カテゴリー 12022年採択

静岡県立富士高等学校

対象者数 853名 | 助成額 200万円

http://www.edu.pref.shizuoka.jp/fuji-h/home.nsf

Program富士高型探究プログラム「心見考」(心でものごとを考え見極める)の更なる深化を目指して ~県境をこえた教育連携の可能性~

 「社会の発展に寄与するために、主体的に学び続ける人材を育てる」という教育目標の達成に向けて、SDGsを柱に据えた探究的なプログラム「心見考」を立ち上げ、独自の教育活動を展開している。社会や地域の課題に目を向け、自らが発見した正解のない問いに対して、グループで「主体的」「協働的」に取り組み、自分たちの解決策を提示する。また、研究成果の発表の場を設け、思考力・判断力・表現力を身に付けるプログラムである。 

 さらに、1年生全員がOBの勤めている企業を訪問して社会の実態を知り、仕事に従事する上での苦労や喜びを肌で感じるプログラムや、3年生全員が20年後の社会を想定して自己の生き方を考え、全体に向け発表するプログラムなどがある。また、本校の大きな教育資産であるOB・OGの協力を得て、企業訪問、医学科セミナー、東大訪問、卒業生講話、東大生ワークショップなど生徒の視野を広げ、心を刺激する多くの企画がある。

 本年度、本校と類似した教育環境(進学実績や特徴)にある隣県の県立高校との連携を深め、生徒の研究成果発表、課題研究発表会(理数科)などの合同開催、オンラインを活用しての情報交換、教職員の指導力向上につながる教職員間の交流等を計画する。

 こうした取り組みを通して、生徒の心を刺激し、「心見考」のさらなる深化を目指す。

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発想を広げ協働を生み出す「攻め」の探究

 創立100周年を迎えた同校は普通科、理数科に共通する探究的な探究の時間「心見考(こみこ)」を立ち上げ、独自の教育活動を展開中だ。

 県内屈指の進学実績を誇り、生徒の知的好奇心も旺盛な同校。独力で文章や意見をまとめ発表する力がある生徒たちだからこそ、「自由に発想を広げ、じっくり考え、仲間とともに掘り下げていく深みのある探究へと発展させていきたい」と、池田和子教諭は語る。

 そのためには外部の風を入れ、協働できる場面や地域に根差した活動を仕掛けていく必要があると考え、外部機関との連携を深めている。

 地域をテーマに探究する1年生は、卒業生が働く職場等に「企業訪問」する。その際、話の進め方を生徒中心に変更した。自分からものごとに関わる姿勢を早くから刺激しようという狙いだ。2023年度は富士市とコラボレーションして「市のPR動画」の制作に取り組む。

 また、理数科では静岡大学と連携、同時に山梨県立吉田高校と課題研究発表での交流などを行う。同じ校風を持つ県外の高校との交流は画期的で、生徒、教員ともに視野が広がりそうだ。

 2年生は、「広く、深い視点で探究」のコンセプトで身近な社会課題の解決策を提案する。今年度は、慶応大学と連携してKJ法などの思考法も学んでから個人探究に入る。今まで気づかなかった視点でテーマに切り込む力を育てたいという。

 3年生は、「未来講座」で20年後の自分の未来を描きスピーチをする。これが「心見考」の集大成となる。

 スピーチをまとめる前にビジネスの最前線で活躍するコンサルタントを講師に招き講演を開いた。AIなどの最新情報、データや論理性に根差した未来予測を生徒たちは真剣な表情で聞き入っていたという。

 大学進学を控えて守りに入るのではなく、もう一歩、生徒の心を揺さぶろうとする攻めの姿勢は、同校の探究が軌道に乗ってきたことを意味する。

 今後は、地域や卒業生が同校に寄せる期待に、探究を通して応えていきたいという。地域社会や他校との連携、行政や企業とのコラボレーション、卒業生へのインタビューによる探究の検証など、さまざまな形で「恩返し」をしながら、グローカルに活躍できる生徒の育成を続けていく考えだ。

長尾康子(教育ジャーナリスト)

アイデアを広げるワークショップ。

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