Program教育探究 学びのSTEAM化プロジェクト
~桜和から始まる、好きから始める、私たちの未来~
教育文理学科という大阪府内公立高校における唯一の学びの環境を基盤とし、学校設定科目「教育探究」において「伝える」「学ぶ」「変化 (成長) する」に焦点化した探究活動を展開する。生徒間で「伝え」「学ぶ」ことで 「好き」と科目を探究する「THE EGG15」と、 集団生活を通し、 自己と社会の「変化 (成長)」を探究する「SMART ツーリズム」という二つのプロジェクトを継続・発展させる。この取り組みによる生徒と教員の興味関心の共鳴から、「学びのSTEAM化」を相互体験することで、「学校の未来」「教育の未来」を共創する学校を目指す。
「THE EGG15」では「好きが世界を変える」をテーマに、自分の好きなものを「万博」と掛け合わせ、STEAMの視点から分析を行い、多様な属性の人に対して15分の体験型ワークショップを通じて伝える活動を通して、「伝える」「学ぶ」とはについて探究する。
「SMART ツーリズム」では、「旅行で世界を幸せに」を最終目標として、社会と共に変容する旅行形態を学校一大行事の一つである修学旅行に結びつけ、その課題と解決方法の発見や新たな価値の創造を探究する。いずれの学びにも、経済産業省が提唱する「学びのSTEAM化」が通底しており、生徒は主体的に学びに取り組み、他者との協働を通して非認知能力の向上も目指す。


活動レポートReport
前例のない探求活動を一から創り上げる
2022年度に新設開校された大阪府立桜和高校は、探究活動を中心とした体験学習を通して、教育に関する知識を学ぶ「教育文理学科」のみを設置している。その探究活動の柱となっているのが、「THEEGG15」と「SMARTツーリズム」だ。
「THE EGG15」は、「自分の『好き』が世界を変える」をテーマに、“教師のタマゴ”である生徒が「好きなもの」や「大事なこと」を15分間で伝えるというもの。「教員間で新たな探究プログラムを検討していた際に、生徒たちに授業を組み立ててもらうプログラムはどうかというアイデアが出ました。ちょうど大阪府教育庁の『万博SMART教育プログラム』のモデル校に認定され、万博プロデューサーの方から、授業ではなくワークショップを開発してもらったらどうかというアドバイスがあり、一緒に授業を進めてきました」と、同校で探究活動を主導する伴田実先生は話す。「万博のテーマを知る」から始まり、自分の「好き」を深め、お互いの「好き」を共有し合い、「万博×好き」をテーマとした体験型ワークショップの内容を練っていく。その過程で、「自分の『好き』を言っていいものかという迷いから、『好き』に良いも悪いもないということに気づき、人に伝えることで、自分自身の肯定感が上がっていく様子が見てとれました」と伴田先生は振り返る。
もう一つの「SMARTツーリズム」は、修学旅行の教育的価値の見直しやオーバーツーリズムといった課題を背景に、先生の「修学旅行をもっと価値あるものにできないか」という提案から始まり、有志の生徒たちと創り上げていった取組だ。
「旅行で世界をHAPPYに」というテーマを掲げ、Sight(思考)、Motherland(自然環境)、Adventurer(旅行者)、Relationship(つながり)、Tomorrow(未来)という五つの視点から、事前にアクションプランを考え、事後には評価を行う。「昨年度、西表島に伺った際は、生徒たちは関係者をHAPPYにするためにはどうしたらいいか考えて行動しており、自主性が強く感じられる修学旅行となりました」と伴田先生は話す。
いずれの活動も現場の先生たちのアイデアから始まり、生徒たちや外部協力者たちと創り上げてきた。「『前例を気にせず挑戦してほしい』という校長の方針に後押ししてもらっています。あとは生徒も先生たちも楽しくないものはやめようと話していますね」(伴田先生)。

2023年度の「THE EGG15 」では、「音を通じて自分を表現することの楽しさを共有したい」「好きを増やして生きる活力を増やしてもらう」などのワークショップが生まれた。万博パビリオンでのワークショップ実施のコンテストを目指して、1・2年生が自分の「好き」を探究している。

2023年度の「SMARTツーリズム」の結果は、日本ツーリズム協会が主催する「全国エコツーリズム学生シンポジウム」でポスター発表を実施。24年度も引き続き発表を行う予定だという。伴田先生は「SMARTツーリズムの評価を全国に広げたいという大きな目標を掲げています」と意気込む。