Program“農林魂”で未来をひらく!
~自分らしく生きる力をつけるために~
本校は創立136年の伝統校である。歴代の卒業生は母校愛に溢れ、他者への感謝の気持ちを忘れず学業に励んでいた。そのため恩返しの観点から、地域の第一線で活躍する人物が多く、こういった資質は“農林魂”として長く受け継がれてきた。しかし社会の変化に伴い、現在の生徒の姿からは、どこか受け身の姿勢が見られるようになった。“農林魂”は、様々な人や価値観との出会いを通して、自己を見つめ直し、未来の社会の担い手として自覚を深めることで培われてきた。そこで本プログラムでは、「出会い」を【自己との出会い】【他者との出会い】【未来との出会い】に整理し、農業技術科と総合学科の探究学習において、これらの「出会い」をキーワードにした活動を充実させ、在校生にも“農林魂”を継承させていくことを目指した。


活動レポートReport
2学科併設の強みを活かし多様な出会いを創出
創立136年の歴史を持つ小牛田農林高等学校は、総合学科と農業技術科の2学科を併設。前者は人文社会、自然科学、情報ビジネス、健康福祉の4系列、後者は農業科学と農業土木の2コースに分かれている。
「こうした学びの多様さは、本校の強みであるものの、個々の専門性が高いため連携が取りづらく、せっかくの教育資産が分散していることに歯がゆさを感じていました」と、総合学科の鈴木崇之先生は語る。「一方で、特にコロナ禍以降、生徒の間に受け身の姿勢が目立つようになっており、これからの社会の担い手に求められる主体性や積極性を育むためにも、両学科の連携による学びを深めていくべきと考えたのです」。
こうした理念のもと、同校では探究学習において「出会い」をキーワードとした3段階のプログラムを構築。まずは1年次を対象とした「自己との出会い」により、自己理解を深めて可能性を見いだしていく。後半の2段階は2、3年次を対象とし、「他者との出会い」では、学科や学年の枠を越えた学び合いにより、多様な価値観に触れながら、自身を相対化する視点を養う。最後に「未来との出会い」では、地域の大人たちとの交流を通じて、地域の課題と向き合いながら、その解決に取り組む未来の自分をイメージしていく。
「こうした出会いを実現する上で重要なのが両学科の教員同士の連携です。そこで、プログラムの運営主体となる魅力向上委員会を新設し、全校の教員が、外部人材も含めて一体となった体制づくりを進め、指導方針の共有や授業連携などを進めています」と農業技術科の浅野武巳先生は語る。
全校一丸となった取組により、最近では学科間連携による探究活動の深化が見られるという。「農業技術科の生徒が見いだした課題を解決するために総合学科の生徒がアイデアを出すなど、それぞれの学びを活かした協働が生まれています」と浅野先生は目を細める。
「本校が掲げる“農林魂”とは、多様な人や価値観と出会う中で、次代の社会の担い手としての自覚を深めることで培われてきたもの。今後も三つの出会いで生徒の心のエンジンに火を点け、“農林魂”を継承させたい」(浅野先生)、「そのためには私たち教員も学び続ける必要がある。先進校の視察などを通じて、より良い学びを実現していきたい」(鈴木先生)と、それぞれに強い決意を語る両先生の言葉から、学内連携がさらに深まっていくことが期待される。

2023年度からスタートした学科横断探究交流会。探究活動の中間地点にあたる7月に実施されるため、他学科の生徒からの質問やアドバイスが、その後の探究活動の充実につながるケースも多いという。「今後は他学年や町内の中学校など、交流の幅を広げていきたいですね」(鈴木先生)。