Program「つなごう!ちちこう!」
~学校と地域をつなぐ 秩父高校地域協働プログラム~
本校では令和5年度より、秩父地域での学びを軸とした探究プログラムの作成と実践を開始した。1年次に地域の方との交流を通して地域を知り、2年次にチームで設定した課題解決を目指して地域探究をし、3年次は個人が自己にフォーカスをする活動の流れを踏む。
1年生の学年目標は、「ちちぶを知る・動く」。企業等との協働探究を通して、「地域を知る」ことに加え、「地域のために動いてみること」を主眼とし、企業との協働による協働性や社会性の向上を目指す。
2年生の学年目標は、「ちちぶと考える・生み出す」。秩父に関係する6分野(観光/伝統文化/ものづくり/食・農業/自然・環境/まちづくり)に分かれてチームを組み、自分たちで設定した課題について仮説を立て、街に出てフィールドワークを行いながら実践につなげていく。地域で貢献できる第一歩を踏み出すことを目指す。
3年生の学年目標は、「ちちぶから始める・羽ばたく」。これまでの地域での学びを活かしつつ個人探究として自己の興味関心を深め、自己実現を目指していく。
今年度は、「つなごう!ちちこう!」をキャッチフレーズに、生徒と地域とのつながりに加え、昨年度の上級生の学びを下級生に、さらに未来の後輩へとつないでいく。

活動レポートReport
学校と地域が手を取り合って 生徒の成長を促す環境を
秩父地域で唯一の普通科高校として、約120年にわたる伝統を積み重ねてきた秩父高校。2023年には県立高校学際的な学び推進事業の指定を受け、グローカルな人材育成を図るプログラムを実施。その推進にあたって探究学習・地域連携担当として赴任したのが、地域連携の経験に加えて社会教育士の資格を持つ田中里奈先生だ。「本校に赴任してまず感じたのが、秩父に愛着を持ちながらも、詳しくは知らないという生徒が多いこと。一方で、進学校ゆえに卒業後は地域外に出ていく生徒が大半のため、地域の大人たちも本校と接点を持とうとしていませんでした」と田中先生は振り返る。「そこで初年度は、まず地域の方々との接点を増やすことを重視し、『ひらこう!ちちこう!』をキャッチフレーズに学外の人々と関わる機会づくりに注力。そこで培われたオープンマインドを発展させ、活動2年目には『つなごう!ちちこう!』として、学年ごとの目標を踏まえたプログラムを実施しています」(田中先生)。
1年生は「ちちぶを知る・動く」を目標に、地域企業との協働探究を行う「QUEST」を実施。地域の文化や産業、それらを取り巻く課題の発見に取り組む。2年生は「ちちぶと考える・生み出す」を目標に、地域課題の解決にチーム単位で取り組む「FEST.」を実施。観光、伝統文化、ものづくり、食・農業、自然・環境、まちづくりの6分野で、各チームが自ら設定した課題についてフィールドワークを行い、地域貢献への第一歩を踏み出した。そして3年生は「ちちぶから始める・羽ばたく」をテーマにした個人探究「FLIGHT」に挑む。それぞれの成果は中間・最終の成果発表会で学年を越えて共有され、先輩の取組を参考にして、次年度の活動の深掘りが期待されるという。
2年生を担当した井上凌亮先生は、「最初は、地域の課題発見に奔走していましたが、秩父を盛り上げる方々の存在を知り『貢献できるようになりたい』と考える生徒が増えました。また、高校生ならではの視点で問題解決しようとする姿が頼もしい」と確かな手応えを語る。
「秩父地域は自然に恵まれ、文化・歴史的背景もあって観光資源も豊富。本校にも伸びしろのある生徒が多く、両者を掛け合わせることで、地域活性につながっていくはず。2026年度から近隣校と統合し、変化を迎えるこのタイミングを逃さず、探究学習を通じてより魅力的な学校にしていきたい」と両先生は口を揃えた。
島袋 浩次(ライター)
本プログラムには20を超える地域企業・団体が協力。例えば、おもてなし観光公社および秩父札所連合会とともに、若い世代への認知度向上に取り組んだチームは、札所を案内するイベントを企画。地域のラジオ番組でも紹介されるなど大きな反響を呼んだ。