カテゴリー 12022年採択

奈良県立畝傍高等学校

対象者数 741名 | 助成額 150万円

http://www.e-net.nara.jp/hs/unebi/

Program生徒の探究心を高めるプログラム
~「本物」との出会いの創出とSTEAM教育を通して~

 生徒たちの「気づきを促す」をテーマに、さまざまな分野で活躍されている有識者をはじめ、NPO法人や、ベンチャー企業の代表者といった、「奈良」を舞台に活躍されている方々を中心に招聘し、生徒が「本物の声」に触れる機会を創る。人との出会いは、生徒たちにとって心が動く瞬間であり、ものの見方・考え方を広げるきっかけとなる。先駆者たちの「なぜ」に触れることで、生徒たちの「なぜ」を問う力を育み、2年次における「課題研究」の実践およびその先のキャリア設計の動機付けとする。

 全員が履修している「課題研究」では、生徒一人ひとりが研究課題を設定し、自分の「なぜ」を追究し深く考えることで、社会や学術に貢献しようとする意識を高めるとともに、生徒自身がキャリアを設計する力の伸長を図っている。特に、「生徒のものの見方」を尊重するという、STEAM概念の中の「A(rt)」の要素を大切にし、生徒たちが自ら立てた「問い」を基に、文理の枠組みを超えて教科を横断しながら学んでいく過程を重要視している。

 学校が外部へと開かれていることで、生徒が探究する「面白さ」を体験できる環境を進化させる。

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「本物」から学ぶ感受性を自らの問いを立てる力に

「創立127年の本校では、生徒は伝統校の一員との自覚が強く、良くも悪くも枠にはまりがちなところがある。創造力豊かな社会のリーダーに育ってもらうには、殻を破って“出る杭”になるような教育も必要だと考えました」。教育企画部の杉本和歌子先生は、プログラムのねらいを話す。

 同校では、これまで8年間にわたってSGHや「地域との協働による高等学校教育改革推進事業校(グローカル型)」の指定のもとに実施してきた取組を基盤に、生徒の探究心をさらに高めるべく、2022年度から「研究開発学校」の指定を受けると同時に、財団の助成を得て新たなプログラムを始動させた。「大きな特徴が、出前授業や公開講座、企業訪問など、様々な機会を捉えて、広く校外の『本物』から学ぶ機会を設けていること」と杉本先生は語る。

 2023年1月には、新年度から本格的に探究に取り組む1年生(現2年生)に向けて、大学・NPO・企業などから多様な分野の「本物」12名を一度に招へいし、各テーマに分かれて聴講するという「出前授業」を実施した。ここでいう「本物」には、その道のスペシャリストとして探究した成果を社会に広く発信し、影響を与えている人物という意味に加え、著書や映像を通してではなく、生徒が実際に対面することで生まれる効果も含んでいる。「教員と生徒だけの限定された世界での学びにとどまらず、多様な背景を持った『本物』との出会いを通じて、豊かな感受性を磨いてほしい」と杉本先生は話す。

 こうした機会を積極的に提供しつつ、日々のカリキュラムとしては、1年次の「探究基礎」、2年次の「課題研究」もしくは「理数探究」を通じて、探究・創造型のSTEAM教育を推進。探究活動は個々人で行いつつも、授業自体はグループ単位で進めるという点も特徴的だ。その狙いを杉本先生は、「生徒同士の対話を促し、互いに刺激や気づきを与え合うため」と話す。

 一方、教員に対しても定期的に研修の場を設け、切磋琢磨する環境を整えている。今年度から同校に赴任した菅原愛理先生は、「教師は生徒を決まった正解に導こうとしがちですが、生徒自身で考え、学び取ってもらうためには、あえて“教壇に立たない”姿勢が大切だと気づかされました」と振り返る。生徒の成長を支えるため、キャリアや担当教科を問わず一丸となって努力を惜しまぬ教員たちの姿が、生徒たちにとって最高の教材となることだろう。

同校が外部から招く「本物」は、研究者から経営者、職人など多種多様。ベンチャー起業家の講演に刺激を受けた生徒が「より広い進路選択に向けた勇気を与えてもらった」と語るなど、大きな影響を与えるケースが少なくないという。

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