Program実社会に存在する問いの解決に挑戦する『社会行動』型教科学習の
授業計画を担う探究コーディネーター育成およびコミュニティ創出
実社会に存在する問いの解決に挑戦する『社会行動』型教科学習の授業計画を担う探究コーディネーター(教員および外部人材)を育成するプログラムを開発する。具体的には、まず授業計画のフレームワークを習得する研修(基礎講座)を行ったうえで、実際に参加者が授業計画を立案し、期間中に学校の授業内でトライアル実施を行うことで授業計画として完成させる養成講座までを行う。2年目以降も継続的に研修・サポートを行う体制を作ることで、人材コミュニティの形成を図る。
弊社の特徴として、「人生をかけて社会課題解決や社会創造に取り組む情熱・志の高い」講師とともに、彼らの専門領域を題材として教育機会に落とし込む点が挙げられる。講師との交流や伴走を通じて受講者の心のエンジンが駆動するとともに、生きた社会テーマを教材に落とし込むことで、生徒が社会行動に挑戦できる授業設計としている。
また、弊社サービスは、実社会を題材とした探究学習を行ったうえで「今回の学びは自分自身の人生においてどう位置づけられるか」というキャリア学習に落とし込むことを特徴としており、今回研修で作る授業計画のフレームワークにおいても、このキャリア学習パートを盛り込む。

活動レポートReport
探究教育を先生方だけに背負いこませない、探究学習の体系だった授業フレームワークや指導ノウハウを普及させる
株式会社ミエタでは、2016年の設立以来、主に中高生を対象とした学校での探究学習プログラムの提供と運営、コーディネーターの派遣業務を行ってきた。特に2022年からは、複数校で同じプログラムを同時進行させ、オンラインを活用して学校の枠を超えた生徒同士の切磋琢磨の場を提供。これは、単に効率化を図るだけでなく、探究の知見を汎用化し、学校のコストと運用負担を軽減する大きなメリットを生み出すことになった。
「ただ、そのように開発したプログラムを実践していただくに当たって、現場によっては必ずしもぴったりと当てはまるケースだけではないということが、以前から課題にはなっていました」と語るのは、2023年よりミエタに参画し、探究学習プログラムを通じて学校教育の刷新に取り組んでいる金 公希氏。各校ごとにアレンジは十分に利かせられるプログラムだが、それでもうまくはまらない場合があるのはなぜか。プログラム実施の前後などに現場の先生からの意見も伺いながら検証していった結果、一つの仮説が浮かび上がった。
「生徒側だけでなく、指導者側の課題、つまり先生方それぞれが『探究学習とは何か』をどう捉えているかという目線の違いが、生徒の迷いを生んでいるのではないか。この課題を解決するためには、対象を中高生から運営側にシフトしたプログラムが必要だと感じました」と金氏。
2024年8月、ミエタは全国の中学・高等学校の教職員および教育に関心のある一般の方を対象に、授業計画を担う探究コーディネーターの育成およびコミュニティ創出を目的とした研修を、対面で1日、オンラインで2日、「基礎講座」と名付けて開催した。内容は3日とも同一で、参加者はそのうち午前1回、午後1回の講座を受講することにより基礎講座を修了し、希望者は「応用講座」へと進むことができる。また受講後はオンラインも含め、参加者同士の交流や、情報共有などができる場も設定した。しかし、金氏は初回の講座が始まった途端にわずかな違和感を覚え、すぐに軌道修正をしたという。
「一口に先生と言っても、中学の先生と高校の先生、また大学の先生とでは、求められることに違いが出てきます。さらにNPOやNGOの方々、地域でクラブチームの指導を行っている方や、スポーツ指導者の方、教職資格を持っている会社員の方など本当に多種多様の方が受講していて、どこにフォーカスを当てるかが難しかったのです」と金氏。講義の内容によって、ある人にとっては非常に関心があることでも、別の人にとってはあまり馴染みがないと感じる場合もある。そこに気づいた金氏が行ったのが、参加者同士の「目線合わせ」だという。
「例えば、『これは高校1年の入学間もない生徒の事例で、こういう条件下の設定です』とサンプルの特徴やデータをできるだけ明確にして、参加者の目線を一度合わせてから講義やディスカッションを進めます。そうしないと議論がかみ合わず、本筋からずれていってしまう場合があるからです。特に参加者の立場や職責が多岐にわたる場合は必要な作業です」と金氏。その後、グループディスカッションなどで参加者同士が発表する場などにおいても、設定をしっかりと明示し、なるべくパートごとに話題を区切って進めていくように工夫したという。
全国から教職員やNPO、一般の方など多種多様な参加者が集まるオンラインでの「基礎講座」の様子です 。探究学習の意義を捉え直し、指導者側の目線を合わせることからスタートします 。入口のハードルを下げることで、まずは指導者目線で考える機会を体験してもらい、探究コーディネーターとしての第一歩を踏み出すきっかけを提供しています 。
