カテゴリー 12020年採択

東京都立成瀬高等学校

対象者数 840名 | 助成額 200万円

http://www.naruse-h.metro.tokyo.jp/site/zen/

Program成瀬BB!プロジェクト

 “成瀬BB!プロジェクト”のBB!は、「Be a Bumblebee!(マルハナバチになれ!)」の略。マルハナバチは羽が非常に小さく、航空力学的に計算すると「飛ぶことが不可能な」ハチである。しかしこのハチは、自分が飛べないことを知らないため、元気に飛び回る。本校生徒には、自分の可能性にふたをせず、好きなことをとことん探究してほしいという願いを込め、この命名とした。

 活動は「つなぐ」をテーマとし、1学年は実社会の問題に対して各分野の専門家と共に、より良い答えを導き出して社会とつながっていく。2学年は自分でテーマを決めて自分の力で最適解を探し出し、課題と自己をつなげていく。3学年では活動を論文にして未来の社会や後輩にバトンをつないでいく。

 これらの活動過程で、予測困難な時代のさまざまな課題と正面から向き合い、 他者と協力して可能性を探り、行動し、自らの手で未来を創造しようと挑戦する人材を育成していく。

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生徒の声から学ぶ

  BBは「マルハナバチのように(自分の可能性にふたをせず)飛び立とう(Be a Bumblebee)」の意。15年ほど前、総合的な学習の時間の担当をしていた宮田明子校長がある講演で聞いた、米国の実業家メアリー・ケイ・アッシュ(1918―2001)の名言「航空力学的には、マルハナバチは飛べるはずがない(注=当時の解釈)。でも、マルハナバチはそんなことを知らないから、とりあえず飛び続けている」に由来する。
 コロナ禍で保護者の参加も制限された19年度の卒業式で生徒にこの話をしたところ、これを聞いた探究研修部の宇都宮裕主任教諭が、20年度からの総合的な探究の時間の名称にするよう提案した。ちょうど会社見学したYahoo!BBも念頭にあった。
 中堅進学校である成瀬高校の生徒は、与えられたことには熱心に取り組むが、自ら主体的に動くことは少ない。しかし「潜在的には、もっとやれる能力を持っているはず」(宮田校長)だ。そんな願いを、マルハナバチになぞらえた。そのためBBプロジェクトは、生徒が自分の価値に気付き、能力に上限を定めることなく社会課題に果敢に挑戦し、自信を持って進路を切り開いていくきっかけを与えることを目指している。

 3年間のプログラムは①社会とつながる(1年次「チームプロジェクト」)②自己とつなげる(2年次「マイプロジェクト」)③未来へつなぐ(3年次「フューチャープロジェクト」)の三つの柱から成る。とりわけ①は▽ホームタウン活動プロジェクト(FC町田ゼルビア、町田市役所)▽SDGsルワンダ協力プロジェクト(国際協力機構=JICA)など外部機関と連携した七つのプロジェクトで生徒の探究心に火をつけ、②で社会や学術に貢献できる課題を個人で調査・研究。台湾修学旅行やオーストラリア研修旅行(希望者)での発表機会も設定した。

 こうした構成も、実は19年度の「失敗」を踏まえたという。市販のテキスト通りに社会的意義を重視して課題を探究するよう指導したところ、当時の1年生から「何のためにやったか分からない」という意見があった。まずは楽しく取り組むことを前面に出すよう方針転換したという。探究研修部主任の浅沼善宣主任教諭は「教える側も苦しみながら課題を発見し、解決しています」と話す。 

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

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