カテゴリー 42024年採択

北海道科学大学

対象者数 1,984名 | 助成額 165万円

https://www.hus.ac.jp/

Program北海道科学大学・課題解決力育成プログラム
-デジタル社会の総合知と異分野協働に基づく地域課題への挑戦-

 本プログラムは2024年度から始動する北海道科学大学の新教育プログラム「HUSスタンダード」の中核をなすものである。

 1年次では、講義科目においてデジタル社会に必要なデータ分析基礎力と持続可能な社会の維持に必要な人文社会・自然科学の総合知を身につけ、課題解決型授業において合意形成の手法について学ぶとともに、グループワークで本学周辺地域(札幌市手稲区)の企業等と連携し実課題に取り組み、その解決案の提案を試みる。

 2年次(2025年度)では、講義科目においてデータ分析応用力と異分野の知の最先端を学び、課題解決型授業において、北海道の地方自治体と中小企業家同友会と連携して地域課題に取り組んでその解決案を提案し、実践的な課題解決力を身につけることを目指す。

 本プログラムは必修科目(選択必修を含む)から構成され、2024年度は全学部学科の1年生全員(定員992名)、2025年度は全学部学科の1・2年生全員(定員1,984名)が対象となる。

 学生は1年次・2年次共、講義科目と課題解決型科目の両方を受講し、学年・学期進行に伴い徐々に学びの水準が上がる形になっている。特に、2年次開講の「課題発見解決法Ⅱ(地域課題)」は複数学部学科混成クラスで授業を実施する。

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学びの広さを誇る5学部12学科の実学系総合大学

 札幌市北西部の手稲区にキャンパスを構える北海道科学大学は、1967年に北海道工業大学として開学。以来、長きにわたって道内を中心に理工系人材を輩出してきた。その後、何度かの学部学科改組を経た後、2014年に北海道科学大学に改称。2018年には同一法人内の北海道薬科大学と統合し、現在は工学・保健医療学・薬学・未来デザイン学・情報科学の5学部12学科(2027年度には6学部13学科に拡大予定(設置構想中))、約5,000人の学生が学ぶ道内有数規模の実学系総合大学となっている。

 同大学が全学的なカリキュラム改定に向けて、ワーキンググループを発足させたのは2022年。新たに開発する教養教育課程を「HUSスタンダード」と名づけ、大学で育成すべき基盤能力を明らかにするため、まず道内企業41社に対して聞き取り調査を行った。

「調査を行ったのは、卒業生を毎年多数受け入れている会社で、本学としても初めての試みでした。目指すべき基盤能力に関する質問と共に、他大学の出身者と本学卒業生を比較した際の強み・弱みについてもお聞きしました」と語るのは、カリキュラム開発を主導した全学共通教育部部長の内田尚志教授。調査で明らかになった学生の強みは、コミュニケーション力、誠実さ、協調性、人間性。一方弱みとされたのは、行動力、独創性・ユニークさ、チャレンジ精神と顕著な傾向が見られた。こうした強みを伸ばし弱みを克服するには、単なる教材の改良などではなく根本的な改革が必要と考えたワーキンググループは、学部・学科の垣根を越えた混成クラスの編成と、企業や自治体との連携により社会の実課題解決に取り組む実践的授業という二つの大きな方針を打ち出した。

 そしてこのHUSスタンダードを、言語教育科目や倫理科目などからなる「基盤的知識・技能を学ぶ科目群」と「課題解決力育成プログラム」に二分。後者を助成対象プログラム(以下本プログラム)として三菱みらい育成財団に申請し採択された。本プログラムを含むHUSスタンダードは翌2023年7月に完成し、2024年度から実施された。

道内41社に対して行ったアンケート:北海道科学大学卒業生を他大学卒業生と比較したときの強み・弱み

現実の社会課題に取り組む学科混成のグループワーク

 本プログラムは大きく「数理・データサイエンス・AI 科目群」「+Professionalセミナー」「SDGs科目群」「課題発見解決法Ⅰ・Ⅱ」の四つの科目群で構成されている。「数理・データサイエンス・AI 科目群」は文部科学省「リテラシーレベル」認定のプログラムで、希望者は2年次以降「応用基礎レベル」に進むことができる。2年次の「+Professionalセミナー」では、所属する学科以外の教員の講演動画を教材に異分野の知の最先端を学ぶ。「SDGs科目群」は同大学で初めての全学科混成の授業となっている。

 そして、本プログラムの中心に据えられている科目群が、企業や自治体との連携を実践する「課題発見解決法Ⅰ・Ⅱ」だ。1年次に履修する「Ⅰ」は混成クラスではなく学科ごとの科目。ペアワークやレゴブロックを使ったプロセス思考トレーニング、合意形成のワークなどを行った後、大学近隣の鉄道会社や病院、スーパーマーケット、神社、消防署、福祉系NPOなどさまざまな組織から5分程度のビデオレターで課題を提供いただき、グループで解決策を協議して成果発表を行う。

