カテゴリー 12020年採択

埼玉県立浦和高等学校

対象者数 1080名 | 助成額 200万円

http://www.urawa-h.spec.ed.jp/

Program浦和高校「総合的な探究の時間」

 1年次には、週2時間(水曜6・7限)を用いて、探究のサイクル(課題設定→情報収集→整理・分析→まとめ・表現)を生徒に年間4周させながら、その活動サイクルを回すのに必要な基本的スキルとマインド(主体性、協調性、有益性、思考力、 判断力等)を育成する。前半の2サイクルは、自分の身の回りの探究(自宅周辺や学校周辺)、後半の2サイクルは身の回りの探究は維持しつつ、SDGs17項目の各テーマと関連付けながら探究を行う。2年次では、1年次の活動を礎に、週1時間、半年または1年の期間を用いて、教員または生徒自らが設定する課題についての探究活動を行う。

 本校では、2年次のこの活動をアドグル(アドバイザリーグループ)活動と呼んでいる。1年次、2年次ともに、年度末に発表会を行い、1年間の探究活動のまとめを行う。

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リーダー育成は身近な課題から

 今年で創立125周年、全国屈指の進学校で、生徒には文武両道(校訓の「尚文昌武」)にとどまらず「少なくとも三兎(勉強、行事、部活)を追え」と指導。教員も個人の研さんにとどまらず、県教委が推進する協調学習(東京大学CoREFとの連携による「学びの改革」)など、主体的学びによる授業改善にも積極的だ。2014~18年度には文部科学省のスーパーグローバルハイスクール(SGH)にも指定された。

 19年度から全県立高校で前倒し実施となった総合探究では、総合的な学習の時間時代の2単位(SGHに伴う1単位減)から3単位に戻した上で、第1年次に2単位を配当。2時間続きを用いて「探究のサイクル」(課題設定→情報収集→整理・分析→まとめ・表現)を年間4回経験させ、活動サイクルを回すのに必要な基本的スキル(課題発見能力、情報収集・研究能力、情報整理・分析能力、まとめ・発信能力)とマインド(主体性、協調性、有益性、思考力、判断力等)を育成しようとした。

テーマは校内の課題から設定させることにした。鉄の味がする水道水▽部活動の練習場確保――など身近な課題の発見を基に、実際に関係部署にも交渉しながら、自分なりに実現可能な解決策を探る。

 近年は恵まれた環境で育った生徒が大部分だが、周りの問題に目を向けられず、問題意識も希薄なままでは、浦和高が目指す次世代のリーダー像である「世界のどこかを支える人材」の育成はおぼつかない。「プロセスにのっとって行動すれば、大人も動いてくれる体験」(担当の塩原壮教諭)をさせるのが狙いだ。

 後期はSDGsの視点を取り入れた。冒頭にOBである村上博信・国際協力機構(JICA)産業開発・公共政策部次長の講演を行い、身近な課題が17の目標のどこかに関連していることを気付かせようとした。

 今年度はコロナ禍のため3サイクルの実施にとどまるが、かえってSDGsの探究にじっくり取り組むには好都合だという気付きもあった。

 第2年次は、同高伝統の「アドバイザリーグループ(アドグル)」。教員が設定したテーマに集うゼミ形式で探究活動を行うもので、第1年次を受け継いで生徒が自由に課題設定できるゼミも設けた。成果は校内で「アドグル優秀論文集」にまとめる他、一部は書籍化もされている。

 塩原教諭は、教科の授業でも視野や関心が広がるなど「生徒たちが変わってきた」と手応えを感じている。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

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