カテゴリー 42024年採択

名古屋経済大学

対象者数 500名 | 助成額 300万円

https://www.nagoya-ku.ac.jp/

Program中部地方内陸地域の地域創生を担う人材を育成する実践的教養教育プログラム
~学部を横断する課題志向のサブスペシャリティ!~

 本学は、中部地方内陸地域(愛知県北部、岐阜県、長野県)の境界線に位置する大学としての特色と経験を踏まえ、地域創生を担う人材を育成する実践型教養教育プログラムを開発することを目指す。

 本プログラムでは、(1)1~2年次に地域の社会課題を通してリベラルアーツの基礎知識を学ぶ「体験型プロジェクト」および「日本文化プログラム」、(2)各学部2~4年次の専門教育で専門分野の学問体系の学び、(3)2~4年次に学部を横断する課題志向型で少人数対話型の「副専攻(サブスペシャリティー)」という重層的な学びを通して、同地域の地域創生を担う人材を育成する。

 本プログラムの「副専攻」では、①地域創生・観光・文化遺産、②環境共生・里山SDGs、③グローバルコミュニケーション、④AI・データサイエンス、の4コースを開設する。「副専攻」では中部地方内陸地域の行政・企業・NPO・博物館・美術館等の協力を得て、各機関の実務家・研究者による講義と対話を行う「概論」(2年前期)、「ワークショップⅠ」(2年後期)、「ワークショップⅡ」(3年前期)、各機関での見学・体験を実施する「エクスターンシップ」(3年後期)、参加学生の研究成果を発表する「修了報告」(4年後期)という3段階から構成される。「副専攻」への参加者は、修了要件を満たすことにより「副専攻履修証明書」が授与される。

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地域資源を活かした教育改革の始まり

 本プログラムの目的は、これまでに段階的に導入してきた複数のプログラムでの重層的な学びを通して、地域創生を担う人材を育成することである。その基盤となっているのが、2014年から10年以上にもわたって実施されてきた「体験型プロジェクト」だ。大学が立地する犬山市の豊富な地域資源を教育に活用する目的で、1~2年次の教養科目として設置された。

「当地には国宝犬山城を始めとして、歴史文化資源や自然資源が豊富に存在しています。こうした恵まれた環境を活かし、地域の企業やNPO、市民団体、文化施設などと連携して地域課題に向き合うことで、実践的で深い学びを得ようという考えの下に始まったのが体験型プロジェクトです」と語るのは、本プログラムのコーディネーターを務める中村真咲教授。2017年に地域に関する研究・教育の拠点として設立された「犬山学研究センター」のセンター長も務めている。同センターは、犬山市から文化財保存活用地域計画の推進を担う「犬山歴史文化ぷらっとフォーム」の事務局を任され、本プログラムに参加する学生も活動に参加している。

 体験型プロジェクトには、地域企業や近隣の各種施設、市議会などへの訪問学習や、小学生への学習支援、田植え体験など、毎年約30プランの科目が提示され、実際に現場に出向いて活動する内容のものが多く、火曜日の午後いっぱいをかけて実施されている。履修を希望する学生は、興味を持ったプランを一つ選び、教員と共に体験的な学びに取り組む。各プラン10~20人の定員で、全4学部(経済・経営・法・人間生活科学)の1年生のうち、約半数に当たる300人前後の学生が履修している。

 これに加えて2019年から始まったのが「日本文化プログラム」だ。当初は留学生向けに、日本の文化や歴史、社会について学んでもらうプログラムだったが、次第に日本人学生からも参加希望の声が上がるようになり、全学部生を対象に実施されるようになった。このプログラムは単位には含まれないものの、尾張裏千家の茶道入門や中部地方の城下町・宿場町の見学など、日本文化を体験的に学ぶ機会は日本人学生にとっても大いに魅力的だったようで、現在では留学生と日本人学生が一緒に参加する大きなプログラムへと発展している。実施されるのは年間6コース程度で参加者は毎回募集、重複しての参加も可能という柔軟さも魅力の一つだ。

「体験型プロジェクト」の一環として、美濃焼の窯元を訪ねた

美濃和紙の紙漉きを体験する学生

「日本文化プログラム」の尾張裏千家の茶道入門の様子

学部横断型の副専攻制度がもたらす新しい学び

 2024年度から導入された、2~4年次を対象とする「副専攻(サブスペシャリティ)」制度は、こうした取組みを統合し、さらに発展させた形となっている。副専攻とは所属学部での主専攻とは別に地域の具体的な社会課題を体系的に学ぶことができる制度で、近年多くの大学で導入が進んでいる。同学では少子高齢化や過疎化、観光振興、歴史文化遺産を生かしたまちづくりといった地域課題に対して、それぞれの専門分野からアプローチできる人材を育成するため、学部学科を横断し少人数対話型の授業形式で行われている。専門科目の単位として認定されるようになっており、導入初年度は「地域創生・観光・文化遺産」「環境共生・里山SDGs」「グローバルコミュニケーション」「数理・AI・データサイエンス」の4コースでスタートした。

