カテゴリー 12023年採択

京都市立紫野高等学校

対象者数 560名 | 助成額 200万円

https://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/index.php?id=300803

Programグローバル・シティズンシップを起動する
総合的な探究の時間を軸としたカリキュラムの共同開発

 2013年度からユネスコスクールに加盟している本校は、スクール・ミッションとして「多様性を認め合うこと」「世界につながること」「自ら自由を体現できること」を掲げ、「一歩踏み出すGlobal Citizen」の育成を教育目標としている。「一歩踏み出す」とは「実際に自分の行動を変えること」「実践に移すこと」、「Global Citizen」とは「自分の暮らす地域、国、そして地球の問題を、自分自身の問題として考え行動する人間」と捉えている。

 この目標のもと、キャリア教育、道徳教育、国際理解教育、人権教育、主権者教育等を包括した「グローバル・シティズンシップ教育」を教育課程全体で推進している。その軸となる総合的な探究の時間を、新課程から1年次「Global Citizenship I」2単位、2年次「Global Citizenship II」2単位の計4単位として増単位・刷新したところである。

 本プログラムでは、全教員で指導にあたる総合的な探究の時間、外部機関と連携した特別講演や体験学習などの各取組みの内容を充実させ、より有機的に関連付け、又は新規開拓し、教育課程全体の推進力を増すことを目的とする。具体的には、生徒の自治・自律を伸ばす仕掛け、教育課程全体への外部アドバイザーの招聘、教員のマインドセットを変える校内研修などを計画している。

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活動レポートReport

地球の課題を自分事として行動する“市民〟の育成

 京都の名刹・大徳寺の敷地内に校舎を構える京都市立紫野高校。1993年に設置した 普通科第Ⅲ類(英文系)を2014年に専門学科のアカデミア科に改組、13年には京都府の公立高校として初のユネスコスクールに加盟、22年度の新課程からは「一歩踏み出すGlobal Citizen」という教育目標を掲げるなど、“国際”を意識した教育に長年取り組んできた。昨年度からは、国際理解教育・平和学習・道徳教育・人権教育・主権者教育を総合的に学ぶ探究活動である通称「Global Citizenship(GC)」を、1・2年次対象にスタートさせた。

 1年次の「GCⅠ」では、導入単元として、Google社でも取り入れているレゴRブロックを使った研修プログラムを実施。ブロックで「自分の自由が実現できている世界」を作り、生徒同士で見せ合い、実現に向けて取り組むべきことを話し合う。「自分の中の抽象的な考えや思いを形にしていく過程で、生徒同士が安心して自己開示できる学習空間づくりや、正解のない問いを対話を通して掘り下げる姿勢を学んでいきます」と、探究活動を主導する上田航洋教諭は話す。その後、校内→地域と身近なところから順次課題発見のフィールドを広げる「校内・地域巡検」、SDGsの視点から京都・世界の課題に対して行動を起こす姿勢を学ぶ「SDGsと社会貢献」、京都の多文化共生について考える「国際理解と国際親善」などの単元を経て、自分を起点に世界へ視野を広げていく。2年次のGCⅡでは、世界に向けて広げた視野を持ちながら、もう一度自己に立ち返り、内面を深く掘り下げることを目的に、関心のあるテーマについて、個人で探究を進めていく。

 同校は探究活動を新課程の開始に際して3年かけて精査し、学校オリジナルのテキストも作成した。現在は1年次13人、2年次28人の教員がGCを担当。担当外の教員も、生徒から要請があれば自分の専門分野について快く助言するなど、全校をあげてGCを進めている。景山晋之介副校長は、「今後は外部からの視点を入れてブラッシュアップしていくことが課題」と、近隣大学の教授などに継続的なアドバイザーとなってもらうことも検討していると話す。

 同校は、日本以外の国籍やLGBTQ、発達の特性など、多様な生徒たちが伸び伸びと学校生活を送り、多様性と自主性を重んじる校風が特徴となっている。景山副校長は、「GCによって、より生徒の自主性や個性を引き出していきたい」と話す。

中学の時から心理学に興味があったという2年生の小倉和真さん。探究のテーマは、「居場所感と外的要因の関係性」。校内でアンケートを取り、その分析結果を発表会にてプレゼンした。「調べれば調べるほどひかれていくこのテーマに存分に取り組めるGCの時間が楽しい」と話す。

「食品を原料にしたオーガニックな日焼け止めを作る」ために、紫外線を吸収する紫キャベツの特性に注目して実験をする2年生の生徒。吸光度を測定する器械にかけるため、紫キャベツの成分を抽出している。

航空機の主翼端に取り付けられている翼端板「ウィングレット」の研究を行っている生徒。美術の先生の協力を得て、さまざまな角度のウィングレットを発泡スチロールで製作、この後風洞実験を行う予定だという。「例えば短距離で離着陸できる飛行機があれば、空港のない京都から地方への交通の利便性は格段に上がります。日本でかつて開発された短距離離着陸の飛行実験機『飛鳥』をベースに、現代の技術を応用して、新たな飛行機が作れないかということをテーマに、まずはウイングレットの研究に取り組んでいます」と話す。

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