「スーパーマーケットから駐車場に捨てられるゴミ削減の相談を受け、関連情報をネットなどで集めた結果、花壇を整備することでゴミを捨てにくくするというアイデアを提案しました。また救急車の出動回数の増加という課題には、救急隊員をテーマにしたラジオドラマの制作という斬新な提案もありました」と、全学共通教育部PBL科目担当の本多慶輝助教は語る。

 プログラム実施2年目となった2025年度には全1・2年生が対象となり、2年次履修の「課題発見解決法Ⅱ」がスタートした。この科目は混成クラスによる半年間のグループワークで、前期は7学科、後期は6学科の混成となり、80~90人のクラスが6つできる。1グループ5~6人の編成で1クラス16グループ。これを全学共通教育部教員1名と学科教員1名がペアを組んで担当する。カリキュラム前半の「大学の魅力発信」というウォームアップワークでポスター発表まで行った後は、以前よりキャリア教育で連携関係にあった北海道中小企業家同友会や道内広域の自治体の協力のもと地域課題に取り組む。1クラスにつき異なる業種の組織2つが割り当てられ、実情や課題の詳細を30分程度ヒアリングしたうえでグループワークに入る。プレゼン発表時には、課題を提出した組織の担当者も学生の提案を聞き、直接コメントやフィードバックを行う。

「課題発見解決法Ⅰ」の救急車の出動に関する発表。課題提供の消防局の方々も参加した

学科を越えた学びを経験することで、学生たちに明らかな変容が

「本プログラムの実施以前にもPBL学習は行われていたのですが、新聞記事から課題を抽出して解決策を求めるというもので、学生のモチベーションはあまり上がりませんでした」と内田教授は語る。

 新カリキュラムの「課題発見解決法Ⅱ」では、実際に進行している課題を関係者から直接聞き、自分事として捉えることで学生の熱量は目に見えて上がっている。一例として、重度障がい児向けデイサービス施設から受けた、施設外との交流促進と学校卒業後の自立支援という課題に取り組んだグループは、大学近隣の手作りドーナツ店を訪問し、子どもたちの作業体験という自分たちの提案を店舗の人に伝えた。偶然にもその店舗が以前から障がい者を雇用していたこともあり、実現の可能性について前向きな回答を得ることができたという。

「そのグループには看護学科の学生がいなかったにも関わらず、障がい児に関する専門知識を持つ看護学科の教員に自らアドバイスを求めていました。こうした自発的な連携の動きは、以前には見られませんでした」と内田教授。また、成果発表の内容に関しても、学科内授業だった1年次に比べ、学科混成の2年次のほうが調査能力、発表スキルなどにおいて明らかな向上が見られるという。

 こうした学科混成での協働に関して、苦手意識を持つ学生も少なからずいる一方で、新鮮で楽しいという感想も増えているという。リーダーを務めることに消極的だった学生の変容について本多助教は語る。「『各メンバーへの働きかけをしなくてはいけなくなった』と悩んでいた学生が、『自ら働きかけることで、グループワークが円滑に進むことを実感した』という感想を語りました。こうした気づきは、他の学生からも多く寄せられています」。

「学科混成授業で感じたこと」という学生アンケートでは、「学科による気質の違い」が最も多い回答だった。そう感じるのは、各学科での専門教育だけが理由ではないと、本宮大輔全学共通教育部PBL科目担当助教は考えている。「一概には言えませんが、学科志望の時点で、すでにある程度のタイプ分けがされていると思います。例えばメディアデザイン学科だとビジュアル思考、薬学科だと緻密で着実なアプローチといった感じです。ですから学科内で交流が閉じてしまっては、どうしても似たタイプ同士になり、画期的なアイデアもアクションも生まれにくいでしょう。学科の壁さえ越えれば多様な学生がいるのですから、学生同士が刺激し合って協働する機会を増やしていきたいですね」。学生アンケートからも、課題解決のための協働の必要性や、グループメンテナンスやマネジメントの重要性に言及する記述が増えているという。

 助成終了後の自走に向けては、企業や自治体とのさらなる連携を目指している。学内のキャリア支援センターや地域連携推進センターとも情報を共有し、連携意欲の高い、あるいは大学近隣の企業・自治体との関係を深化させていく中で、旅費負担の分担調整、オンラインの活用などによるコスト削減なども図っていく計画だ。

 学科間はもちろん、地域・社会との壁も突破し、活発なコミュニケーションを通してオープンな発想を養う。同大学が2035年に向けて掲げたグランドビジョン「とことん、ひらこう」の実践は着々と進行している。

図書館のオープングループワークスペースを利用した授業風景(「課題発見解決法Ⅰ」)

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