カテゴリー 12022年採択

宮城県石巻西高等学校

対象者数 477名 | 助成額 190万円

http://inisi.myswan.ed.jp

Program震災を乗り越え持続可能な未来社会を創造する市民の育成プログラム

 生徒が安心して学べ、多様性を尊重し本音で対話できる環境整備を重視しながら、特色ある魅力的な普通科高校づくりを推進。大学・自治体・地元NPO団体の協力の下、総合的な探究の時間を柱に地域資源や地域人材を積極的に活用した探究的な学びや課題研究に取り組む。生徒のコミュニケーション力や自己肯定感を高め、地域・社会貢献意欲等の向上を目指し、将来的には石巻地域に貢献できる人材や持続可能な未来社会を創造する人材の育成を目指す。

 生徒を積極的に地域に送り出すとともに、地域の大人たちに本校に出向いてもらう取り組みを数多く行う。具体的には、探究学習を進める準備として行う外部講師による「コミュニケーショントレーニング」「自己理解講座」、若手社会人に生徒たちがインタビューを行う「街ライブラリー」、地域事業所から提示された課題の解決を探究するインターンシップ「街ミッション」、課題探究フィールドワーク「街クエスト」、地域の大人や教職員と自らの探究活動について対話を重ねる「作戦会議」、生徒個々人の興味関心や課題意識に沿って探究を進める「地域課題研究」等を予定。教科・科目の学びや特別活動においても探究的な取り組みを大切にし、教育課程外で探究活動に取り組む生徒への支援も行う。また、「石巻西高職員によるマイプロジェクトアワード(先生マイプロ)」を開催し、本校職員が自らの探究課題を生徒に向けて発表することで、生徒に探究の楽しさを伝え、生徒と職員が共に学ぶ機運を醸成する。

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外部の力も得て地域連携を推進

 1985年当時、県内各地に男女別学の公立高校が残っていた宮城県。石巻地区の全日制普通科共学校として期待され、市境の東松島市側に新設されたのが石巻西高だ。東日本大震災の後、石巻市側に復興住宅や新設住宅が建設されて新しい街ができ、徒歩7分の最寄りにJR仙石線の石巻あゆみ野駅も新設され便利になった(それまでは徒歩20分の同線陸前赤井駅が最寄り)。

 震災当時、避難所にもなった校舎は床下浸水で済んだ。しかし生徒の6割が通う石巻市など、津波被害の影響で今も課題を抱える家庭は少なくない。

 それでも人口減少が顕著な石巻市内の県立高校が定員割れを起こす中、ここ3~4年倍率1倍台を確保できているのは、防災教育はもちろん、2019年度から文部科学省の「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(地域魅力化型)」の指定を受け、 地域と連携して探究的な学びに取り組んできた成果とも言える。

 さらに同時期、東松島、石巻の両市が「SDGs(持続可能な開発目標)未来都市」に選定されていることや、石巻専修大学が女川町も含めた「石巻地区地域連携推進コンソーシアム」を立ち上げ、石巻西高を含めた圏域内の県立高校を巻き込んだことも大きい。文科省事業が終了した22年度以降も、引き続き地域事業を継続する体制が整った。

 さらに、11年に発足したNPO団体「一般社団法人ISHINOMAKI2.0」をはじめ「震災を契機に外から来た人たちの力が大きいですね」と西條崇史教頭は打ち明ける。

 総合的な探究の時間では、まず1年次に地域の社会人を講師に招いて1人につき生徒5人程度がインタビューを行う「街ライブラリー」や、訪問先の事業所でのインターンシップを含めて提示された課題の解決策を考える「街ミッション」を実施。2年次は地域理解講座「街クエスト」で生活圏のフィールドワークを行い、産業や課題についての理解を深める。地域の大人や教職員と探究課題について対話を重ねる「作戦会議」を経て、3年次はSDGsの視点から「地域課題研究」に取り組む。何事もSNSで済まそうとする昨今、コミュニケーション能力や合意形成能力の育成に重要な役割を果たしている。

 課外活動の「放課後西高マイプロ部」や「石巻西高職員によるマイプロジェクトアワード(先生マイプロ)」など、生徒と教師が共に学ぶ機運もつくっている。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

「街ミッション」の事前指導に当たる一般法人「まちと人と」の斉藤誠太郎代表理事。43もの事業所でフィールドワークを行うチームはクラスの枠を超えて編成されるため、まずはメンバー同士を知るためのアイスブレイクから始めた。こうしたノウハウを取り入れられるのも、外部連携の利点だ。

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