カテゴリー 32024年採択

特定非営利活動法人 教育の環

対象者数 100名 | 助成額 300万円

https://educationcircle.or.jp/

Program世界への挑戦を継承し、若者たちの挑戦の連鎖を生む
グローバルイノベーター育成プログラム「Global Innovators Nexus」
(グローバル イノベーターズ ネクサス)

 190ヶ国以上の各国代表チームが参加する世界最大の高校生STEMコンテスト「FIRST GLOBAL CHALLENGE」(https://first.global/)の日本代表選考を核に、選考に参加する日本中の高校生が技術力とグローバル視点を兼ね備えたイノベーターへ育成するプログラム。地域や学校の枠を超えたチームをつくり、選考を通して先端技術、グローバル、アントレプレナーシップを学び世界課題の解決に挑む。前年の日本代表チームが選考に携わり後輩を支援する仕組みにし、世界挑戦の伝承と持続可能な人材育成体制を構築していく。

●プログラム卒業生のネットワーキング
卒業生を対象としたアルムナイネットワークを構築し、定期的な交流会やイベントを通じて、彼らの経験や知識を現役参加者に還元する仕組みを確立。卒業生がメンターやスポンサーとしてプログラムに関わり続けることで、人的資源の持続的な供給とプログラムの品質向上を図る。

●日本代表スポンサーとサポーター制度の確立
助成金に頼らない持続可能な財政基盤を築くため、企業からはスポンサー、個人サポーターからは寄付、クラウドファンディング、イベント収益などを通じて、多角的な資金調達手法を構築。プログラム参加者やアルムナイからの寄付を奨励する仕組みも構築し、コミュニティ内での自立的な資金循環を目指す。

 

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活動レポートReport

世界最大のSTEMオリンピックにチャレンジする教育プログラム

  FIRST Global Challenge (FGC)は、世界中の高校生相当の生徒(14歳以上~18歳以下)を対象とした世界最大のSTEM(科学・技術・工学・数学)オリンピック。190以上にものぼる参加国の代表チームが、毎年設定される世界的課題に対して、約半年間にわたりSTEM を駆使した3つのチャレンジに挑戦する。本プログラムは、その日本代表チーム選考を中心に据え、参加する生徒の技術力やチームワーク、リーダーシップ、国際感覚などを養うことを主眼に置いている。

  現在プログラムを主管する 特定非営利活動法人「教育の環」の代表を務める鈴木健太郎氏が、FGC代表チーム選考に携わり始めたのは2019年頃。現在はコーチとして参加している高校生とFGC関係者の紹介で知り合い、相談に乗ったことがきっかけだったという。「それからずっと、自分の志というよりも、子どもたちの求めに応じて活動している感じですね」と鈴木代表は笑う。

  当初は応募してきたチームから日本代表を選出し、大会出場のサポートをするというアプローチをしており、21年には代表チームが世界5位に輝くという結果も出した。その成績には喜びながらも、このままではいけないという思いも同時に芽生えたという。「そのときのチームもリーダーも、当時日本トップレベルの高校生たちと考えていました。その彼らが5位ならば、この先も日本から世界一のチームは輩出できないのではないか。そう確信し、サポートの方法を変えようと決意しました」。

  まず、年々規模が大きくなるプロジェクトに対応するため、一緒に活動を進めてきたメンバーたちと、受け皿となる特定非営利活動法人「教育の環」を立ち上げた。と言っても有償で携わっているスタッフは数えるほどで、多くはボランティアメンバーだ。そして24年、選考プロセス自体を教育プログラム化することで全体の底上げを図るという方法にたどり着いた。

「ごく少数の卓越した人材を選び出し育成するだけでは不十分。教育プログラムとしての規模を拡大し、裾野を広げながら頂を高くしていかなければ、世界には追いつけないと考えました」と鈴木代表。そのためにはまず母数を増やすことが肝心と、100人の参加者を目指して募集を進めた。しかし、大会運営側の都合で募集期間が大幅に短くなり、24年は30人程度の参加にとどまってしまった。成績は総合順位81位と決して満足できるものではなかったが、元日本代表の学生コーチや社会人サポーターの参画など、教育プログラムとしての体制づくりは進み、チーム単位だけでなく個人応募も可能にしたところ能力の高い生徒の応募が増え、裾野の拡大も進んできた。

