カテゴリー 42024年採択

武蔵野大学教育学部

対象者数 50名 | 助成額 85万円

https://www.musashino-u.ac.jp/academics/faculty/education/child_development/

Program幼児教育プロジェクト:学生・教員・子ども・地域が協働して
幼児教育・保育の視点から社会を変革する教育プログラム

 この教育プログラムは、武蔵野大学教育学部幼児教育学科の学生が課題探求型学修(PBL型授業)を通じて、保育と教育が社会に与えるポジティブな影響を学ぶことを目的としている。異学年混合のグループで社会課題に取り組み、学生、教員、子ども、地域社会が協働して幸せと新しい価値観の創出に努める。プログラムは哲学対話、自然体験、アート活動、地域親子向けワークショップの企画と実践を含む多様な活動から成り立っており、これにより学生は未来を創造する力を育成する。

 また、このプログラムでは、地域の自治体や企業と連携し、実際に地域社会と協力しながら実践的なスキルを身につけることが可能である。OECDが指摘する「社会全体のウェルビーイング」を目指し、学生が主体的な関与や創造性、対立解消の力を身につけることに繋がる。学生は社会に積極的に関与し、多様な価値観を受け入れながら、子どもたちと協力し希望に満ちた未来を創り出すことが期待されている。

 この授業を通じて、単なる知識の習得を超えた実践的な学びの場を提供し、学生にとって未来の教育者として必要なスキルと感受性を育むための機会となる。授業実践全体を通じて、今後の教育の可能性を広げることに繋がる。

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異学年混合授業で得られる特別な体験

 保育士の資格や幼稚園の教諭免許取得を目指す学生が多く在籍する武蔵野大学教育学部幼児教育学科。卒業後の進路は、児童福祉施設なども含めると、7割以上が幼児教育関連の仕事を選んでいる。公務員や一般企業への就職も2割ほどいるが、やはり人とのコミュニケーションが重視される仕事や、子ども向けの玩具などや教育関連の企業などが多いという。進路がある程度特定されているだけに、専門的な必修授業や実習などが多く、決められた単位をしっかり取得することが求められる学科だ。

 「だからこそ学生が受け身にならないよう、自ら考え実践する科目が必要という思いで2023年度からスタートしたのが本科目です」と語るのは、「幼児教育プロジェクト」という科目を担当する松田こずえ准教授。他にもさまざまな専門分野を持つ4~5人の教員が、科目やプログラムの設計・運用を担っているが、「明確に役割を決めているわけではなく、それぞれが専門知識を生かしながら、みんなで進めています」と松田准教授は語る。

 本科目の最大の特徴は、2~4年生による異学年混合授業であるという点だ。単年の選択科目ではなく、3年間継続履修することも可能だが、各学年10数人程度と枠が限られているため抽選になることもある。履修希望の理由として多いのが「他の授業では得られない体験」。田植えや里山の整備、宿坊体験など、確かに日常では味わえないプログラムが多いが、それらが単なる体験学習に留まらないのは、少人数による対話を重視し、地域社会と接続したPBL型授業として設計されているからだ。「体験して楽しかったでは終わらせず、毎回の振り返りと、それを他人にどう伝えるかというところまでを含め、企画力・実現力・発信力がつくように考えています」と松田准教授。また学生同士の学び合いにおいても、学年差よりも各人の個性や経験値を意識し、お互いに学び合い、刺激し合う環境が形づくられているのも特徴の一つだ。

 「プログラムのコンセプトは『本物に触れる』です」と語る松田准教授。プログラムの中で学生は、社会のさまざまな現実=本物に触れ、そのたびに新たな気づきを得ていく。このコンセプトを踏まえて、「自然との共生」「自分との対話・他者との対話」「自然に触れる・浸る」といった年度ごとのテーマを設定し、毎年のカリキュラムが組まれていく。「テーマや活動のフレームは、日程的に教員が主導することもありますが、実際に行われる企画の内容は、なるべく学生に任せるようにしています。教員は出過ぎず、学生と並走するイメージです」と松田准教授は言う。

