カテゴリー 12020年採択

長崎県立佐世保西高等学校

対象者数 712名 | 助成額 120万円

http://www.news.ed.jp/sasebonishi-h/

Program佐世保西高ふるさと創生大作戦
~佐世保と世界と未来を結ぶイノベーティブ人財育成~

 地域資源を活用した課題探究活動を通じて、地域の未来を見据えた提案や実践を行う。1年・2年前期には探究的な手法を身に付けながらグループで地域課題研究を行い、校内外での成果発表やコンテストへの応募、ベトナム研修やイノベーションスクールネットワーク等、グローバルな場で研究成果を発信する。また2年の夏季の企業訪問で探究学習とキャリアの接続を図り、2年後期以降の文系・理系別の課題研究でそれまでのグループ研究の内容をより深化させる。

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ふるさと創生で資質・能力育成

 海上自衛隊と米海軍の基地がある中核市で、九十九島やハウステンボス、世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産「黒島の集落」を擁する観光都市でもある佐世保市。しかし地方都市の常として、人口減少が喫緊の課題だ。
 そうした中にあって佐世保西高では17年度、宅島健司校長の赴任とともに授業改善に乗り出し、総合的な学習の時間(当時)を通じた探究的地域課題研究「ふるさと創生大作戦」を開始した。18年度には県教育委員会の「次代を担う高校生の資質・能力の育成のための指導改善プロジェクト」指定を受けてアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)に着手。19年度には若手教員による授業改善プロジェクトチーム(PT)の主導で、育成を目指す資質・能力の検討を全教員で始めた。

 現在、3年間を通して育成したい資質・能力を▽知識・理解=探求力、プレゼン力、対話力▽思考力・判断力・表現力=論理的思考力、批判的思考力、意思決定力▽学びに向かう力・主体=自己管理力、探究力、協力力――にまとめている。「不断の授業改善と総合的な探究の時間がセットでうまくつながれば、探究力も学力も向上します」と、教務主任の三好啓介教諭(4月から県教委高校教育課指導主事)は展望する。

 総合的な探究の時間では、1年次にまず「ミニ探究」を実施。佐世保駅と鹿児島中央駅の写真を見て、その違いに気付くなどの問いに取り組む。その上でテーマ別に分かれた文理別のグループで、経済産業省と内閣官房が地方創生のために提供している「地域経済分析システム(RESAS(リサース))」の活用やSWOT(スウォット)分析(強み、弱み、機会、脅威の把握)、市役所等の講義などを行う。こうした繰り返しによって課題発見・問題解決能力の基礎を培うのが狙いだ。
 1年次の2月からフィールドワークの計画に入り、3月の中間発表を経て、2年次の6月までにリサーチクエスチョン(RQ)を設定。7月と8月にフィールドワークを行い、中間報告会で県立大生からアドバイスを得ながら、10月に学年発表を行う。11月からは、文理別に課題研究を行う。文系は①「ふるさと創生大作戦」②地元企業5社が持続可能な開発目標(SDGs)に絡めて提示した課題に取り組む「わくわーくコンテスト」③市内の飲食店が開発した人吉・球磨地方の特産品「山うに豆腐」を使ったメニューの販売を支援する「バレンタインプロジェクト」――から選択。理系は、佐賀大や長崎大などで地域課題を中心とした実験・実習に取り組む。
 3年次は進路とつなげて、文系は「教育」「経済・法」など分野別に課題研究を行い、理系はキャリアセミナーを実施する。舟越裕教頭によると、高校で学んだ探究サイクルを大学の学びに生かしたいという意思が明確になり、志望理由書に書く内容が変化するなどして、総合型選抜や学校推薦型選抜で国公立大学に合格する者が倍増するなどの効果も出ている。

 校内で重要な役割を果たしているのが、「総探PT」だ。多様な教科や分掌から選んだ9人の委員による週1回の会議を時間割内に組み込んでいるのも、校内で探究学習を重視していることの表れだ。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

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