カテゴリー 22020年採択

認定NPO法人 グローカル人材開発センター

対象者数 40名 | 助成額 789万円

http://glocalcenter.jp/

ProgramGlocal Shift Programme
~君が世界を変える、君の世界を変える~

 京都を中心とする高校生を対象に、多様な企業人・社会人との熟議的ワークショップや、オンラインおよびリアルでのフィールドワークを通じて、自身の未来を創造力豊かに考えてもらうプログラム。

 昨今の世界が直面する複雑な社会的課題を創造的に解決するためには「幅広い知識・領域への関心、独自の専門性、グローバルな視野」を有する人材を育成する必要がある。

 そのような飛躍を遂げるために、企業・行政・大学・市民などで構成される地域社会全体が「寄ってたかって」高校生を育成していく。プログラムの最後には、産官学民のトップリーダーが審査員を務めるアワードで社会への提案を行う。

 高校生が世界(社会)を変える。高校生自身の世界(視野)も変える。それにより高校生が「自分たちがここまでできる!」と気付く。社会が「高校生がここまでできるのか!」と気付く。

 こうした驚きと期待で「未来へのワクワク感」を生み出していく。

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「オール京都」で高校生の社会を変える提案をサポート

  若い世代に対する人材育成や教育機関の支援、採用機会の提案などを行ってきたNPO法人グローカル人材開発センターが、2020年度から高校生を対象にスタートしたのが、「Glocal Shift Programme(以下、GSP)」だ。高校生がさまざまな分野で活躍する講師と交流し、フィールドワークやワークショップを通じて、「高校生が社会に対して本気で世界を変える提案」をするという9カ月間にわたるロングプログラムで、同センターにとっては初めての公募型。高校生対象のプログラムとしては、これまで高校内でのキャリア教育や講演などを行っていたが、「GSPは、グローカル人材開発センターがこれまで育ててきた“土壌”を全部活用できるという点が大きな特徴だと思っています」とコーディネーターの外崎佑実さんは話す。

 GSPの最初の2カ月間は、第1フェーズとして講師を招聘してのプログラムとなっており、高校生の心のエンジンに火が付くかは、ここでの講師との出会いが大きく影響するため、講師選択の「目利き力」が問われる。グローカル人材開発センターは、京都の大学・経済界、行政機関という「オール京都」体制で2013年に設立されたNPOで、産・官・学・民・起業家と幅広い人脈とネットワークを持ち、講師もこのネットワークの豊かな“土壌”の中から選出している。長年の信頼関係がある講師陣の他に、これまでの人脈から紹介してもらった方、スタッフが新たに探し出してきた方に協力いただくなど、新しい風を取り入れてマンネリを防ぐこと、また年齢・性別・国籍などの多様性を確保することも常に意識しているという。2021年度は、フェーズ1や後述するフィールドワークやオンラインインタビューで、延べ28人の多彩な講師陣が協力。同センターだからこそ提供できる貴重な社会人との接点がこのプログラムの大きな魅力となっている。

 フェーズ1は、熟議を4回、レクチャーを伴うワークショップを4回と充実した内容で、「講師陣との対話や質疑が予想以上に弾み、当初自身の発言に不安を持っていた参加者たちも積極的になり、皆自信を持った顔になっていきました。ここで確実に心のエンジンに火が付いた人もいます」と外崎さん。例えばある起業家の講演の時に、その場で「僕、起業します」と手を挙げた高校1年生の子がいたという。数カ月たってからグローカル人材開発センターのスタッフに「自分のやりたいことがまとまってきたから話を聞いてほしい」と声を掛けてきた。本人の中でその火が燃え続けていたことに感銘を受けたと外崎さんは話す。

講師陣との熟議の様子。講師も「高校生たちから刺激をもらえる」と、協力を惜しまない

社会を変える提案が自分たちを変えるプロセスに

  第2フェーズは、第1フェーズの中で見えてきた自分の興味や関心事を付箋や紙に書き出し、同じようなテーマでチームを組んでの活動となる。土曜日午後の全体活動の他、火・木曜日の17~20時でオンライン・オフラインの放課後相談室など、チームとして活動する場をセンターで設けることで、継続的な活動を促していった。フィールドワークは新型コロナの影響でオンラインに切り替え、センターのスタッフがフィールドワーク先に伺い、ライブ配信をして、参加者がインタビューするという形を取り、オンラインを取り入れながらも、リアルな対話を実現させた。ここで得たインタビューのノウハウは、この後に行われたテーマごとのオンラインインタビューでも生かされたという。3カ月後に中間発表を行い、その後にフェーズ3として3カ月間の個人活動に入る。テーマは、チーム活動の時のものでも、また新しく設定しても構わない。「実は2020年度はグループ探究だけで、中間発表会を終えた後に、『個人でも探究したいので、発表の場をくれませんか』と言ってくれた高校生がいました。チーム活動だけで終わらせず、最終的に個人としての自立や関心の深掘りに向かわせる仕掛けが必要だろうということで、2021年度からは個人探究を入れました」(外崎さん)。

  このフェーズ3・4に、センターのコーディネーターとの「個人面談」の場を複数回設けているのも同プログラムの特徴の一つだ。面談では、興味を持っていること、大事にしていることなどからチームの活動の目標、将来やりたいこと、夢などを聞いていく。コーディネーターは話を聞きながらグラフィック化していく。「可視化すると振り返りやすいですし、他の人と共有できるため、応援し合うこともできます。1回につき20分程度と短い時間ですが、誰にも話したことがない自分のやりたいこと、夢を話してくれ、その後実際にその挑戦が実を結んで合格通知を受け、チームのみんなに打ち明けている子もいました。個人面談は、自分自身を自分で応援できる、強い後押しの機会だと考えています」。 2022年度には、この個人面談をよりインタラクティブにする予定だという。

 課題の一つが、高校の先生の見学者をさらに増やしていくことだ。「校内で探究を推進する先生たちを支援していくという目的の他、校外の理解者を増やしていく、横の接点を増やしていくことも重要で、私たちが目指している『教育の社会化』を実現化する一つの方法だと思っています」と外崎さんは話す。

   プログラムに参加した高校生たち次年度のプログラムに参加するなど縦のつながりや、大学生のインストラクターの輪も広がりつつある。高校生・大学生を引き付ける魅力は、「ここにいると楽しいと多くの高校生が思っているからではないか」と外崎さんは、グローカル人材開発センターのスタッフの名刺の裏にある絵を見せてくれた。参加者の1人が、同期プログラム参加者全員をイメージして描いたものだ。さまざまな花や草木、陽の光、かげろうのようなかたちが柔らかな水彩画で描かれ、それぞれ形は違うが重なり合ったり、つながったりして、全体で一つのまとまりになっている。この絵を描いた参加者が、チームやスタッフ、またそのみんなが集う場をどう思っているのかが伝わってくる。アートの世界に進む決意を話してくれたこの参加者は、後日、うれしそうに進学の報告に訪れたという。高校生が社会を変える提案をするプロセスが、自分たちを変えるプロセスにもなっている。「その高校生の姿に、スタッフや講師陣も感銘を受けています。お互いに刺激して、進化し続ける場を継続させていきたい」と外崎さんは話す。

バングラデシュ、ネパール、インドネシア、スリランカ、インド、ミャンマーで、ジュエリーなどの生産を行う京都の会社とオンラインでつなげたフィールドワークの様子

高校生に寄り添う大学生(一番奥)。参加者が高校卒業後、大学生となってサポート役として参加してくれる事例も増えているという

参加者の一人が描いてくれた絵を持つ外崎さん。名刺裏やパンフレットにもこの絵が使われている

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