Program札南の総探(minaminQ)大学進学後も通用する専門的な研究への第一歩
~メタバースを活用した探究し続ける心の涵養と世界に貢献する人材の育成~
本校の総合的な探究の時間(minaminQ)は、進学後や就職後に必要な「探究する力」を養い、「探究し続ける心」を育むことを目的としている。
本校の探究活動の最大の特色は、1学年「探究基礎」における徹底した基礎学習を土台とし、個人の興味・関心に基づいた多様な探究テーマが生まれる点にある。生徒同士が意見を交わしながら、それぞれの視点や考えを共有することで、新たな発想が生まれ、独創性に富んだ探究テーマを生み出し、統計処理を用いたデータ分析で、仮説の科学的検証力の育成を目指す。
探究活動の過程では、専門の研究者から個別助言を受ける機会や、生徒同士の意見交換の場を増やすことで、生徒の探究意欲を高め、その質を向上させることができると考えている。本助成金により、これらの探究活動をさらに発展させ、持続可能な仕組みとして確立することを目指している。現実空間において多くの人々と直接やり取りをするのはもちろんのこと、より多くの視点に触れるためにメタバース空間を活用した意見交換の場を整備し、発表会などの機会を拡充することで、生徒の学びの深化と探究成果の社会還元をより一層強化していく。

活動レポートReport
メタバース空間にも広がる学び卒業後も「探究し続ける心」を
北海道内でも随一の進学校として名をはせる同校。知的好奇心や探究心が旺盛な生徒が多いので、そうした生徒の力や可能性をさらに引き出せたら面白いのでは、と考えていた。そうした生徒たちの可能性を信じ、それを伸ばすには時間や場所に捉われない自由な学びが大切であり、そのために探究を充実させることで、より多様な評価軸をもとに生徒が輝けるステージをつくることができる。元来、自由な校風が魅力で、生徒の学びへの主体性や独自性も強かった同校だけに、そうした原点回帰への思いもあった。
「minaminQ(みなみんく)」と銘打った同校の探究の特徴は、段階的にプログラムが組まれていること。1年次は探究基礎力を身に付けるべく、「学問探究」「新聞探究」「学校林作業」「統計処理」「プログラミング」「六華ゼミ」を実施。続く2年次は実践に移り、個人探究に挑む設計だ。ところが、新たな課題も発生する。1学年300名強の生徒たちが一斉に個人探究を進めれば、先生が個々に伴走できる時間や労力も限られてくる。個人探究ゆえの周囲との対話・議論不足も気になった。これをふまえ、助成を活用して環境整備に投資することを決定。探究アドバイザーを設置して対話と伴走の充実を図る。これが奏功し、「アリの生態研究」などとがった探究テーマを追究する生徒も出てきた。
さらに特筆すべきなのが、メタバースの活用だ。メタバースとは、ネット上に構築された三次元の仮想空間。生徒は「アバター」と呼ばれる自分の分身を操作し、バーチャル校舎の中で他の参加者と交流もできる。この機能を使って、探究発表会でのポスターセッションをメタバース上でも実施できるよう拡張したのだ。これなら誰でもどこからでも参加できる上、懸念していた対話性も多方面に広がる。参加は一般にも開放され、実際に地域住民や海外在住者の見学もあったそうだ。今後は大学や研究機関とも連携を深め、卒業生を探究メンターに据えるなどし、メタバース内での伴走体制強化も進める考えだ。
同校の探究を推進する山後裕紀先生らは、希望を胸にこう語る。「学校に探究文化を根付かせ、大学進学後、あるいはその後の社会でも生きる『探究し続ける心』を涵養したい」。まさにそれは「心のエンジン」そのものだ。ゆくゆくは、自校とその関連リソースで探究を回せる「学びのエコシステム」確立を目指していくという。
松見敬彦(教育ライター)
探究発表会の“第2会場”とも言えるメタバース空間。システムを構築したのも生徒たちで、過去には「野球部応援ワールド」なども運用してきた。今後はメタバースを「集う場」として機能させ、卒業生も在校生も一緒になって「探究し続ける心」を育て続けることが目標だ。