カテゴリー 12023年採択

山口県立大津緑洋高等学校

対象者数 30名 | 助成額 100万円

http://www.ohtsuryokuyou-h.ysn21.jp/

Programじぶんたちの力でまちの経済を循環させる
~起業家精神を身につけるプロジェクト型学習~

 若者の流出による人口減少問題を抱える長門市。しかし、高校生には「大好きな地元を盛り上げたい」という思いがある。残る疑問は「どうやって?」という具現化だ。

 そこで、高校生の起業家精神を育成する教育プログラムを実行する。長門市の主産業である第一次産業に着目し、「小さな地球」と呼ばれるアクアポニックス※を教材に、リサーチとビジネスの視点を取り入れることで、地球と経済の循環を同時に学ぶSTEAM教育を行う。また、産学官連携により、高校生が1人1つの企画をつくり行動する「じぶん株式会社」を展開する。各自の企画・実行を持ち寄り、仲間同士でしごとを委託し合える、同志の集まる会社のようなチームワークを発揮する。さらに、起業家教育のイベントで成果を発表する。「夏会(なつかひ)」と「春会(はるかひ)」に、小中学生や外部講師(特に若手実業家)を招き、自身の力で地元から経済循環を生み出し、未来をつくる体験をする。

 まま事ではない、本物の地域活性を学び実践する起業家教育を行うことで、「じぶんにもできる」「じぶんたちだからこそできる」という自信を育み、「やってみたい!」という高校生のワクワク・エンジンを駆動させる。

※従来の水産養殖と作物の水耕栽培を組み合わせたシステム

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活動レポートReport

有志の活動が地域振興のカンフル剤に

 2023年10月に、JR長門市駅の跨線橋内壁面の新デザイン完成お披露目式が行われた。デザインは山口県立大津緑洋高校大津校舎の「大津STEAMプロジェクト」の生徒が手がけた。その後、同駅前商店街で、昭和レトロをテーマとした親子3世代が楽しめる仮装パーティーイベント「ナガトレトロ」が開催された。企画・運営は同プロジェクトのメンバー。商店街には露店が並び、めんこなど懐かしいおもちゃの遊技場なども設けられた。昭和風の服に身を包んだ生徒たちは商店街を練り歩き、ファッションショーで会場を沸かせた。同校の生月彩花先生は「ありがたいことに、地域から本校の力を借りたいという声が寄せられるようになりました」と話す。 起業家精神の育成を目的とした同プロジェクトには有志の生徒たち30人が所属しており、主に放課後に活動。実験を行う「研究」と商品開発やプロモーションを行う「ビジネス」のどちらかで、独自の事業を展開する「じぶん株式会社」の立ち上げに取り組んでいる。生月先生を含めた4人の教員が担当し、元同校の教員で、現在は起業家教育を通して地方創生を目指す会社を立ち上げた岩本隆行さんがアドバイザーとして関わっている。跨線橋内壁面のデザインや「ナガトレトロ」も、市から依頼を受けた岩本さんが同校につないで実現した。

 もともと同プロジェクトは6年前の岩本さんが教員時代に、有志の教員と共に立ち上げたもので、アクアポニックスシステムの事業化や、小学生とコラボした地元特産の商品開発・販売など、実績を積み重ねてきた。同校はこのノウハウを「総合的な探究の時間」に応用し、岩本さんは同校で得た知見をベースに県内の七つの高校で起業家教育を支援している。 有志の活動ながら、その実績を学校が評価し、学校内外で知見を広げてきたことで地域振興のカンフル剤になりつつある。

 この場の魅力を、2年生の山下和奏さんは「自分から何かやりたいという人が集まっているから、お互いにいい影響を与える」、中ノ目ゆうさんは「授業だと周りの目を気にしてしまうけど、ここでは自分を隠さず出せる。この場を大切にしたい」と話す。また観光企画を立案し、長門市の補助金を得た西本佳乃子さんは「大学、その先につながる自分の“芯”を探していきたい」と言う。生徒たちの熱意と思い、実社会での達成感が、同プロジェクトの存在感を確かなものにしてきたと言える。

「ナガトレトロ」では、出店交渉や、服やおもちゃの収集などを生徒たちも担当。生徒の行動に共感した有志の美容師たちが無料でヘアセットをしてくれたという。町ごとタイムスリップしたようなイベントに地元や近隣から多くの人が訪れた。

「大津STEAMプロジェクト」の高校生が地域活性化を考える「夏会(なつかひ)」の様子

生徒がデザインした「夏会」のポスター。2023年度の「夏会」は8月9日~11日に開催され、10日は地域創生のフロントランナーによるシンポジウム、11日は高校生が地元の小中学生や地域の方と一緒に長門への想いをダンスや演劇などで表現する劇場パフォーマンスが行われた

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