Program北の杜から世界へ
~高校生の力で地域活性化に挑む~
山梨県北杜市は、名水百選にも選ばれるなど名水の里である。また八ヶ岳と南アルプスなど3つの国立公園・国定公園に囲まれた自然豊かな地域であり、農業など様々な産業が存在する地域でもある。北杜高校はまさにこの地域を写したような高校であり、農業・商業・福祉系列の総合学科と普通科を備えた高校で、広大な土地に農場や馬場なども抱えている。創立109年という歴史があり、地域との結びつきも強く、これまで北杜市との提携など様々なプロジェクトを実行してきた。その一つ「食杜北杜」では地元の商品開発に高校生の視点から様々な提案をし、地元企業とのコラボを進めてきた。「水の山プロジェクト」では北杜市の水の魅力を広くアピールする機会となった。他にも、本校の収穫祭「フェスタ」など地域との接点を多く持ち、これらを足掛かりとして、生徒育成の観点を中心に地域活性化につなげていきたい。
今、日本の抱える「人口減少」という問題には、地域の過疎化という課題も含まれている。これを高校生の視点からとらえ、地域を活性化することや、移住者増のため地域の魅力を発信するなどの課題解決を通し、生徒が21世紀型のグローバル社会の担い手の一員として活躍する礎としていく。環境だけでは地域の魅力には限界がある。そこに生きる人を育てることが、地域活性化の重要な視点であることを念頭に、広く課題解決に向けて取り組む。

活動レポートReport
移住時代の「地域づくり」を 見据えて
北杜高校は創立110年を迎える伝統校で、2001年4月に峡北、峡北農業、須玉商業の各高校が再統合し、現在の総合学科と普通科を有する総合制高校として、地域に根ざした教育に取り組んでいる。同校が所在する北杜市は、少子高齢化、若年層の減少という課題を抱える。一方で、豊かな自然環境を求め県外からの移住者も増加しており、新しい視点による地域づくりが始まっている。こうした状況をふまえ、高校生が地域課題を解決し、地域活性化を図る方策を探究する活動を、地域の人と関わり合いながら行うのが同校のプログラムの特徴だ。活動を通して生徒が自らの個性を発揮し、未来社会の担い手として活躍できる資質を身に付けることを目指す。
1年次は地域在住の方をコーディネーターとして招き、高校生と地域社会や地域の企業をつないでもらう。そのつながりの中で地域の現状についての理解を深め、地域が高校生にどんな発想力を求め、どのような連携が可能かを学ぶことから探究を始めている。また県内の大学訪問を行い、地域活性化について大学が研究している内容や事例についても学ぶ機会としている。2年次は山梨県と他県の状況を比較し、それぞれの取組について探究や考察を行う比較文化論的アプローチで探究学習を進める。3年次は自らの進路希望と関連付けて、探究成果を集約するとともに、アウトプットの場として、また外部評価を受けるため様々な探究関係のコンテストへ参加している。
五感を通した探究を重視
これまで同校では各系列で学んだ成果を地域へ還元する場として開催している収穫祭「フェスタ杜のきらめき」や、地域の企業と連携して商品開発を行う「食杜北杜」等の活動を通し、地域と共に成長する取組を推進し、実績を重ねている。こうした活動を深化させるとともに、これらの活動を通して培った地域の行政や民間事業者との接点を生かした探究活動から社会発展の担い手となる人材を育成している。
次世代を担う生徒たちにとって、自らをとりまく地域社会と関わり、他者と協働して課題解決を目指す力を得ることは大きな意義がある。フィールドワークなどを通して五感を使って感じ取り、学び、多様な他者と関わりながら課題を多方面から見つめ、探究的学力を向上、醸成していけるよう学校全体での取組を推進したい考えだ。
長尾 康子(教育ライター)
収穫祭「フェスタ杜のきらめき」で企業と連携して開発した商品を販売。