カテゴリー 12020年採択

大阪府立茨木高等学校

対象者数 680名 | 助成額 200万円

https://www2.osaka-c.ed.jp/ibaraki/

ProgramIBARAMA ~「自主自律の精神」に基づき、
「高い志」と「枠を超える知性」を育む~

 生徒自身が立案・計画して実施する「海外宿泊野外行事(2年生全員参加)」を軸とした探究を伴う協働的活動と、本校独自の授業「ISC(Ibaraki Science College)」「課題研究」における探究活動(研究の実践)を二つの柱とした、2年間の継続した教育プログラムである。

 生徒は、「教科・科目」「学問分野」「学校」という枠を超えて、解決すべき社会課題を自らが発見し、海外の学生や社会で活躍する卒業生との議論を通じて、視野を広げ考察を深めるとともに研究の手法を学び、専門家の知見を得て解決策を探究していく。

 一部の生徒を選抜して育てるのではなく、全員に等しく機会を与えることによってチャレンジ精神を養い、そこから突き抜けてくる生徒をさらに伸長させるという教育方針の下、母校に恩返ししたいという多くの卒業生の支援を活かしてつくり上げる本校独自の探究プログラムである。

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訪問国まで生徒が決定

  1895(明治28)年創立の大阪府第四尋常中学校を前身としてノーベル文学賞の川端康成などが輩出する、府内屈指の進学校。自主・自律の精神により、学校行事のほとんどを生徒自治で企画・運営する伝統が根付いている。一方で、教育活動全体を「北辰プロジェクト」と銘打ち、さまざまな「しかけ」を設けて、生徒の成長を促している。
 2011年度にスタートした府教育委員会の「グローバルリーダーズハイスクール(GLHS)」(10校)に選ばれ、文理学科を設置して課題研究に取り組んでいる。これに合わせて、2年次の宿泊野外行事(修学旅行)は海外で行うようになった。

 指定プログラム名にあるIBARAMAは、校名の茨木に「視点」を意味するギリシャ語の接尾辞-ramaを付けた造語。応募した19年度は、GLHS指定10年目を控えて探究活動を飛躍させるとともに「二兎を追う」に替わる新しいミッション(現在の「枠を超える知性」)や新教育課程を検討する時期でもあり「最適のタイミングだった」と、本管克江首席は振り返る。
 プログラムは①海外宿泊野外行事を軸とした探究を伴う協働的活動②「総合的な探究の時間」と「課題研究」での探究活動(研究の実践)――が柱になっている。
 入学してすぐ、希望する生徒が集まって「宿泊野外行事委員会」が発足。旅行会社のプレゼンから目的やプランの検討、学年全員への提示と決定、訪問国の抱える社会課題(探究テーマ)の設定など、すべて50人ほどの委員で役割分担し、協働して進めていく。関連するテーマについての講演会や、大阪大学の留学生を招いて議論する「茨木B&S(Brothers & Sisters)プログラム」(11月)、ネーティブ講師による「英語イマージョンプログラム」や訪問国出身の留学生と家庭料理を作る「世界の屋台体験」(12月)、SDGsの課題について4日間議論し、解決策を提案する「Beyond_iプログラム」(3月)を経て、2年生6月の本番に臨む。ただし20年度はベトナム訪問の予定が新型コロナウイルス感染拡大の影響で東北方面に変更を余儀なくされた上、3年次でのリモート実施となった。

 もう一つの柱である探究活動は、1年次の5月に京都大学で卒業生の教授や学生の協力を得て講演を聞いたりグループで議論したりする「スプリングセミナー」を実施(20年度は9月に延期)。ISCは、理科教員が独自に作成した教材により、課題設定の方法や科目横断的な視点を学んだ上で、小グループに分かれてテーマを掘り下げる。2年次の課題研究(学校設定教科「探求」)は、自らが設定した探究課題について、大学教員や博士研究員の支援・助言も得ながら取り組み、中間発表、校内発表へと進む。

 この間、さまざまな分野の研究者を招いた「学問発見講座」(7月、20年度は中止)、第一線で活躍する卒業生の研究者による「オータムセミナー」(2年次10月)や「卒業生講座」(10月)も開催して、研究を後押しする。また、4月の始業式には代表チームによる「学びの報告会」を実施し、学校全体で探究活動の発展につなげている。
 「こちらから枠をはめないので、生徒はどんどん私の枠を超えていきます」と、卒業生でもある本管首席は目を見張る。自主性に任せるには教師側に我慢も必要で「楽しいけどしんどい」が「課題研究は教えるものではない、ということが10年かけて分かってきました」という。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

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