カテゴリー 12024年採択

群馬県立伊勢崎高等学校

対象者数 867名 | 助成額 200万円

https://isesaki-hs.gsn.ed.jp/

ProgramiTanQ~伊高の探究が世界をつなぐ~

 生徒が自ら過去を振り返り、未来を展望し、今の社会的課題に取り組む「非認知能力」の育成を目的に、本校全生徒が取り組む「総合的な探求の時間」:「iTanQ蒼穹」を充実させる。本校は、「iTanQ蒼穹」を主軸に据え、以下4つのプログラムを実施していることを特徴としている。

 本校が拠点となる高校生徒の全国探究ネットワークを構築し、学校の枠を超えた探究活動を行う。具体的には、学校の枠を超えて全国の生徒とつながる「iTanQスクール(上野ゼミ)」を開講し、他者の視点を取り入れつつ探究活動を深化させ、発表・論文執筆を行う。今年度は、生徒の探究活動の成果をコンテスト形式で発表する場として「第3回iTanQ”X”」を開催する。その他、「iTanQ”X”」では、探究活動に関する講演会や学校関係者の探究活動の交流会を実施している。また、社会課題解決を行う前提として、生徒が「社会を知る」場を提供するために、「iTanQスタディツアー」を実施する。今年度、第3回は立命館大学大阪いばらきキャンパスで動画編集・作成のスキルを学ぶ。第4回スタディツアーでは群馬県南牧村でのフィールドワークを行い、少子高齢化に直面している地方自治体の現状と取り組みを学ぶ。来年度以降は、山形・岡山・長崎方面も検討している。加えて、「iTanQ+」では、全校生徒に各種コンテストへの応募等とその支援を行っている。

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活動レポートReport

学外に出て知識を得る機会が 自ら学ぶ意欲を育む

 歴史ある2校の統合により2002年に誕生した伊勢崎高校は、普通科と県内唯一のグローバルコミュニケーション科を併設。「自ら考え、判断し、行動できる生徒」を育成するモデル校としてSAH(スチューデント・エージェンシー・ハイスクール)の指定を受けるなど、特徴あるカリキュラムを整備している。2023年には、複数の高校で探究学習をけん引してきた高橋みゆき校長が着任し、探究部を新設して全校的な変革を推進。校名のイニシャル「i」にイノベーション、アイデア、私、愛などの意味を込めた「iTanQ」をスタートさせた。

 このプログラムは、「総合的な探究の時間」の「iTanQ蒼穹」を軸に、東京大学名誉教授である上野千鶴子先生の指導のもと全国から参加者を募ってゼミ形式で研究を行う「iTanQスクール」、その成果をコンテスト形式で発表し合う全国探究交流会「iTanQ“X”」、生徒に五感を使って社会を知る機会を提供する「iTanQスタディツアー」、学外の各種探究コンテストへの応募を支援する「iTanQ+」という5本柱で構成される。

 活動2年目となる2024年から参画した山口将史先生は「本校の取組は、公立高校の主導による全国的な探究活動ネットワークとして注目されており、生徒はもちろん教員にとっても成長の機会となっています。今後も継続的な成果を期待する一方で、全校生徒が参加する『iTanQ蒼穹』の充実にも取り組んでいます」と語る。

 「初年度は地域社会が抱える課題をピックアップし、その中からテーマを選ぶ形でしたが、2年目は生徒が興味・関心のあるテーマを自由に設定できる形にしたことで、探究活動を自分事として捉えるようになりました。加えて、学内での“調べ学習”だけで終わらないよう、実際に社会に出て課題を体験する機会を設けました」(山口先生)。こうした工夫によって、待機児童の解消をテーマに掲げた生徒が自ら地域の保育園に交渉してフィールドワークを行うなど、学びの姿勢に大きな変化が見られたという。

 「生徒全員が経験できる学校授業の中で、学外で知識を得られる仕組みをつくるのは私たち教員の役割ですが、実際に社会との接点をつくり、探究成果につなげるのは生徒たちにしかできないこと。これからも生徒と力を合わせてプログラムを充実させていきたい」と山口先生が語るように、あくまで「主役は生徒」を徹底し、その成長を信じる先生方の期待と信頼に、同校の生徒たちは必ずや応えてくれることだろう。

島袋 浩次(ライター)

iTanQ蒼穹とともに、学外で知識を得る機会として重視するのがスタディツアー。高齢化率日本一で知られる群馬県南牧村では空き家問題の解消をテーマにフィールドワークを実施。「実際に空き家を見て、匂いや手触りも含めて五感で体感することで、課題を自分事として捉えられた」(山口先生)という。

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