京都市立京都奏和高等学校
対象者数 240名 | 助成額 200万円
ProgramMake smile
―心のエンジンをかけるための鍵となる「笑顔」の見つけ方―
困りのある生徒がそれぞれの「笑顔」を見つけること。それが心のエンジンの鍵となる。
さまざまな困りから心を閉ざしていた生徒たちが、核となる2つの教科を通じて集団で学び、さまざまな人との出会いから、ゆっくりとでも確実に「心のエンジンを駆動」させることを目指す。
生き方を探究する教科「キャリア」では、自己理解、他者理解や社会を知ることを通じ、自分の困りを理解・受容し、願いを叶える進路実現の方法や手段を身につけていく。総合的な探究の時間「ビジテック」では、身近な人々の困りや願いに向き合い、社会や地域と協働しながら課題解決に取り組むことで社会の一員としての役割や自覚を醸成していく。ともに大切にしたいのは自分も他者も「笑顔=しあわせ」になること。「笑顔」の見つけ方を学び、それを鍵に心のエンジンを駆動させ、社会の創り手として豊かな社会生活を送ることができる生徒の育成を目指すプログラム。

活動レポートReport
学びを通じて取り戻す笑顔が将来への希望と勇気を育む
京都市内の定時制高校2校が再編・統合され、2021年に普通科定時制高校として開校した京都奏和高校。岸本徹教頭は、同校の理念を次のように語る。
「定時制高校は、勤労青年の就学機会の場としての役割から、不登校等長期欠席生徒や発達(行動や認知)に特性のある生徒をはじめ、多様な学びの動機や学習歴を有する生徒たちの学びの場と変容しています。本校は不登校などの困難を抱えた生徒に『自立するための基礎を身につけ、社会の創り手として主体的に行動し、豊かな社会生活を送ることができる』ための力を育むことを目的としています」
とはいえ、同校の生徒の多くは不登校など様々な困り感やつまずきを経験しており自己肯定感を持てない状況にある。そこで、生き方を探究する「キャリア」と、「ビジテック」(総合的な探究の時間)という、開校以来の特徴である二つの活動を両輪に、2023年度から「笑顔」をテーマとしたプログラムを始動。牽引役を担う井上翔一先生は「社会の一員として周囲を笑顔にできる存在になれるよう、まずは生徒たちに過去の経験で失われた笑顔を取り戻してもらいたいと考えました」と意図を語る。
「キャリア」では、企業や就労・福祉などの支援団体を訪問する「キャリアDay」により実社会の活動や仕組みを理解させるとともに、文部科学省がキャリア教育のポートフォリオとして推奨する「キャリアパスポート」を独自に再編し、生徒と保護者、教員が三位一体で達成度合いを確認・評価する仕組みを構築している。
「ビジテック」では、社会活動の根幹であるビジネスとテクノロジーの視点から、地域や企業と関わりながら、社会に参画する経験を積む。幅広いテーマで「誰かを笑顔にする方法」を検討することで、課題解決力と共に自己有用感を育んでいく。「不登校を解決する特効薬はありません。それでも、入学当初は人の目を見て話せなかった生徒が、プログラムを体験する中で、自分の言葉で発表できるようになったケースも数多くあります。そんな生徒の姿に、プロジェクトの有用性に対する自信を与えてもらっています」と井上先生は語る。
「本校の取組を、困り感のある生徒の育成に寄与するモデルケースとして広く社会に伝播すべく、今後は情報発信にも注力していきたい」と両先生が語るように、同校の取組が全国に波及し、一人でも多くの子どもが笑顔になることを願ってやまない。
京都市と京都信用金庫、龍谷大学との連携で、ビジテックの成果発表イベント「Make you smile」を開催。ブースに分かれてさまざまな発表を行った。このブースでは「子どもの居場所実践」について発表
あわせて、子どもの居場所実践に関するアンケートを当日にとって報告をした
イベントには、前京都市長も訪問。生徒たちのチームが創った竹ベンチで記念撮影
イベントの集合写真。探究活動によって生み出した市民の笑顔を、関係者が独自通貨「emmy(エミー)」で評価した結果、自分たちの活動が6,930emmyもの笑顔につながったことに、生徒たちは確かな手応えを感じていた。