家たちの自由で多様な遊び心、アイデアから生まれる共創活動がほとんどです」と竹田代表理事。
フードロス削減にも寄与する「健康づくりインクルーシブ弁当」
病院・企業を舞台としたアイデアをプレゼンするワカモノに対して、経営者や専門家がドラフト指名をして社会実装の機会を創出する「未来共創ドラフト会議」も各地で回を重ねて開催されている。金銭支援などの確約はないが、業界とのネットワーク構築というインセンティブが発案者には与えられる。人と業界を結びつけるマッチング企画でもあるドラフト会議とは別に、参加者は共通するものの社会実装を前提としたキックオフ企画として実施したのが「未来共創オークション」だ。ワカモノが関わっている商品を事前に受け取り、それらを試食したり試用したうえでオンラインのプレゼンを聞き、共創のオファーという入札を行う。
2025年度は、従来の活動から新たな発想が生まれ、波及的に次々と取組みが生まれていった。2025年7月には「未来共創ドラフト会議』のスピンオフ企画として、東熊本第二病院を舞台に「ミライ病院長オーディション』という企画も実現。もちろん実際の病院長を決めるわけではないが、優勝者には外部アドバイザーとして、1年間の任期で実際の病院経営に参画(オンライン、対面)してもらうという画期的な内容だ。全国から数多くのエントリーがあり、書類審査を経て本選で病院・地域の関係者を前にプレゼンを行ったのは、中学生、高校生、大学生、医療関係者、一般企業社員など、まさに多様なワカモノたち。合格したのは三重の大学生だったが、地域に開かれた病院としてのさまざまなアイデアが発表され、審査員同士でも意見が割れた。
「2026年の9月には、『病院グルメ総選挙』という企画を小樽で行う予定です。病院食だけでなく、企業と病院がコラボしたスイーツとかオリジナルメニューとか。もちろんそこには高校生もエントリーしてくれるはずです」と竹田代表理事は話す。
高校生が1年間外部アドバイザーとして病院経営に参画する「ミライ病院長オーディション」
病院を地域インキュベーションのプラットフォームに
現在、こうした活動に賛同し、連携関係にある病院は約150。積極的に参加している常連の高校も50以上ある。年間30以上を数えるプログラムに参加する高校生は、2024年が395人、2025年が409人。カンファレンス登壇者は2024年が77人、2025年が117人にも上った。
活動に継続的に参加している高校生の変化・成長について竹田代表理事は次のように語る。「病院長や医療のエキスパートの話をただ聞いてメモを取っているうちは、コミュニケーションの重心が高校生の内側にあります。経験を積んで会話に社会性が加わってくると、その重心が相手との間に移ってくる。そうなると『今度改めてオンラインでお話しさせていただけますか』とか『私たちの学校に来て、今のお話をみんなに話していただけませんか』と自然と言えるようになります。そこから新たな共創が生まれていくのです」。
病院は地域における信頼資本の集積場だと竹田代表理事は捉えている。実際に、病院を取り巻く地域企業が同法人の活動に感銘を受け、協賛より一歩進んだ共創パートナーシップとして、さまざまな協力をしてくれる企業や団体が増えている。これこそ、病院が地域に芽吹くインキュベーションのプラットフォームとなるポテンシャルを持っている根拠だと竹田代表理事は自信を持って語る。
「2026年度からは、『ミライ病院応援団』と銘打って、地域の病院をハブにした価値共創活動をさらに進めたいと構想しています。単に企業・団体が医療現場を応援する企画のではなく、病院をハブにして皆で未来づくりを応援していく文化生態系を作るイメージです」と竹田代表理事。そうすることで、助成に頼らない自走も現実味を帯びてくるという手応えを感じているという。
「最近は各地の病院や団体から、新たな企画のアイデアがどんどん出てきますから、われわれは企画協力というスタンスが多くなっています。実際に一度共創したワカモノと地域の病院が、その後継続的に活動するケースも増えています。そういう文化が形成されることが最終的な目的ですから、それは大いに結構なことだと思って見守っています」と竹田代表理事は笑顔で語った。
各地で開催される「未来共創ドラフト会議」