Program「イノベーション人材」育成プログラム
~地方から未来を創生~
県内唯一の理数科設置校として、また、これまで22年間蓄積してきたスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の研究成果等を踏まえ、県の課題解決に貢献できるリージョナル・イノベーターの育成を全校体制で目指す。
プログラムでは、探究型学習「課題研究」をとおして「新たな時代に求められる科学的な資質・能力をもつ人材の育成」を目標としており、理数科では自然科学分野において、普通科では自然科学分野のみならず、社会科学分野、人文科学分野において、自らの興味や関心に合わせて課題研究のテーマを設定し、その解決に向けて探究する。結果よりも過程を重視し、研究の一連の流れやその過程で培う思考力が心のエンジンを駆動させる原動力になると確信する。
また、大学・研究機関等と連携して行う動物解剖体験ゼミ、AI体験ゼミなどの各種体験ゼミでは、他の県立高等学校からも参加者を募集し、理数系希望者への学習の機会を提供するほか、専門的な研究手法を学び、より高度な実験・実習を行う。そして、プログラムの中盤、終盤では、取組の成果を県内外に発信、普及するよう努め、高校生の探究活動をけん引する役割を担うことができるよう取り組む。



活動レポートReport
社会との接点を増やし可能性を広げていく
高知小津高等学校では、「新たな時代に求められる科学的な資質・能力をもつ人材の育成」を目標に掲げ、課題研究に取り組んでいる。根底には、生徒自ら主体的に学べるようになってほしいという理念があるという。「受験を目的とした学びではなく、学びそのものを楽しんでほしいのです。そのために三つの経験が必要だと感じています。目で見て耳で聞いて五感で感じる経験、社会で活躍されている方と触れ合う経験、生徒同士が協力して一つのことを達成する経験です」と竹﨑実校長は語る。
課題研究では理数科、普通科共に1年次で研究手法を広く学び、2年次でテーマを設定し行政機関や外部専門家等とつながり研究を進める。3年次は研究精度を上げ校内外で成果発表し論文にまとめる。普通科では、データ思考を育むためにデータサイエンスの手法も取り入れている。
特にフィールドワーク(FW)を重視しており、理数科は県内の研究施設に訪問し、普通科は七つの社会課題の事前学習をしたうえで、校外でインタビューやアンケート、実験等をすることになっているという。「FWは、五感で感じて社会と触れ合う貴重な機会。現在は1年生を対象にしていますが、今後は2年生での実施も検討しています」と、理数科長の野並邦充先生は話す。竹﨑校長は、「データの収集や活用の工夫にまだ弱い面もありますが、外に出て、行政機関の方にインタビューをしたり、街頭で一般の方にアンケートを取ったりという触れ合いをもとにしたデータを得る経験は、勇気がいることです」と生徒の成長を実感したという。
生徒のアンケートからも、「考えること自体が楽しくなった」「一人ではできないこともグループでやれば挑戦できる」といった感想が出ている。また探究推進部長の山﨑功子先生は「FWでの体験を通して、将来のキャリアを決めた生徒もおり、社会と触れる機会は進路にも大きく影響していると感じています」と話す。
県内で唯一理数科を持ち、長年SSH校として培ってきた知見を活かして、24年度からは他校に科学実習のゼミを開放したり、中学生向けの実験講座を開催したりするなど、県全体の理数教育の充実に向けた取組もスタート。また、来年度開催の四国の高校が集う探究活動発表会の運営も視野に入れて準備を進めるなど、生徒・教員共に県・四国全体の高校の旗振り役としての新たな領域にチャレンジしようとしている。
2024年度は普通科と理数科合同での発表会(88グループ)を初めて実施。校外にも開放し、保護者や中学生など100名を超える参加者が来場した。