Programダイバーシティ&インクルージョンを学ぶ高校
~科目「アイヌ文化」と多様性、共生・協働をテーマとする
「探究学習」の二つを軸として~
本校は「ダイバーシティ〈多様性〉とインクルージョン〈共生・協働〉を学ぶ高校(以下、「D&Iを学ぶ高校」)」を学校魅力化の旗印とする。その具体として、全国でも珍しい「アイヌ文化」という学校設定科目を今年度から開設し、地域の教育資源を生かして日本の先住民族の文化を系統的に学習する。また、「総合的な探究の時間(以下、「総探」)」は、多様性と共生・協働を3カ年のテーマとし、あらゆる多様性への理解を深めながら共生・協働社会の実現に向けた探究学習を行う。
「アイヌ文化」は今年度より学年進行で実施し、今年度は「アイヌ文化Ⅰ」を1学年が履修する。民族文化の基礎である言語を主として学び、工芸の一部も学ぶ。年度末には成果発表会を実施する。
「総探」は、1学年「多様性・共生社会基礎」、2学年「多様性と地域・SDGs」、3学年「共生・協働社会の実現に向けて」をテーマとする。
上記のいずれも、「D&Iを学ぶ高校」の二大特色であり、地域等の教育資源を活用し、主体的・協働的に学びながら、自己の在り方生き方を考え、よりよく課題を発見し解決していく資質・能力を育む。そして、多様な社会を共に生きる創造的な未来の担い手となる人材を育成する。


活動レポートReport
アイヌ文化を軸にしたD&I教育
ダイバーシティ(多様性)とインクルーション(共生・協働)を実現する「D&I」は地域や企業、学校などあらゆるセクターで求められる現代的な課題の一つだ。
同校は「アイヌ文化」を系統的に学び「D&I教育」を学校魅力化の旗印とする。高校のある日高地方、平取町は豊かな自然とアイヌ文化の拠点の一つとして広く知られ、二風谷アイヌ文化博物館などアイヌ文化伝承の文化・教育資源も豊富だ。
同校ではこれまでもアイヌ文化に関する学習や行事は続けてきたが、探究の視点から内容を整理し、D&Iの視点を取り入れよりよいコミュニティを創造できる人材育成を目標とした。
その特色は二つある。一つは今年度開設した学校設定科目「アイヌ文化」で1年生から学年進行で履修していく。アイヌの言語を入り口に、刺繍や木工などの工芸、アイヌの伝統や価値観、歴史などを伝承者を外部講師に招き学んでいく。
もう一つは「総合的な探究の時間」での学びだ。1学年は「多様性・共生社会基礎」、2学年は「多様性と地域・SDGs」、3学年は「共生・協働社会の実現に向けて」と、D&Iを中心に据える。
1学年では福祉施設や特別支援学校との交流などから共に生きる様々な人々に出会わせる。
2学年でトピックとなる活動は沖縄県立与勝高校との交流だ。日ごろから互いの探究の取組をオンラインで交換。2024年2月には与勝高校の生徒と教員が同校を訪問している。
25年2月にはこちらから生徒と教員が沖縄へ行き、与勝高校の探究発表会を見学する予定だ。これは探究を始めてから教員から声があがったという。
言語、暮らし、工芸、音楽など地域の文化を学び、守り、伝え、盛り上げていく視点はD&Iの課題解決に欠かせない視点だ。アイヌ文化との共通点もある。
「どのようなルーツであっても沖縄文化を大切にしている沖縄の人たちや高校生に出会い、様々なものを吸収してほしい」と、鈴木浩校長は今年度のリアルな交流に期待をかける。
平取町の支援を受け、新入生の希望者を自己負担なしでハワイに派遣する海外研修も2025年度から本格的に始まる。ハワイの先住民との交流を軸に、D&Iを世界目線で考えられる機会を提供したい考えだ。

学校設定科目「アイヌ文化」で木工に挑戦する。