2025年10月29日~11月1日にパナマシティで行われた本大会の様子

本大会で最終調整をするロボティクスのチーム

他国チームの想像以上の成長を痛感、リベンジを誓う

  初年度の活動を経て明らかになった課題を解決すべく、25年にはさらにプログラムを進化させた。まず名称を「Global Innovators Nexus(GIN)」から、より学びの場を意識させる「Global Innovators Academy(GIA)」に変更。GINはアルムナイコミュニティの名称として存続させた。募集期間も十分にとることができ、エントリーした生徒は130人。その中から正式参加手続きを取った生徒は当初の目標の100人に達した。

  もう一つの大きな進化は、これまで参加し続けてきたロボティクスチャレンジに加え、New Technology Experience (NTE)、ソーシャルメディアチャレンジ(SMC)というFGC全てのコースへの応募も受け付け、それぞれ30数人ずつの参加を実現させたことだ。25年の本大会は10月29日~11月1日にパナマシティで開催。大会全体のテーマは「Eco Equilibrium=生態系の均衡」で、地球上の生命を支える「生物多様性の回復」に焦点が当てられた。

  3コースのうち、ロボティクスチャレンジはエンジニアの育成コース。提供されるキットツールを用い、チームで協力してロボットを設計・製作するとともに、毎年変わる競技ルールや得点システムを分析し、他国とのチーム連携も想定した戦略を立案して成果を競い合う。日本からはサポートメンバーを含む9人の中高生が選抜されて大会に参加したが、最終試合に同盟国の一つが参加できないという不運もあって103位という残念な結果に。他国の想像以上の成長を痛感した。

  NTEはテーマに沿った日本における固有の課題を見つけてソリューションを考案し、プロトタイプを制作する実践的コース。選出された日本代表チームは、干潟に集まる渡り鳥をAI技術の利用によってモニタリングするシステムを開発し好評を得たが、本大会に参加できるトップ10入りは果たせなかった。

  SMCは外交力の養成コース。STEM教育の格差・機会不足などの課題を調査・提言して各所に発信する。また、日本チームの活動資金調達や国際的な広報活動も担う。「大会本部から半年間で16ものミッションが提示され、それぞれに対応する2分間の動画をわずか1週間で作り続けるという非常に厳しいチャレンジです。

  今年はこのSMCを“活動の背骨”として運用を設計し、全16チャレンジを完遂。完全提出(18ポイント)を獲得できたのは全体で8カ国のみで、日本チームもその一つとなりました」と鈴木代表。

  最終的に日本チームは、SMCをすべて提出したチームに授与される「Social Media Challenge Award」と、チームプロフィールビデオの提出およびオンライン・トレーニング修了により獲得する「Video Storytelling Award」の2つのアワードを受賞。さらに、SNSでFIRST Global公式アカウントをメンションし続けたことや、会場内でメディア関係者へ積極的に声を掛けたことが功を奏し、FIRST Global公式アカウントにも掲載。現地でのインタビューにも対応するなど、国際大会の“広報窓口”としての実務経験を積むことができた。日本チームが発信したSNSの総フォロワー数(X、Instagram、Facebook、TikTok)は1,000人を超え、大会期間中だけでも159件の現地発信を行い、競技の舞台裏や学びをリアルタイムで共有した。

「2分動画をわずか1週間で作り続けるのは本当に厳しい。でも、だからこそ“伝える力”が鍛えられ、世界とつながる入口になりました」と鈴木代表。SNS上で他国チームとの交流を大会前から生み、現地での連携・国際交流の下地づくりにもつながったと語る。

