カテゴリー 12020年採択

名古屋大学教育学部附属中・高等学校

対象者数 360名 | 助成額 200万円

https://highschl.educa.nagoya-u.ac.jp/

Program「ハイブリッド」文理融合教育プログラム
~知りたい・やりたい・成し遂げたい~

 「総合人間科(総合的な探究の時間)」を活用し、高校1年から3年まで全ての生徒を対象としたシームレスな文理融合探究カリキュラムの開発を行う。キーワードは三つ。

1.脱固定観念

2.インプロビゼーション

3.グループダイナミックス

 探究方法は、「暗記・再生型学力(できる学力)」で起動、「理解・思考型学力(わかる学力)」で自力走行する「ハイブリッド」 教育プログラム。

 高校1年で研究の方法を学び、高校2年では、PBL(Problem Based Learning)を活用した仮説検証型で実施。実施の過程で、 どの生徒も置き去りにしない(NCLB)、公正で公平な教育理念をプログラムの根底に置く。さまざまなステークホルダーとコンソーシアムを組みながら「共創」することで、「知りたい・やりたい・成し遂げたい」というカラダの内から湧き出る生徒の抑え切れないやる気「学び欲」を成熟させる。

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暗記と思考のハイブリッドで自走

 1995年度から3年間、文部省(当時)の研究開発学校委嘱を受けて開発した特設教科「総合人間科」は、99年告示の高校学習指導要領(全面実施は03年度入学生から)で総合的な学習の時間が新設された際、そのモデルとして大きく注目された。その後、06年のスーパーサイエンスハイスクール(SSH、現在3期目)と、15年度のスーパーグローバルハイスクール(SGH)指定を受けて、さらなる発展を遂げている。

 一般に、SSHは理系向け、SGHは文系向けという受け止め方が大勢。同校でもSSH指定後、総合人間科は社会科学系という色彩が強くなり、調べ学習にとどまることも少なくなかった。それが同時指定により、文理を問わず探究活動を入れていこうという意識が強まったという。そうして構想されたのが「ハイブリッド」文理融合教育プログラムによる総合人間科だ。

 現在の高校教育は旧態依然の閉鎖的な教育から今なお抜け切ることができず、教員が「理解・思考型学力」(分かる学力)を育成したいと思っても、生徒や保護者には「暗記・再生型学力」(できる学力)を求める傾向も根強い現状がある。これに対して、「進学校」であるより教育や発達の在り方を学問として探究し、「脱教科」「脱偏差値」「脱教室」として総合人間科を構想してきたのが同校。同プログラムでも、暗記・再生型学力でエンジンを回し、理解・思考型学力で自力走行する「ハイブリッド型学力」を育成しようと位置付けた。

 高校の総合人間科では現在、地球的課題の6領域(心=教育・犯罪▽文化=言語・芸術・表現▽人権と共生=生存・差別・障害▽生命=健康・医学⑤地球・食料・エネルギー▽平和=紛争・民族・国際理解)を設定し、3年間かけて積み上げて追究している。

 特徴は、中学校1年生時の調べ学習中心から、徐々に探究中心へと比重を高める「探究型仮説検証学習」と、PBLを“Project” Baced Leaningではなく“Problem” Baced Learningと位置付けていることだ。

 高1では、探究手法を学びながら、PBLを通じてグループ単位による「協同的な課題解決学習」を体験し、6領域を念頭に置きつつ個人テーマを模索。高2で個人研究の「独り立ち」を目指し、PBLを実践。高3でまとめのプレゼンテーションにつなげ、大学の学びや実社会で求められる課題解決能力を身に付けさせる狙いだ。

 そうした仕掛けづくりに加え、普段から生徒との会話で「何でそれに興味を持ったの?」「キーワードを挙げるとすると何ですか?」と問いかけ続けることがポイントだと、三小田(さんこだ)博昭副校長と原順子特任教諭(前高校副校長)は口をそろえる。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

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