カテゴリー 12022年採択

新潟県立新津高等学校

対象者数 480名 | 助成額 200万円

http://www.niitsu-h.nein.ed.jp/

ProgramClimbUpプラン
-「繋ぐ・拓く・創る」人になるために-

 本校は新潟市の秋葉丘陵地に位置しているため、生徒は毎日かなり急勾配の坂道を登校することになる。「ClimbUpプラン」は、3年間その坂道を登り続けた先にある自分の姿を想起させる名称であり、人々や時代、個々の活動や事象を自らつなぎ、その上で新たな道を切り開く努力を怠らず、新しい価値や次代の社会を創生する意識の醸成—「繋ぐ・拓く・創る人」の育成—を目標とするプランである。

 

1年生:「社会を繋ぐ」課題解決学習により社会的視野を醸成する。

2年生:「学問を拓く」学問的視野を持った課題研究を行う。

3年生:「未来を創る」2年間の活動を生かし進路実現に向かう。

            

 「課題設定→情報収集→整理・分析→まとめ・表現」の探究サイクルを複数回経験する中で、探究や論理的思考・表現の「型」を習得し、答えのない問いに立ち向かい試行錯誤することをいとわない姿勢を育成したいと考える。

 今後は、地域や外部との連携、成果の発信、卒業生などによる「探究アドバイザー制」の導入や小中学生・他校生との交流など、活動の場を校外に広げる予定である。

 知的好奇心を刺激され「あっ、そっか」というつぶやきがあふれる新津高校の中で、生徒が自ら「語れるもの」を創り、3年間でたくましくClimbUpすることを目指す。

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活動レポートReport

閉じた調べ学習を脱し積極的に校外で生徒が活動

 丘陵地に建つ学校までの坂道を未来への歩みと重ねて「Climb Upプラン」と名付けた同校の探究は、「課題設定→情報収集→整理・分析→まとめ・表現(発表・論文作成)→振り返り」の探究サイクルを型として身に付けることから始まる。

 1年次は、SDGsから学校のある秋葉区の課題と結び付けた学習を行う。区役所職員から農業や産業などに関わる地域課題を教えてもらいグループで活動をした。生徒には積極的に外に出ることを勧め、閉じた調べ学習に終わらぬように気を配ったという。当初は慎重だった生徒たちも2学期の終わりには自分たちで取材のアポイントを取り、駅前で街頭インタビューをするなど主体的に動けるようになった。学年末に体育館で行ったポスター発表では「地域の課題に対する自分たちの考えを大人に話して、解決する可能性があると初めて気づいた」などの生徒の声が聞かれたという。 

 2年次は、前年に習得した探究の「型」を応用し、少人数班での課題研究に取り組む。新潟薬科大学など近隣大学の教授らを招き、講義体験を経て学問的な視野を持てるようにした。生徒は将来希望する分野や専攻から自由にテーマを設定し、論理的な思考と表現の型を身に付けていく。年度末にはプレゼンテーションによる発表を行った。

 3年次は、個人研究を1学期間で行う。2年間の探究のまとめを小論文や大学の志望理由書などに反映させ、進路実現のツールとして活用している。

 今年度は学年間の探究の接続を滑らかにするのが課題だ。1年次に向き合った地域課題と2年次の学問的な探究テーマとを結びつけるケースがあってもいいし、2年次で掘り下げきれなかった部分を3年次で再度個人探究してもよい。生徒一人ひとりが自分事として、連続性のある探究を経験してほしいと考えている。

 そのためには運営体制の整備も重要だ。総合探究は進路指導部が中心となり実行委員会形式で担うが、実際の活動は担任や副担任が関わる。外部の探究コーディネーターを囲んだ振り返りなども行い、多くの教員がファシリテーターとしてのスキルを高めている。「この経験が各教科での生徒の探究的な学びに結び付くことを期待している」と、小林英明校長。今後は、生徒が校外で活動しやすいよう探究を経験した卒業生や地域の方々と連携する「探究アドバイザー人財バンク」も構築したい考えだ。

長尾康子(教育ジャーナリスト)

体育館でおこなったポスター発表(1年)。

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