2025年のFGCに参加した日本チーム

さまざまな国の仲間たちと交流し情報交換を行った。写真はノルウェーチームと

5年で世界一を獲るという目標にコミットしてくれる人材

  約100人の参加者がいるとはいえ、その全員が常に活動できるわけではない。メンバーには中三から高校、大学一年、高専生が存在し、学校や地域によって休みや行事の日程にも差がある。「フルで活動しているメンバーは、常時10人程度ずつになりますね」と鈴木代表。スタート時は遠慮しながら活動しているメンバーも、プログラムが進むにつれて自分ができることを率先して行い、メンバーとオンラインでつながりながら作業を進められるようになったという。日本チーム内での刺激ももちろんあるが、他国チームの作業もSNSで逐一確認できるので、世界中のライバルの動きも大きな動機付けとなっている。

  そんな生徒たちだけでなく、伴走するコーチやサポーターにとっても、毎年提示されるテーマに対する情報のキャッチアップはかなりの負担になる。各専門分野の大学講師や研究者、有名教育インフルエンサー、サイエンスライターなどの幅広い人材をどのように集め協力を仰いでいるのか。鈴木代表の答えはシンプルだ。「5年で世界一を獲るという私たちの目標に、本気でコミットしてくれる方だけにお願いしています」

  5年で世界一というのは、単なるアドバルーンではない。横だけではなく生徒たちの縦の母数が充実するまでに5年はかかると、鈴木代表は計算している。そしてその考えは、生徒たちにも十分伝わっているようだ。

 「昨年も参加した高三の生徒が、今年は同じ学校の中三の子たちを集めて参加してくれました。この子たちは少なくともあと3回は世界に挑戦できます。そして高三の子も、来年以降は大学生コーチとしてサポートしてくれればと思っています。そういう縦のつながりが何年かにわたって形成されれば、世界一も十分現実味を帯びてくるでしょう」(鈴木代表)。

  5年の根拠はもう一つある。スポーツなどの例を見ても分かるように、ナショナルチームのレベルアップには自国開催がカギとなる。実際にFGCにおいても、過去の開催国は軒並みレベルアップを実現している。鈴木代表は2030年の日本でのFGC誘致とナショナルトレーニングセンターの設置に向け、企業や自治体など各所に働きかけを進めている。

  こうしたスポンサーを募り活動への理解を求める活動は、プログラムの自走に向けても非常に重要となる。というのも、毎年大会本選への参加費用は、生徒たちにとって大きなハードルになっているからだ。財団助成はSTEMオリンピックへの参加自体ではなく、それに向けた教育プログラムを対象としており、現在も参加生徒の渡航費用などは助成に頼らず運営されている。本人の負担と生徒たちが自主的に立ち上げるクラウドファンディングが頼りだ。これまでも参加費が工面できず、開催地への渡航をあきらめた生徒たちも少なくない。特に25年は開催地がパナマだったので、渡航費が例年に比べ極めて高額になったという事情があった。

 「生徒たちのクラウドファンディングも、SNSでの継続発信を武器に、54名から138万479円の支援を集めました。それでも足りない部分に関しては、企業などからの献金を募って、9人の渡航を実現させました」と鈴木代表。代表メンバーだけでなく、サポートメンバーをどれだけ連れていき、世界のレベルを目の当たりにさせられるかが世界一につながる重要なピースだと考えている。

  参加生徒たちの頑張りもあってプログラムの認知度も年々上がり、生徒の保護者や学校の先生にもクラウドファンディングに協力してくれる方々が増えてきた。また、日本のSTEM教育を向上させることに理解を示してくれる企業も確実に多くなっている。

 「アメリカにはNASAの支援を受け、日本の大学以上の環境を整備している公立高校などがあります。他の国でも国を挙げた協力を受けているチームも見かけます。日本ではなかなか難しいでしょうが、民間企業や団体、自治体などの草の根的協力を結集すれば、決して夢ではないと信じています」(鈴木代表)。

  英知と経験の連鎖、各所からの支援とインフラの整備が進んだうえでのFGCの日本開催と世界一の獲得。さらに常勝国への成長という近未来の姿を願ってやまない。

生物多様性の回復という課題に対して、NTEでは「干潟の野鳥の自動カウントシステムの開発」をテーマに、AI自動回転望遠鏡による渡り鳥のモニタリングシステムを提案。論文ポスターと2分動画(https://www.youtube.com/watch?v=s3e3fpBqbzE)を提出した。

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