カテゴリー 12022年採択

兵庫県立長田商業高等学校

対象者数 74名 | 助成額 100万円

https://dmzcms.hyogo-c.ed.jp/nagata-chs/NC3/

Program高校生が株式会社「NAGAZON」を設立し、会社経営を行う!

 会社名「NAGAZON」は、「商業のルーツは流通にある」と、ネット流通業界大手「AMAZON」と高校がある神戸市長田区を掛けた名前である。生徒自らが主体となって会社の定款認証や登記を手掛け、経営を進めていく。また、全ての教科をクロスカリキュラムとして関連付け、全校的な取り組みとする。生徒には本物の経済を実感させるために国内外での企業研修や証券取引所の見学を行い、研修後には全生徒への共有を図る。

 定時制の本校では、小中学校時代に不登校や人間関係をうまく築けなかった生徒が多い。本プログラムの探究活動を通じ、自尊感情を高め、人間的な成長を促す。

 株式会社の仕組みは、年度初めに生徒全員が出資して株主となる。事業の中心は、地元企業と連携した開発商品やOEM商品などの販売、他校からも開発商品を仕入れて販売する。他に6次産業化として生産から販売まで一貫して行う取り組みや、WEBショップ開設、アプリ開発、HP作成などの依頼を受けることも考えている。

 そして、年度末には成果発表会とともに株主総会を開催し、3年生は株式を売却して卒業する。2年目以降もPDCAを回しながら事業活動を継続する。

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企業活動を通じた社会との関わりが生徒の自信と成長につながる

「NAGAZON」の社名は、ネット流通業界大手と、学校のある地名を掛けて命名。法人登記までした本格的な株式会社の設立は、「商業のルーツは流通にある」との考えによるものだと、発案者の中塚正裕校長は語る。「以前から商業教育の一環として、地元企業などから仕入れた商品を販売する試みを行っていました。もっと生徒主導による総合的なビジネス体験にできればと、2022年に『商業科』から『創造ビジネス科』に改名するにあたり、その象徴的な取組としてスタートしました」。

 NAGAZONを運営するのは、立候補した生徒たちによる生徒執行役員。現在は11 名で構成されているが、一部による活動ではない。生徒全員が株主となり、日々の授業を通じて企業運営に携わり、実践的な学びを積み重ねている。簿記やコンピュータなど企業運営に直結する科目はもちろん、損益分岐点の計算には数学、観光ビジネスのプランニングには英語と、すべての教科と連動させているのが特徴だ。

 定時制高校として全国初の取組だけに、注目も高く、地元はもちろん全国紙でも紹介され、学校見学会への参加者も急増しているという。「学校の魅力づくりになったのはもちろんですが、何よりうれしいのは、生徒たちの成長を実感できること」と中塚校長は目を細める。「本校には、さまざまな事情から昼間の高校に通えない生徒が多く、自己肯定感が低い傾向があります。企業活動を通じて社会との関わりを深めることが自信につながっているようで、最近では“自分たちで会社を運営する”という責任感や使命感が育まれつつあります」。

 初年度には、校内で栽培したハーブを用いた商品の開発・販売に加え、地元商店街を紹介する動画作成やアプリ開発も手掛けている。8月には東京での研修を実施。企業見学を通じて実際のビジネス現場を体験するとともに、社会人や経営者と間近で接する貴重な機会となり「まさに心のエンジンを駆動させる取組になった」と、中塚校長は確かな手応えを感じている。

 NAGAZON設立を報じる校内新聞に「会社設立は目標でもゴールでもなく、変動の激しい社会を生きていくために必要な力を生徒につけていくための仕組みづくり」とあるように、その真価が問われるのはこれから。時には社会の厳しさにぶつかりながらも、試練を乗り越えた生徒たちが社会に出て、実際にビジネスの世界で活躍する日が、今から楽しみでならない。

2022年2月には設立総会を兼ねた第1回の取締役会を開催。生徒代表ゼネラルマネージャーの就任挨拶では「授業で学んだことを活かし、実際に利益を生み出せるよう試行錯誤したい」との抱負が語られた。

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