カテゴリー 22020年採択

一般社団法人 ELAB

対象者数 760名 | 助成額 650万円

https://elab.jp/

Program未来を描くプログラム

 絵画の創作と鑑賞を通じ「対話」「発見」「表現」を繰り返すEGAKUプログラムと、デザイン思考やアクティブラーニングの要素を組み合せることで、主体的で対話的な深い学びのスタイルを身に付けながら、探究的学習の質を高める土台となるクリエーティブ・コンフィデンス(自ら考えて進む道を見つけ、自分に内在する創造性を信じて行動する力)を育む「アートによる学び」のプログラム。

 クリエーティブ・コンフィデンスを育むことは、不確実性の高い時代の中で人生を創造的に生き、豊かな社会を創り出す人として不可欠であると同時に、 非認知能力(自己認知・多様性受容・対話力・発想力等)を体験を通じ高めていくプロセスも含む。

 プログラム設計・実施においては、日本独自の文化や社会課題を踏まえることを重視し、日本発の創造的な学びのモデルケースとして公立高校への導入、先生向けプログラムやオンライン学習等にも取り組み、全国への展開を目指す。

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アートを通じて未来を創り出す力を育む

 「私が描いたwishな世界は、静かな海の中のイメージです。穏やかで何もない、何もないゼロから何かを創り上げることでそれが希望になるんじゃないかと思いました」「自分のwishの世界は、いろんな感情とか価値観が合わさって、ようやく一個の希望にたどり着くようなイメージ。自然にできるというよりも、努力からできる希望なのかなと思って描きました」「うれしい時に見える希望だけじゃなくて、つらい時にも希望が見えるよという意味で正反対の絵を二つ描きました」「いろいろな線がいろいろな選択肢を表していて、それが複雑に絡み合っている。どの選択肢を選ぶかによって、進む未来が変わってくるというストーリーを想像して描きました」。

 武蔵野大学高等学校では、リベラルアーツの選択授業として2時限×10回の「EGAKU」を核とした創造的学びの授業を実施。EGAKUでは、オリジナルのパステル画材を使って「大切にしていること」「歓」「怖」「挑戦」「未来」などのテーマについて自由に描いてもらう。最初は「上手に描かなければならない」「変なことを描いたら否定される」という思いからなかなか筆が進まない。それでも取りあえず描き進めるように促す。絵を描いていくうちに自分の考えや想いと対峙し、他者の絵を鑑賞して多様性を受け入れていくことを体験していく。9回目の授業で生徒たちは、授業最後のテーマ“wish“を描いた自身の絵について語った。その表現は多彩かつ豊かで、wishというテーマに真剣に向き合い、自分の想いや考えを絵に込めたことが伝わってくる。「回を重ねるごとに、テーマへの向き合い方、鑑賞する力、自分らしい表現力、お互いへのリスペクトがどんどん高まっているのが感じられます」と、創造的な学びを展開するELAB理事の長谷部 貴美さんは話す。

武蔵野大学高校での授業の様子。長谷部さんがファシリテーターを務める。

自分の絵に対するコメントシートを読む生徒。コメントシートには、じっくり観賞してどう感じたか、この絵から感じるwish-希望の世界はどんな世界かを記入するようになっている。思いも寄らない他者からの新しい視点に驚く生徒も。

「不確実性が高い時代に入り、大人から子どもまで自己肯定感や創造性が必要だということを、多くの方が感じています。ただ一方で数値化しづらいものでもあり、目先の忙しさや結果を出すことを優先してしまう世の中でもあります。そのような中で、私たちの取り組みは助成対象としては分かりづらい側面があり、今回の財団の助成は本当にありがたい」と話す、ELABの(左から)長谷部さん、石井さん、高橋 浩子さん(常務理事)。

絵を描く過程で五つの要素を学んでいく

 EGAKUは、2002年に開発されて小学生向けからスタートしたが、04年からビジネスマンを対象に展開したところ、企業向けの開催が多くなり、21年11月現在延べ2万人が受講している。20年度からは三菱みらい育成財団の助成を受け、EGAKUを繰り返しながら「個の自律」「コミュニケーション能力」「多様性を楽しむ力」「俯瞰して観察する力」「正解のない問いを考える力」を学んでいく高校生向けのプログラムを設計した。20~21年度にかけ、武蔵野大学高校の他、福島県、長野県、宮城県などの各地の教育機関で実施。時間やテーマの他、地域団体との連携、オンラインの活用など、参加者の特性や主催者のニーズに合わせ、柔軟にカスタマイズしている。

 教育現場での実施については、口コミや自身の体験がきっかけとなっていることがほとんど。先生を中心とした教育関係者のコミュニティーなどでセミナーを実施し、EGAKUを体験してもらうと、多くの先生が自分の学校に取り入れたいと相談がくるという。「ご自身が体験して、共感してやりたいと思っていらっしゃるので、取り組みへの熱度・継続度合いが違う気がします。中にはまずは教員の学びとしてやりたい、教育委員会の教員向け研修で実施したいという要望もあります」と、事務局長の石井 美沙子さんは話す。

 近年、文部科学省がSTEAM※教育の推進に力を入れているが、教育現場にとって「Art」をどう取り入れていくかが大きな課題となっている。手法のノウハウが広がっていないことに加え、数値化や評価、検証が難しいからだ。「素直に表現したのに、生徒が知らないうちに点数を付けられるというのは一番良くないこと。私たちらしいものができないかと試行錯誤の上で作ったのが『気づきと学びのプロセスを振り返るためのシート』です。生徒や教員にとっては、生徒の成長が感じられ、うれしいフィードバックに。一方私たちにとっては“検証”になって、プログラムのブラッシュアップに活かせます」(長谷部さん)。このシートは、生徒の発言やプログラム中に記入してもらうワークシートから、「個の自律」「コミュニケーション能力」「多様性を楽しむ力」「俯瞰して観察する力」「正解のない問いを考える力」の五つに当てはまる要素を抜き出し可視化したもの。生徒が自分のことをきちんと見てくれていると受け止めてもらえることが重要だと長谷部さんは話す。

  またEGAKUの効果がその後どう活かされているかを検証するために、武蔵野大学高校で受講から1年半たった高校3年生を対象に、プログラムで印象的だったこと、今の自分の支えとなっている気付き、参加以降に自分が成長したと感じたことなどを記入してもらうオンラインアンケートとインタビューを実施。

 石井さんは「このプログラムを受けたことで、自分を周りに合わせなくなった、本当の自分をさらけ出すことを学んだから自分に合った進路選択に役立っているという話が出、プログラムの効果が持続していることがよく分かりました」と話す。

 これまでにも小学生時代にEGAKUを体験し、大学生になってからもう一度やってみたいという要望が幾つかあったという。「時間がたっても持続性があることが改めて検証された結果となりました。EGAKUを実施している企業の方と話していると、主体的にものを考え、情熱があり、学び続ける人材を育成しなければならないという悩みを聞きます。入社してからの教育では間に合わない、もっと早くから実施する必要があるという危機感を持っていました」と長谷部さん。「自己肯定感と創造性は、子どもから大人まであまねく大切なこと。全ての世代が心のエンジンを駆動し、日本や社会全体が創造的になっていく。私たちが最もインパクトを出したいところはそこなんです」。

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