Program地域創生に関わる日本一の学校を目指して
~地域産業の継承と年次縦断の探究活動をとおした、
社会に貢献できる人材の育成~
本校では、地域の基幹産業である「蕎麦」と「米」を学校運営の2つの大きな柱として位置付け、地域の方々や他県の高校生と協働して学びを進めている。また、それを補完するものとして総合的な探究の時間を活用し、地域の課題解決に向けた生徒主体の取組みを構築中である。これらの活動を通して、生徒が自主的に地域創生活動を進めるとともに、今後、社会において自ら様々な課題の解決に向けた取組を、企画運営する資質や能力を身に付けた生徒の育成を図ることを目的とする。
本校が所在する福島県郡山市湖南町は、歴史と伝統が息づく大自然豊かな土地であるが、人口減少が急激に進み町自体の活力が失われつつある状況である。令和2年度にコミュニティ・スクールに指定され、地域の方々との協働による学校運営が進められてきた。本校は普通科高校ではあるが、現在、町の基幹産業である農業について、「蕎麦」と「米」の栽培から6次化商品の開発までを行っている。また、総合的な探究の時間では、年次縦断の取り組みの集大成として、上級生が下級生の探究活動の講師として自らのノウハウを伝授することにより、生徒の自走に取組むとともに、地域創生の一翼を担う人材となるべく学びを進めている。



活動レポートReport
地域の文化や産業を知り外に開いていく探究
福島県内の高校で初めてコミュニティ・スクールに指定された県立湖南高校。地域産業である「蕎麦」と「米」の栽培・加工体験を通して、「自己実現をしながら社会に貢献できる自己肯定感の高い人材の育成」を目指す。地域や保護者が学校運営に協働し探究を支援しているのが特色だ。
1年次は「地域カダイ探究」。湖南町の企業人などへのインタビュー活動を通して、地域の課題を考察すると同時に、探究の土台となる情報収集や発表の手法を学ぶ。
2年次は「地域ミライ探究」で、3班に分かれて地域理解と自己理解を深めていく。「つくる班」は山菜などを使った郷土料理を地域の人たちから習う。「つなぐ班」は湖南に伝わる太鼓や民話の劇発表を通して地域文化の伝承を担う。「つたえる班」は観光PRにつながる町のパンフレット作りやSNSでの情報発信に取り組む。3年次は「自分ミライ探究」として、進路の自己実現に向けた探究の総まとめをする。
同校の探究の特色は学年縦断で活動する時期を設けていることだ。1年生は学年の後半で2年生の活動に加わり、そこに3年生が講師役として参加する。学校近くに借りている実習田での米づくりや蕎麦の栽培は収穫まで全校総出で行っている。
そんな小規模校ならではの一体感ある探究で豊かな人間関係が醸成され、それが外部に開かれた活動へと発展している。
2月に開く「ぬくぬく雪灯籠まつり」は、探究や教科学習、部活動の成果を披露する生徒発案の地域イベントだ。生徒が育てた蕎麦を使った「たぬきそば」や「そばクレープ」、伝統菓子「かりんとう」などを販売する。幻想的な雪灯籠は、長年、米作りで交流のある埼玉の私学、城北埼玉高校の生徒たちと共同制作し、火を灯す。
そんな生徒の様子を見て、2024年度は地域の支援で「花火の打ち上げ」が実現した。さらに、本格的なそばつゆも提供できるようになったという。「高校生の取組に、町の方々が参画する動きが一気に出てきた」と、野口智行校長は話す。教員も辛抱強く見守ることに徹しており、それが生徒のコミュニケーション力や自尊感情、主体性を高めることに結び付いている。
蕎麦と米の6次産業化商品開発を進めるために製粉機を導入し、有志が城北埼玉高校を訪問し、川越の町並みを散策するなど、探究の広がりは加速している。2024年度は瀬戸内海の生口島にある広島県立瀬戸田高校との交流を本格化させる予定だ。

雪灯籠まつり実行委員会の会議の様子。