カテゴリー 12022年採択

学校法人 福島成蹊学園 福島成蹊高等学校

対象者数 50名 | 助成額 100万円

http://www.f-seikei.ed.jp/

Program地域に根差した問題を生徒の目線で考える探究活動
~自分たちの手で採集した微小生物の有効利用を目指して~

 普通理系コースの2年生にて、身近な環境について学びながら生徒たちの関心のある微小生物を採集させて、その微小生物について調べ、探究活動を通して最終的にその有効利用を考える。初年度は、生徒たちに研究テーマを決定させ、8月から研究活動に取り組み、3月までに研究報告を作成させる。次年度の4月に理系を選択した新2年生の前でプレゼンテーションさせ、後輩を自分たちの研究に巻き込みながら、生徒たちの目線で一歩一歩進めていく。この活動を継続し、本校独自の探究活動支援プログラムの礎を築く。

 原発事故後、自然科学部の生徒たちが、学校近くの茶屋沼や阿武隈川にて月1回、微小生物調査を実施し、自分たちで採集した藻類を培養。震災後の課題(汚染水処理に関する問題など)を藻類の力で何とかしたいと取り組んできた。この中で、生徒たちが目をキラキラさせて研究活動に励む様子が見られた。このノウハウを生かして、本校独自の探究活動を開始する。年間を通して大学等の研究機関の方々と生徒たちが主体的にやりとりしながら、自分の興味・関心を持った研究テーマについて、ワクワクしながら進められる体制を構築したい。

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活動レポートReport

生徒発の行動から広がる高大連携の探究活動

 校訓「桃李不言下自成蹊(桃李もの言わざれども下おのずから蹊を成す)」のもと、次代を担う徳を備えた人材育成を目指す同校。今回対象となるのは普通理系コースの2年生の探究活動だ。

 今回採択されたテーマは、代々先輩から引き継いで研究していたものだった。震災後の汚染水処理に関する課題を、藻類の力で解決できないかと学校近くの川や沼でミカヅキモやシャジクモなどを採集・培養する実験を続けてきた。大学や研究機関、企業などと連携した活動が生徒の探究心をかきたてる様子を見て、このノウハウを高校2年生の探究活動へと展開しようと考えた。初年度となる今回、生徒たちにテーマを決定させたところ、藻類だけでなく、さまざまに興味や関心が広がり、独自の探究活動が始まっている。

 一つは「泥電池」の研究だ。有機物を分解して電気を発生させる微生物を用いた「微生物燃料電池」に関するオンラインワークショップに参加。そのときのつながりで12月にはこの分野の第一人者である東京薬科大学生命科学部の渡邉一哉教授らとの対面での連携活動が実現した。

 参加した8人の生徒は他県の高校生や大学生と交流し、最先端の研究施設の見学などを通して大きな刺激を受けて戻ってきたという。

 もう一つは国産小麦「ゆめちから」の栽培研究だ。生徒が中高校生対象のプログラムを見つけてきて応募。

 現在、プランターを使って種からの栽培に挑戦している。収穫後パンを作るのが目標だ。生育状況の観察やデータ分析、実験にと活動は忙しい。その様子に「面白そう」と、テーマを鞍替えして加わる生徒も出てきたそうだ。

 指導に当たる山本剛教諭は「生徒たちのワクワクする気持ちが探究活動には必要。とことんまで取り組んでほしい」と背中を押す。「成果はすぐに出ないのが研究の奥深さ。後輩に引き継げるものが残せれば、何年か後に成果が出る。その第一歩を踏み出す“未来へのつながり”を生徒たちは感じている」と話す。

 コロナ禍で対面での活動経験の少ない今の高校生には、できるだけ多くの人と会い、話して、刺激を受けることが探究活動の原動力になると考えている。 出会いの高揚感をどう研究へ、そして次の学年へとつなげていけるかが今後の課題という。

長尾康子(教育ジャーナリスト)

東京薬科大学の微生物部の学生らと交流した。

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