カテゴリー 12024年採択

沖縄県立開邦高等学校

対象者数 480名 | 助成額 200万円

http://www.kaiho-h.open.ed.jp/

Program開 邦 雄 飛 ―自ら育ち、自走する集団の育成プログラム―

 校訓「開邦雄飛」は「邦を開き世界に羽ばたく人材を育成する」の理念のもと、生徒達が沖縄県内のみならず国内外で活躍することを願って制定。

 予測不可能な時代に求められている「新しい解」を生み出せる人材は、能力やスキルを絶えず更新し続ける人材であり、「自ら育つ」という視点が重要である。更に、「自走する集団」として挑戦し続ける姿勢を獲得し、社会に提言できるリーダー育成を目指す。

 1年次は探究基礎期として、各種プログラムを通して「知的好奇心・興味関心の拡大」、「学び方の習得(学び合う集団作り)」、「自己肯定感・自走力の育成」を図る。生徒探究委員が中心になって運営・進行し、学年全体が混ざり合うよう班編制を行い、多様な考えに触れる機会を設ける。

 2年次の探究活動は生徒の主体性を重視し、テーマ設定から全てのプロセスを生徒からの「やってみたい」を尊重して取り組ませる。

 生徒の興味・関心・「ワクワク感」を大切にして、活動自体を楽しめるプログラムを実施していく。自由な発想で当たり前を疑い、多様な価値観をおもしろがることで広い視野や心理的安全性を獲得していく。その土壌を得られたら、失敗を恐れず何度でも挑戦し続ける生徒を育成できると考える。

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学科の枠を越えた学び合いが探究活動を深めていく

 邦を開き世界に羽ばたく人材を育成する―校訓に掲げる理念を冠した探究学習プログラムがスタートしたのは2023年度のこと。キャリア教育係として運営を担う原織衣先生は、その背景を次のように語る。「本校は1986年の創立当初からリーダー育成校として県民の期待を集めてきました。近年では難関大学への合格者を輩出するなど一定の成果が出ているものの、生徒の自己肯定感は低いという課題があり、卒業後に社会で活躍するためには、勉強に限らず、自ら目標を定めて取り組める『自走力』の育成が必要だと感じていました」。

 こうした課題意識のもと、プログラムの実施にあたっては生徒の自主性を重視。各クラス4名の探究委員を中心に生徒自らが運営・進行を担い、教員はその伴走者として見守るという形で運営している。

 「もう一つの特徴が、生徒同士の学び合いを重視していること」と、2024年度から運営に加わった野村幸義先生は語る。「本校には離島を含めた県内全域から、多様なバックボーンを持った生徒が集っていますが、学術探究科(文科・理科)と芸術科(音楽・美術)の2科で、それぞれ専門性の高い授業を行っているため、学科やクラスの異なる生徒同士が交流する機会に恵まれませんでした。そこで、探究基礎プログラム実施の際に学科やクラスの枠を越えた班編成により、生徒同士が多様な価値観に触れ、互いに刺激を与え合いながら、より深く探究できる環境づくりを目指しました」。

 1年次は探究学習の基礎づくりとして、合意形成学習や身近な調査活動、キャリア講習会などを体験した上で、2学期からの「ミニ探究」でフィールドワークに挑む。そこで培った知見をもとに、2年次は生徒自らテーマを設定した探究活動に取り組んでいく。「1年かけてしっかり活動できるよう、テーマ設定だけで約2カ月かけますが、おかげでグループごとに個性あるテーマが設定されています」と原先生は目を細める。生徒から「探究とはただ情報を調べるだけでなく、多様な視点から検討し合い、掘り下げていくことだと分かった」との声が聞こえるように、学びの深さが見て取れる。

 活動2年目から財団の助成を活用して、教員の意識向上にもつなげているという。「県外の探究先進校を見学して得られた気付きを、今後のプログラムに活かしたい」と両先生が語るように、「自ら育ち、自走する」を体現する教員の存在が、生徒の成長を後押しするだろう。

探究活動のテーマは「自分たちが興味を持てること」を自由に決めているが、生徒たちは自然に「世の中の役に立つこと」を意識しているという。なかには地域名産品スターフルーツを用いた商品を企画するなど、地域経済の活性化に貢献し、マスコミにも取り上げられた事例もある。

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