カテゴリー 12022年採択

新渡戸文化高等学校

対象者数 99名 | 助成額 100万円

https://www.nitobebunka.ed.jp/

Program心が震えた想いをプロジェクトにするために
~クロスカリキュラムで生徒の心に火をともす「SDGs de 未来構想」の教材開発~

 本校ではクロスカリキュラムという教科横断型の授業を設けており、週1回、丸1日を使って日頃の学びと社会課題を結ぶ探究活動を行っている。スタディーツアーはその活動の一環であり「何を学ぶ旅にしたいか」「どのような社会課題に関心があるのか」などの意見を聞くことからスタートする。「過疎化、地方創生、1次産業の衰退、医療、循環型社会」などのキーワードを拾い、適合する地域や訪問する事業者などを決め、オンラインでの事前学習でコミュニケーションを取った後、1週間程度の旅に出発する。

 地域のために尽力する大人からの言葉、1次情報に触れる体験や感動的な経験をすると「この地域や生活する人たちのために活動したい」という想いが生徒たちに生まれ、課題解決に向けて小さな一歩を踏み出し、プロジェクトとして実行していく生徒が出てくる。その一方で創造的な行動に苦しみ、アイデアを形にできない生徒もいる。

 issue+design代表 筧 裕介氏の著書「持続可能な地域のつくり方」から開発された「SDGs de 未来構想」のプログラムを教育活動に組み込み、心が震えた想いについて思考を深め、課題解決のアイデアを言語化し、プロジェクトを起こすためのスモールステップになる教材開発を共同で行っていく。

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活動レポートReport

水曜の終日を充てて自律型学習者を育成

 英文で『武士道』を刊行した農政学者で国際連盟事務次長を務め、5千円札の肖像(1984~2007年発行) でも知られる新渡戸稲造は、教育者の顔も持つ。1927年、女子経済専門学校(現・新渡戸文化短大)の初代校長に迎えられた。現在は子ども園から短大までを擁する新渡戸文化学園では今もその精神を受け継ぎ、自分と社会の幸せをつくり出すHappiness Creator(自律型学習者)の育成を教育活動の最上位目標に位置付けている。

 新渡戸文化アフタースクール設置(11年度)が縁で学園理事に加わっていた平岩国泰・放課後NPOアフタースクール代表理事の理事長昇格(19年度)をきっかけに、改革が始まった。卒業単位を74単位に抑え、毎週水曜日の終日を学校設定科目「クロスカリキュラム」に充てて学びに「余白」を生み出すという大胆な教育課程案は、事前に相談した文科省からもお墨付きを得た。

 20年度は新型コロナウイルス禍もあったが、「学びを止めない」を合い言葉にiPadを生徒一人ひとりに配布。オンライン授業や教育アプリを導入し、授業のあり方について教員間で共通した言葉を考え、一気に改革を具現化させた。「本当に大変な時期でしたが、対話を大事にしながら進めていくことができた」と山藤副校長は振り返る。ちなみに学園では教員を「教育デザイナー」と位置付けている。

 クロスカリキュラムでは、自分の「得意(好き)」を社会課題に結び付け、プロジェクトを立ち上げて協働的な学びを展開する。個人探究でも構わないばかりか、課題が見つからないことも肯定しているという。アウトプットとしての発表は意識させているが、必ずしも期限の制限や、進め方の管理はせず、生徒一人ひとりの成長スピードを尊重している。「自律型学習者」に育つまで「待つ」という教員側のマインドセットを変え、何より生徒の可能性を全職員で疑わず、生徒との関係性を整えることを重視しているという。

 全教員で共有しているのが「ティーチャーズコンパス」だ。育てたいコンピテンシー(資質・能力)やマインド、手法などを1枚の模式図にまとめている。

 改革は修学旅行にも及び、現在は選択制の「スタディーツアー」を実施。全国から行く先を選び一地域に各5名程度で周る。また、本助成を受けて現在、NPO法人 issue+design「SDGsde未来構想」のプログラムを学校教育に組み込む教材も開発中だ。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

3月5、6の両日にわたって開催された中・高校の学習成果発表会「スタディフェスタ」は対面で開催され、受験希望者や関係者、他校教員など100人以上が訪れた。

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