近隣の公園での異学年交流

春の田植え体験

附属幼稚園との連携・宿泊研修・親子ワークショップ

 毎年のプログラムの核の一つが、キャンパス内にある同大学附属幼稚園との連携活動で、種まきから始める藍染め体験を初年度から行っている。学生はこのプログラムから生命の尊さや自然の不思議を園児たちと共有するだけでなく、数カ月にわたる活動を通してチームマネジメントの手法も学ぶ。「藍だけでなく玉ねぎの皮で黄色、ビワの葉や茎でピンクを発色させるなど、年々工夫を凝らしています」と松田准教授。他にも、自然豊かなキャンパスという環境を生かして、園児たちと「色見つけカード」を手に、さまざまな自然の色のグラデーションを探すという活動なども行っている。

 二つ目が、夏季休業中に行われる一泊二日の宿泊研修。2023年度は栃木県益子の古民家での陶芸や自然素材を使った作品作り、2024年度は埼玉県秩父の宿坊での座禅、写経、精進料理体験、2025年度は栃木県の自然の家周辺でのフィールドアドベンチャーやBBQなどの自然体験と、毎年バラエティに富んだプログラムが企画されている。「秩父の宿坊は電波が届かない環境にあり、多くの学生にとって初めてのデジタルデトックスにもなったようです。2026年度は食べることをテーマに、2年ぶりの米作りや、うどん打ち、カレー作りなどと併せて、カレー用の木製スプーン作りにも挑戦する予定です」(松田准教授)。

 三つ目は、後期に行われるキャンパス近隣地域の施設などと連携した「親子ワークショップ」。キャンパスに隣接した広大な運動施設・MUFG PARK主催で行われた地域イベントに親子向けの遊び場づくりという企画で参加(2023年度)、武蔵野市の環境啓発施設・むさしのエコreゾートでのSDGsに関するワークショップ開催(2024年度)、キャンパス内での自然体験をテーマにしたワークショップ(2025年度)と、こちらも毎年、場所も内容も変えたプログラムを実施している。「むさしのエコreゾートでの親子ワークショップでは、災害時に必要なものを子どもたちと一緒に考え、自分だけの防災バッグを作って持ち帰ってもらうという斬新なプログラムを、学生たちの発案で実現しました」と松田准教授。参加者の募集に関しても、インスタグラムでの告知、近隣図書館へのビラ配布や公園で遊ぶ親子への声掛けなど、さまざまな手段を考えて学生自らが実行した。

園児と栽培した藍を使って藍染め

宿泊研修 朝の散歩

地域の親子対象のワークショップの準備

園児との草木染め

学生たちが自ら考え実践する集団に

 こうした毎年恒例の企画だけでなく、外部の専門家を呼んでの特別授業も学生たちには、普段出会うことのない講師の話を聞く貴重な機会となっている。これまでにもマインドフルネスの専門家による体験授業や、里山保全の専門家を招いて実技と講義による授業などを行ってきた。幼児教育に特化した学科ではあるが、本プログラムにおいては、少し枠を広げた内容も意識しているという。「里山保全の授業の後は、数名の学生から講師の方が活動するフィールドを訪ねてみたいという申し出があり、自主的に静岡県まで足を運んでいました」と松田准教授。自ら考え実践する精神が学生たちに育っていることを実感したという。

 異学年混合ならではの苦労もある。3学年に共通して授業を入れられるコマが限られることだ。そのため授業計画をなるべく早めに学生に伝え、土曜日にまとめて行うなどの工夫がされている。「外部に向けたワークショップの準備の際は、グループごとに空き時間や昼休みなどにも集まって活動しています。授業や実習、ゼミに加え、アルバイトやサークル活動もある中で、時間を作り出して活動しているようです」と語る松田准教授。継続しての履修者もいるため、学生たちのアイデアを尊重する形で、今後も新たな企画へのチャレンジを続けていきたいという。「学生はもちろんですが、われわれ教員もワクワクするような授業にしたいと思っています」とも語った。

 本プログラムは学科の独自設置科目であり、助成の有無に関わらず今後も長く継続していくという。毎年新たな試みを取り入れることによって、自治体や民間企業、近隣に住む親子など関係する人も年々増える。大学をハブとした、子どもたちにとっての良い社会形成を目指すネットワークという構想も着実に進行している。

 「先生に与えられたものを行い経験を積んでいくというより、一から自分たちで考えて行動するということが多かったため、より考えを深められたとともに、仲間とたくさん話し合って形にすることの大切さを実感した」「楽しいことだけじゃなく、大変なこともあったけれど、3年間履修できて良かったと心の底から思っています。すごく素敵な授業だからこそ、この魅力がもっと広まってほしいです!」などといった学生の感想からは、資格の勉強や単位の取得では得られなかった学びに対する思いが込められている。

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