カテゴリー 22024年採択

一般社団法人 Girls Unlimited Program

対象者数 300名 | 助成額 370万円

https://gup-jp.org/

ProgramGirls Unlimited Program:体験格差を解消するエンパワメントプログラム

 Girls Unlimited Program(GUP)は、主に女子中高生を対象にしたエンパワメントプログラム。

 参加者は、自己省察とライフプランニングを通じて自らの興味関心を発見し、対話による相互承認と行動実践の成功体験を得て、将来を自ら選択する習慣を養う。全ての活動で「双方向の対話」を重視しています。同年代や社会人メンターと出会い、多様なバックグラウンドを持つロールモデルとの交流を経て、参加者が全員が自分の現在位置を把握し、将来の進路を描けるよう支援していく。

 これらの活動を通して、GUPはゲートウェイプログラムとなり、体験の格差解消に貢献することを目指している。特に体験機会に乏しい地方在住の女子生徒に対しては、同じ考えの他校他県の生徒たちとの仲間づくりの場、秘めた思いや疑問に正面から向き合える安心安全な環境を提供します。その中で、各自の障壁となる社会的な制限や内面化された偏見について自分で気づき、対応する方策を身につけ、個別のキャリア構築の方法と習慣を身につけていく。GUPの経験を通し、参加ガールズが各自のみらいを意志ある希望に満ちたものにしていけるように、最新・最適な方法の開発と、社会の各ステークホルダーとのネットワークづくりを進めていく。

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活動レポートReport

キャリア教育と自己省察で 女子中高生を支援

  日本の女子中高生を対象に、自己省察とライフプランニングを中心にしたエンパワメントプログラムを展開している一般社団法人Girls Unlimited Program(以下、GUP)は、2017年に在日米国大使館の助成事業としてスタート。2023年に法人化し、現在は東京家政大学人文学部の並木有希教授、大阪大学全学教育推進機構の金森サヤ子教授、玉川大学教育学部の大谷千恵教授の3名が代表となって運営している。プログラム開始時はキャロライン・ケネディ氏が駐日米国大使を務めていたこともあり、日本のジェンダー状況や女子中高生へのキャリア教育に対する関心が高まっていたと並木教授は話す。「私はフルブライト奨学金を受けて米国に留学していた経験があり、同じような米国留学経験者(アルムナイ)が集まって、大使館の提案を受けてプログラムに参加・運営することになりました」
 一般社団法人GUPは、キャリア教育ワークショップ「Girls Unlimited Program」、講演会やセミナー、コミュニティ活動(ネットワーキング)の3つの柱を中心に活動を展開している。そのうちキャリア教育ワークショップ「GUP」は、オンラインと対面を併用して、以下の5つのセッションで構成されている。

セッション1:お互いを知るために、参加者やメンター同士の自己紹介を行う
セッション2:対話を通して「現在の自分の立ち位置」を深く考える
セッション3:メンターの経験を聞き、さまざまな考えやキャリアに触れる
セッション4:これまでの話を踏まえて自分の未来を具体的に描く
セッション5:参加者同士でGUPワークショップをきっかけに頑張ったことや成長したことを報告し合ったり、ゲストがメッセージを伝える

 このワークショップでは、スタンフォード大学の学生が取り組んでいる「ライフデザインメソッド」が応用されている。参加者が自分の興味や関心を深掘りし、それを基に将来の目標を描くプロセスを体験できるようなカリキュラムをベースに、同世代、大学生のジュニアメンター、社会人のメンターなど多層な年代との対話を繰り返すこと、また宇宙飛行士の山崎直子氏をはじめとした世界で活躍する多様なゲストからのメッセージで新たな視点や未知の世界への門戸を開くきっかけを提供していることが特徴だ。「コロナ禍で対面活動の機会が減るなどの影響を受けたのか、対話が苦手な子どもたちが増えていると感じています。その場をうまく収めることには長けているのですが、普段は本音を出すことがなかなかできない年代です。しかし、GUPワークショップは普段とは異なる環境であり、だからこそ、新しい自分を発見できるのだと考えています。本音で話してみると楽しい、こんなことを言ってもいいんだという声もありました。中でも『こんな世界があるなんて知らなかった、悔しい』という感想を聞いたときは、中高生にとっての新しい出会いの重要さに感銘を受けるとともに、その場を提供する責任も改めて感じました」と並木教授は話す。

地方での展開を拡大

 2024年度のGUPの活動は「体験格差解消」に重点を置いた。その理由を、「首都圏とはニーズや環境が異なる地方の中高生にこそ、多分野で活躍する人々との出会いの機会を増やす必要があるのではという意見が以前から大使館や運営側からあがっていました。財団の助成を得たことをきっかけに、地方展開を加速させることになりました」と並木教授は話す。全国にいるアルムナイや各地で活動する団体、男女共同参画センターなどの協力を得て、名古屋と札幌で実施。2024年12月には、東京・名古屋・札幌の参加者が集まり、合同で報告会が行われ、参加者からは高い評価を受けた。
 2025年度は、東北大学DEI推進センター、せんだい男女共同参画財団、仙台市と連携、また認定特定非営利活動法人キッズドアに協力を仰いで、仙台での活動を予定している。「各地域で活動している団体や教育機関と協働して、子どもたちも保護者もより参加しやすいネットワークづくりを全国で展開していくことも一つの目標です」(並木教授)
 単なるキャリア教育プログラムではなく、参加者が自分自身を見つめ直し、次の一歩を踏み出すための場でもあるGUPワークショップ。参加者一人ひとりが自分の可能性を信じ、未来を切り拓く力を育む場として、これからも進化を続けていく。

札幌で開催されたGUPのセッション4の様子。この日は、「今こうなったらいいなと思っている未来」「その未来とは全然違うけれども、これでもいいなと思う未来」「お金の心配が全然なくすべて自由に決めていい未来」と3つのプランを描いた。選択肢を3つ描くことで、「どんな自分も悪くない」という安心感と、「こんな未来もありえる!」という新たな発見を得られた様子が見られたという。

GUPは一般に開かれた講演会やセミナーなども随時開催している。2024年10月には、大阪にてフィンランド国立教育研究所のKristof Fenyvesi氏と同研究所研究員の矢田匠氏をゲストに迎えて『フィンランド式STEAMワークショップ』を開催した。

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