カテゴリー 22020年採択

認定NPO法人 日本ファンドレイジング協会

対象者数 2000名 | 助成額 600万円

https://jfra.jp/

Program高校生の社会貢献チャレンジに実行力をつける
大人との協働機会の創出

 高校生が主体となって創造的に社会貢献活動を実践し、その実践例や社会貢献教育(フィランソロピー教育)の実践例を発信し、共有する日本初の取り組みである。具体的には、次の三つのアプローチを統合化するプロジェクトを開始したい。

1.寄付・社会貢献教育の体験学習型ワークショップモデルを進化させ、高校生が創造的に社会貢献企画を実行することを誘発

2.日本初の社会貢献教育ポータルサイトを通じて、高校生たち自身が実施したユニークな社会貢献活動の実践例や社会貢献教育の方法のアイデア例を、高校生自身がオンラインで発信できる仕組みを新たに構築。相互の学びや気付きを深めることで、創造的な社会貢献活動・社会貢献教育モデルを全国で誘発

3.事例共有型のワークショップを教員や高校生と行うことで、高校生の取り組みをサポートしながら新規の高校との連携を進める

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活動レポートReport

自分の意志で寄付先を選ぶ教育「Learning by Giving」

 関心のある記事を持ってきて、プレゼンし、その課題の中で自分たちが取り組めるものは何かを考えてみよう。兵庫県立小野高等学校の課題研究の時間に、当時高校3年生だった佐藤晴香さんが持ってきたのが、日本ファンドレイジング協会の「寄付先を子どもたちに託すプロジェクトLearning by Giving(LbG)」の取り組みを紹介した記事だった。

  日本ファンドレイジング協会は、寄付・社会的投資が進む社会の実現を目指して2009年に設立されたNPOだ。認定ファンドレイザー資格制度や子ども向けの社会貢献教育、遺贈寄付の推進などに取り組んでいる。その子ども向けの教育の一つが、LbGだ。米国の財団Learning by Giving Foundationが提供しているプログラムをベースに日本独自で開発したもので、寄付者から託してもらった寄付金を元に、子どもたちが寄付先候補のNPOを調べ、受講者同士・寄付者・NPO・子どもたち同士とそれぞれの対話を通じて、最終的に一つの寄付先を決めていく。

 佐藤さんは、自分たちもLbGをやってみたいと日本ファンドレイジング協会に連絡し、同協会のマネージング・ディレクターの大石俊輔さんが快く引き受け、東京から小野高校に足を運び、10回の授業を実施した。大石さんは、「今までは単発または短期のゲストティーチャー的な活動が多かったので、これだけ長期間にわたるものは初めて。生徒の皆さんと何度も打ち合わせをして試行錯誤しながらつくりあげていきました。私たちのLbGのプログラムを飛躍的にブラッシュアップできた貴重な経験でした」と話す。

小野高校でのプログラムの様子。「生徒たちは困ると先生を頼る癖がついてしまっている。自律して活動してもらうためにも、必要最低限のところだけ関わり、あとは見守る立場に徹しました」と笹田先生。

真和高校(熊本県)では、1・2年生の有志40名を対象に2日間のLbGの授業を実施。寄付先に寄付金を渡す様子。寄付候補先は協会が学校側と相談しながらアレンジすることもあれば、生徒たちが自分たちで調べることもあるという。

社会の一員であるという「自覚」と、 他者の意見を尊重する「対話」が生まれる

 LbGの特徴の一つが、「生徒たちは実際にお金を寄付者から預かる身になるので、寄付候補の話を聞く、活動を調べる時の真剣度・当事者意識が違ってくる」(大石さん)という点だ。小野高校の生徒たちも、これまで同協会が実施してきたプログラム内容にプラスして、独自の「NPOの評価基準」を作る、LbGの活動を他生徒にも伝えるため寄付候補先団体の紹介ビデオを作成する、校内の生徒にアンケートを取る、校内で募金活動を行い寄付先以外の3団体に寄付する等々、どんどんアイデアを出してきたという。

 当時、佐藤さんの課題研究授業の担当だった笹田貴之先生は、「当初、生徒全員が皆同じモチベーションではなかったのですが、回を重ねれば重ねるほど生徒たちの思いが強くなっていって、終盤には10人全員が心を動かされていることがよく分かりました」と話す。自分たちの日常とは縁がなかった「寄付」というものが、どこで誰がどのように行っているのか、それが人々・社会の役にどう立っているのかを、現場の人たちとの対話を重ねることで、自分たちもその社会の一員として貢献できる立場になれるという自覚が芽生えてくるのを感じたという。

 もう一つの特徴が「対話」だ。「寄付の候補先を決める際は最終的には多数決になるんですが、それまで対話が十分なされたかどうかで、生徒たちの納得度が決定的に違ってきます」と大石さん。そのため、LbGでは「対話」を重視し、何度も生徒たち同士で話し合いを重ね、時には一度多数決をとった後に再度生徒たちで意見を交わし、もう一度多数決をとったこともあるという。

 笹田先生も「生徒たちはすぐに正解を探す習慣が身に付いてしまっているので、答えのない問いに対して、自ら自分の意見を出し、ぶつけ合えるのかが一番の懸念でした」と話す。しかし最終的には自分の意見を誰に気を遣うことなく素直に話せるようになっており、中でも佐藤さんの変化に驚いたという。「発案者なので、この企画も積極的に引っ張っていました。元々自分の意見を曲げないし、自分がこうだと思ったら突き進むタイプだったのが、LbGを通してリーダーシップを取りながらも、他者の価値観や思考に寄り添うスタンスに変わってきたのが印象的でした」(笹田先生)。

 

 今は東京の大学に通う2年生になっている佐藤さんは、引き続き同協会の活動を手伝っている。「LbGで今までなかった自分の考えを自由に発言できる機会が設けられて初めて、自分を変えることができました。今も協会のお仕事のお手伝いという機会を頂いたことで、私の心のエンジンが回り続けていると感じます」と話す。

 佐藤さんのように寄付の仕事に直接関わらずとも、寄付先のリサーチを通して社会で実際に起こっている課題やそこに携わる大人と触れ合った経験は、子どもたちの社会に対する見方に少なからず影響を与えたはずだ。大石さんは、「学校外のさまざまな社会貢献企画への参画を促すことで、心のエンジンを駆動させ、実際に社会の変化に、それぞれのやり方で行動を起こすことをサポートしていきたい」と話す。

現場会の教育現場と実践者をつなげるプラットフォームとして、同協会ではLbGをはじめとした社会貢献活動のプログラム内容や事例、実践者、教材などの情報を掲載したポータルサイト(https://jfra.jp/ltg-portal/index.html) を2019年に開設

2021年にはカテゴリ1の助成先でもある両国高校で、大石さん(奥)がLbGの授業を8カ月間にわたって実施した。現場での実施と共に、教材開発にも取り組んでいる。大石さんは、「寄付とSDGsを掛け合わせた教材を検討しています。SDGsの達成には社会投資が関係してくるはずなのに、日本ではなかなかそういった観点が出てきていませんよね。寄付活動とSDGsの課題解決を結びつけられるような教材を作っていければと考えています」と話す。

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