金融の知識を伝える動画制作ワークショップを実施

一般社団法人日本金融教育支援機構(カテゴリー2 │ 2023年度)

×

青楓館(カテゴリー2 │ 2023年度)

まずはお金に関する自分の行動を振り返ってみる

 8月22日、2023年度カテゴリー2の採択先である青楓館と一般財団法人日本金融教育支援機構がコラボし、中高生を対象にしたワークショップ(オン・オフラインのハイブリッド)を、青楓館が運営する通信制高校サポート校「青楓館高等学院」(兵庫県明石市)で開催しました。当日は会場に同学院の生徒3人を含めた5人(うち一人は中学生)が、オンラインでも5人の生徒が参加しました。

  日本金融教育支援機構は、中高生が、小学生向けの金融教育動画を制作する「FESコンテスト(Financial Education Support Contest)」(9月15日締め切り)を主催。これまで同コンテスト応募用の動画制作ワークショップを千葉県や東京都で実施しています。ワークショップの共催先を探していた同機構が、同じ23年度助成先である青楓館にお声がけし、今回のコラボレーションが実現しました。

  青楓館の代表を務める岡内大晟さん、日本金融教育支援機構の代表の平井梨沙さんがあいさつした後、早速ワークショップがスタート。まずは自身の意識を「お金」に対して向けていく“準備運動”として、お金に関するワードを使って付箋に書いていき、それらの付箋を「使う・稼ぐ・納める・貯める・備える・贈る・借りる・増やす」という八つに分類し、ホワイトボードに貼っていきました。この八つの要素は、同支援機構が、一生付き合うことになるお金と上手に付き合う上で必要な力として設定しているもの。圧倒的に「使う」が多く、その他の要素を普段あまり意識ししていたり、行動に移していないということが分かりました。

岡内さん(右から2番目)も入って、お金に関わる普段の自分の行動を振り返る

証券会社勤務などの経歴と金融知識を活かして、生徒と接する日本金融教育支援機構のスタッフ

生徒と対話しながら進めていくのも本ワークショップの特徴の一つ

自分が書いた付箋が八つの要素のどこに当てはまるのかを考えながらホワイトボードに貼っていく

自分が伝えたい「お金のこと」について深堀りしていく

  後半は、いよいよ動画の制作。まずは、香川で有名なYou Tuber瀬戸内サニーさんに登場いただいた「動画制作のポイント」の動画や、コンテストをサポートする大学生たちが作った動画を見て、最終アウトプットのイメージをつかみます。その後に、「誰に見てもらいたい?」「見た人にどうなってほしい?」「見た人にどんなことを伝えたい?」「この動画の特徴・ポイントは?」「その特徴・ポイントを取り入れる理由は?」というワークシートに書き込みながら、企画案を考えていきました。毎日株価をチェックしている生徒、アルバイトでお金を稼ぐことの大変さを知った生徒、1年間貯めていた3万円をつぎ込んでコンビニでお菓子を買った生徒など、自分のお金にまつわる体験から得られた教訓や感想、そしてそれをどうやって他者に伝えていくかなどについて、支援機構のスタッフと対話をしながら構想を練っていきました。

 最後の発表では、「3万円分のお菓子は買った時はうれしかったけれど後になって他のものを買えばよかったと思った。お金は大事なものなので、計画的に使った方がいいということを伝えたい」「アルバイトしてみてお金を稼ぐって大変で難しいとわかったけど、稼いだお金でほしいものを買えた時はうれしい。私のために頑張ってくれている両親に感謝したい」「株式投資をしているので、株の基本や、株を始めるに当たって必要なこと、株の選び方といったアドバイスや株のメリット、注意点、株をやっていったら見れる夢という内容でまとめています」「税金について小学生に分かりやすく伝えたくて、税金の中でも所得税をテーマにパワーポイントで動画を作ってみました」など、制作の狙いや想いと共に、練った構想や制作途中の動画を発表しました。多様なアイデアや着眼点に、お互い拍手を送り合いました。

 推薦入試に関するLINEのオープンチャットから本企画を知ったという御影高校3年生の十河晴奈さんは、「最近何にお金を使ったか」という話題の中で、自身のブックオフでよく本を買うという体験を話すと、同じグループになった中学生の子が「レンタルで本を読むこともあるよね」という意見をくれて、新しい気付きを得たと話します。「そこから新品・中古・レンタルで本を読む人がいることに注目し、『お金の使い方には正解はない』という動画を制作しました」(十河さん)。時間内で最後まで動画を完成させましたが、他の生徒が発表した動画の色の使い方に刺激を受け、イラストを増やしたり、カラフルにしてもっと見やすい動画にブラッシュアップしたいと話しました。

 また青楓館の生徒で投資部に所属し、毎日株価の情報をチェック・売買をしているという高校1年生の乕松頌太さんは、撮影は終えて、あとは自分でナレーションを吹き込むというところまで動画を制作。「株の知識はありますが、株について知ってほしいことをどうやって分かりやすく伝えるかについて考えるということは初めてで、とてもいい経験でした。みんなの発表を見ていても、思いもしなかった観点があったり、また自分とは違う手段で動画を作っていて、ショート動画を見ているみたいで面白かったです。自分の動画は、この後ナレーションを入れてコンテストに応募し、入賞を狙いたいと思います」と話しました。

「社交的になりたくて、知らない人としゃべる機会に参加したいと思っていた時にこのワークショップを知りました。一人で参加するのはとても緊張しましたが、皆とフレンドリーに話せて楽しかったです」と話す十河さん

普段スマホで見ている株価のサイトや売買の仕方を平井さん(中央)に撮ってもらった乕松さん(左)。この後自分でナレーションを吹き込む作業では何度も撮り直しをするほどのこだわりを持って動画制作を進めていきました

動画の企画を発表する参加者。自分自身の体験を基に制作する予定

2時間半のワークショップは笑顔で終了!

Voice

青楓館 代表 岡内大晟さん

青楓館高等学院では普段から外部からの講師によるイベントを毎週のように開催しています。生徒たちは慣れている分、関心があるかどうかが、態度や表情に正直に出ます。今回参加してくれた本校の3人の生徒は、面白い時の表情をしていたので、本当に楽しんでくれたんだと思います。今日はお金の本質に触れてくれたと思いますし、本校で実施している1on1でもしっかり振り返りを行って、フォローしていきたいと考えています。
また本校以外の生徒さんも参加してくれたことは、とてもうれしいことでした。うちお一人は人と話すがの苦手と言っていましたが、そんなこともなく皆と打ち解けて話していて、この場が自己肯定感を上げるきっかけになったのではないかと思います。

日本金融教育支援機構 代表 平井梨沙さん

FESコンテストに向けたワークショップの特徴は「子どもたちがお金について自分事と捉え、学んだことを縦型動画にて発信する」ことです。1分以内の動画の制作は、子どもたちにとっても制作意欲の高いツールであり、個性を最大限に表現できるものです。今回は参加者全員がコンテンツ案を発表し、うち1名は動画を完成させることができました。誰もが関心が高い「お金」について、参加者同士で意見交換を行い、ヒントを得て、自分でイラストを描き、撮影をし、音声を入れる。子どもたちの思い思いの表現力に驚きました。今後も地域でのワークショップだけでなく、学校や団体とのコラボレーションを通して、子どもたちのお金の学びを支援し、社会で生き抜く力を育成していきたいと思っています。

コラボレーションに関わった皆さん

一覧に戻る