Program“未来を拓く”あららぎ探究
~問いを磨き、生徒も教師も学び続ける学校~
本プログラムは、「未来を拓く」という本校の教育目標を達成するために、「総合的な探究の時間」を充実させ、「自ら問いを見つけ、その解決に向けて計画を立て実行していく主体性」を育成する。具体的な特徴は、次の5点である。
(1)問いを磨く:生徒一人一人が自分自身の興味関心(Will)、身の周りや地域や社会の課題(Needs)、学問領域(Academic)にまたがる探究課題を問い(MQ=メインクエスチョン)の形で表現し、好きなことをとことん探究する。
(2)探究型インターンシップ:地域や社会の課題(Needs)を発見するために、1年次全員が県内・全国の企業に交渉し、飛び込み、社会の中で学ぶ。
(3)学生アドバイザー制度:自分自身の問い(MQ)について、対面やオンラインで全国の大学生からフィードバックを受ける。
(4)あららぎフィールドワーク:2年次夏には、自ら地域・社会に飛び出して、インタビューによって問いを検証する。
(5)あららぎ卒業生調査:探究活動によって身についた資質・能力が大学においてどのように役立っているかを追跡調査し、分析する。
以上のプログラムにより、「問い」によって自身の探究したいことを表現し検証する力が身につき、生徒が継続的に心のエンジンを駆動させ、将来、社会参画・問題解決していくために必要となる資質・能力を身につけることができると考えている。

活動レポートReport
生徒自身が探究テーマを設定し 未来を拓く力を育む
1978年創設の高崎北高校は、毎年多くの生徒が県内大学に進学する、地域に根差した進学校。2019年に設置された「あららぎ探究推進部」のもと、シンボルツリーである「あららぎ」の名を冠した独自の探究学習プログラムを展開している。同部の部長を務める志村克樹先生は「重視しているのは、グラデュエーション・ポリシーにも掲げる『自ら問いを見つけ、その解決に向けて計画を立て実行していく主体性』を養うこと」と語る。こうした理念のもと、1年次には自身の問いを実社会で体感する「探究型インターンシップ」を経て、生徒一人ひとりが探究テーマを設定。そのテーマに基づき、2年次に地域社会での「あららぎフィールドワーク」を実施し、そこでの成果をもとに課題解決への具体策を練るというのがプログラムの流れだ。
インターンやフィールドワークの受入先の選定・交渉など、すべて生徒が行うという徹底ぶりだが、やはり難しいのは自分だけの探究テーマを見いだすこと。そこで、Will(自身の興味・関心・原点)、Needs(地域社会や身の回りの課題)、Academic(将来の学び)の3領域にまたがる問いを表現することで、課題を具体化しているという。
同校の探究学習のもう一つの特徴が、教員たちがアイデアを出し合い、新たな施策を導入し続けていること。例えば、2022年度からは学生アドバイザーによる外部評価をスタート。世代の近い大学生からのアドバイスは、生徒たちに大きな刺激と将来へのヒントを与えているという。提案者である森田直樹先生は「当初は地域の大学からの紹介に頼っていましたが、最近では探究学習を経験した卒業生が全国の大学から参加してくれるようになり、アドバイスの質と量が向上しています」と手応えを語る。
さらに2023年度からは、探究学習の成果を検証するための卒業生調査を実施。高校の探究学習が大学での学びにどう影響しているか、継続的なアンケート調査を実施している。「探究学習に熱心だった生徒ほど、大学で充実した学びを経験できていることが確認でき、プログラム改善へのヒントを得られると同時に教員のモチベーションにもつながっています」(森田先生)。
「プログラムが掲げる『未来を拓く力』とは、自分の学びをコーディネートし、自ら学び続ける力。やらされるのでなく、自ら探究を楽しむことで、そうした力を養ってほしい」との先生方の思いが、同校の生徒たちの成長を力強く後押ししているようだ。
島袋浩次(ライター)
毎年3月には2年生全員による最終発表会「未来を拓く展」を開催。1年生も含めて成果を共有し合うことで、探究学習の活性化につなげている。「かつては消極的な生徒が多い印象でしたが、最近では発表や質問に積極的な生徒が増えている」と両先生は確かな手応えを感じる。