 地域創生・観光・文化遺産コースでは、犬山市や周辺地域の企業、NPOと連携し、実際の地域創生や文化遺産のフィールドワークも実施。環境共生・里山SDGsコースでは、環境系企業やNPOの協力を得て、竹の伐採や竹垣の補修といった実作業を体験する機会も設けられている。グローバルコミュニケーションコースでは、トヨタ通商などの地域の商社やJICA中部国際センターとの連携に加え、ムスリムコミュニティとの交流なども行われている。また「数理・AI・データサイエンス」コースは、2025年度からは文部科学省の認定を受けて全学的なプログラムとして独立した。副専攻とは別の枠組みとはなったが、内容的には密接な関係があり、例えば観光データをどう分析するかといった相談などが、実際に行政機関や企業から大学に寄せられている。

「テーマの選定には、地域の行政機関や企業、NPO、高校などと協議が重ねられ、プログラム設計には約2年の準備期間が費やされました。体験型プロジェクトで培ってきたノウハウとネットワークを基盤としながら、各コースの担当教員が協力機関と相談を重ねて計画を練り上げました」と中村教授はその苦労を語る。

 カリキュラムは全コース共に、2年次から4年次まで段階的に構成されている。2年次には前期に講義形式で基礎的な知識を学ぶ「概論」を受講し、後期には「ワークショップⅠ」で実際に地域の団体や企業を訪問して見学や討論を行う。さらに、3年次前期の「ワークショップⅡ」では、アウトプット重視の授業を行う。企業やNPOの実務家からの問題提起に対して、グループディスカッションによって解決策を提案。さらに実務家からフィードバックを受けるというサイクルを3~4度繰り返し、最終回でミニシンポジウムを行う。3年次後期から4年次にかけては、各機関・企業・NPOでの見学や体験をする「エクスターンシップ」を実施。一般的なインターンシップより柔軟な設計となっていて、NPOや近隣の市町村の中間支援組織への派遣も可能で、週末参加や長期参加など、学生の状況に応じた多様な形態が認められている。そして4年次後期には、各自の研究成果を発表する「修了報告」を行い、修了要件を満たすことによって「副専攻履修証明書」が授与される。

 副専攻のフィールドワークやエクスターンシップなどの要素は、多くの学生にとってハードルが高い印象があり、履修率は新2年生の約10%に留まっている。しかし、意識の高い学生が集まる傾向にあり、授業中の熱心な姿勢に外部講師からも驚きの声が上がっている。また、専門学部の授業にも効果が現れ、「副専攻の履修生はプレゼンテーション能力が高く、具体的な事例を実際に目にする機会が多いため、実践力に優れている」という声が教員からも出ているという。また、学部を横断して学生が集まることで、異なる視点からの意見交換が活発になり、友人関係も学部を超えて広がる傾向にある。副専攻履修者のエクスターンシップ発表会や冊子を作成する計画もあり、そうした経験者の声が広まれば、20%の履修率を達成するのもそう遠くはないと中村教授は見ている。

副専攻の「環境共生・里山SDGs」コースでは、環境に配慮したドライストーンウォーリング(接着剤やモルタルを使わず、石の形状を活かして積み上げる技術)を体験

地方大学の新しいモデルとして

 同学が「中部地方内陸地域の地域創生を支える人材育成」という明確な目標を掲げ、これらのプログラムを実施してきた背景には、この地域が抱える深刻な問題がある。近年、大学が位置する愛知県の尾北地区では大学の統廃合が進み、大学のキャンパスや短期大学がいくつか閉鎖された。また、県境を越えた岐阜県の東濃、中濃、飛騨地域には大学がほとんど存在せず、これらの地域の高校生は大学進学時に名古屋や京都、関東など県外に出てしまうケースが多い。一度地域を離れると、卒業後も戻って来ない傾向が強く、地域の人材流出が問題となっている。そのため同学で地域創生を専門的に学び、卒業後に地元に戻って活躍する人材が育ってほしいという期待が、地域の高校や保護者には強くある。こうした声に応える形で、2026年度には近隣の高校生を大学に招いて副専攻の学びを体験し、その成果を発表するプレゼン大会を開催する計画もある。

「2026年度の入試からは、飛騨の高山市にも試験会場を設置しました。これを機に飛騨地域の高校との連携を深め、飛騨地域の企業と協力して飛騨出身の学生を対象とした奨学金制度を創設する構想も検討しています」と中村教授。

 地域の企業や行政機関からも、副専攻を学んだ学生への期待の声が寄せられている。企業にとっては、自社や地域のことをよく理解した学生を採用することで、離職率の低下が期待できるし、学生にとってもエクスターンシップなどを通じて実際の職場を知った上で就職先を選べるので、両者のミスマッチが減少する。まさに大学、学生、地域の「三方よし」が展開されている。

 2026年度の終わりには最初の副専攻修了生が社会に出る。彼らがどのような進路を選び、どのように地域で活躍していくのかによって、本プログラムの成果が明らかになる。都市部への大学集中が進む中、地方に残る大学には地域を支える人材を育成するという共通の使命がある。10年以上にわたる体験型プロジェクトによって地域との信頼関係やネットワーク、ノウハウを着実に蓄積し、副専攻という次のステップに進んだ同学の歩みは、全国の地方大学にとって示唆に富む事例となるだろう。

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