「基礎講座」「応用講座」「養成講座」の3段階で育成
8月に3回開催された講座は好評を博し、10月と年度末に行われた追加開講を含めて100人を超える方々が受講した。基礎講座に続く応用講座にも18人が参加し、具体的な授業計画の詳細立案に挑戦した。より体験型となる応用講座の内容は講義だけにとどまらず、プロの講師が実際に携わっている学校などに同行させてもらい、実際の現場でどのように授業が行われているかを学ぶフィールドワークなども含まれる。そうした生きた講義なども経験した上で、オリジナルの授業案の計画に挑戦していく。その後に進む「養成講座」では、実際にトライアル授業の計画策定や、ファシリテーターやコーディネーターとしてのアプローチ法など、より運営に近い知識を習得する。このように基礎講座・応用講座・養成講座という3つの段階を経て探究コーディネーターを育成する構成が、本プログラムの特徴となっている。
「2年目となった2025年度は基礎講座の内容を一新しました。全員が共通の講義を受けるのではなく、親しみやすいテーマのセミナーや講習を各種行い、各自興味を持った内容の講座を選んで受講します」と金氏は語る。例えば長く探究学習に携わる現場の先生を招き、対談スタイルのお話や意見交換を行う講座もあれば、プロの講師をお呼びして、探究学習最前線の情報を共有したりもする。その後の応用講座以降は、従来通り共通の内容だが、入口の基礎講座は間口を広く敷居を低く設定し、いずれかの講座を受講して応用講座に進むという形式に改めた。入口のハードルを下げることで、まずは指導者目線で考える機会を体験してもらい、次の段階へ進む参加者を増やしたいという狙いだ。
参加者の募集は、ミエタのホームページや教育関係の方々が登録しているコミュニティへの投稿が主になっている。「これまでの活動で関係した学校への声掛けももちろんしていますが、必ずしもそこが中心というわけではありません。どちらかというと、周辺の方々の口コミで広がる部分が大きいですね」と金氏が語る通り、応募者の内訳は教職員が6割程度で、残りは学校関係者以外だという。
ミエタで主に連携業務などを担当する八鍬ひかり氏は、SNS広告を入口した参加も一定数いると語る。「例えば“探究学習”というワード検索で広告にたどり着き、応募してくる方もいます。他校の先生、あるいは先生以外の方とのつながりを求めている方や実際の具体例を聞きたいという層などへの訴求が多いようです。探究学習において、情報を共有する仲間が少ないと悩む方々に対して、学校関連やミエタが持つコミュニティからの発信以外にもSNS広告が果たす機能は大きく、今後も運用に力を入れていきたいと思っています」と八鍬氏。
また、本プログラムに起用する講師群は、ミエタが提供している生徒向け授業プログラム運用に携わっている豊富な人材が担っている。つまり、自らが行っているコーディネーターやファシリテーターとしての生きた経験や知識が、体系立ったノウハウとして提供される点も大きな特徴と言えよう。
「応用講座」は、プロの講師が携わる現場への同行やフィールドワークも含む体験型のプログラムです 。対面でのワークを通じ、実際の現場でどのように授業が行われているかを肌で感じながら、自校や地域に合わせた具体的な授業計画の詳細立案に挑戦します 。仲間との議論を通じ、自らの経験や知識を体系的なノウハウへと昇華させていきます 。
最終段階の「養成講座」では、オンラインツールを活用し、トライアル授業の計画策定やファシリテーターとしてのアプローチ法など、より運営に近い実践的な知識を習得します 。専門人材によるサポートを学校教育の当たり前にすることを目指し、質の高い人材コミュニティを創出することで、受講後も切磋琢磨し合えるネットワークを構築しています 。
育成プログラムのパッケージ化と人材コミュニティの創出の二本立て
本プログラムにおいては、対面開催時のランチ交流会や、プログラム終了後の懇親会も非常に重要な役割を担っている。プログラム名にも謳う通り、コーディネーターの育成だけではなく、コミュニティの創出も目的の一つだからだ。実際、こうした交流の機会を通じて、情報の共有はもちろんのこと、お互いの学校を訪問し合ったりすることもあるという。
「受講者同士がインスタライブでつながってディスカッションしたり、それをきっかけに実際のアクションにつながったという報告も届いています」と金氏。受講者が学校に戻って、講座の内容を他の先生にレクチャーするということも珍しくないようで、受講者だけで閉じない情報共有が、現場では行われているようだ。
参加者同士の交流という点で、悩ましいのが開催地の問題だ。実際、オンラインでの参加は全国からあり、情報を求める熱量は地方ほど高いという。講座の受講に関しては、オンラインでもそれほど大きな問題はないが、受講者同士の交流となると、偶発的な出会いや感動の共有といった面で、やはり対面開催に分がある。地方開催の要望も届いてはいるものの、都内以外の開催だと、会場までの時間や交通費など参加者にかかる負担も大きく、参加可能な人数にも限りがあるため、現状ではオンラインツールの機能を最大限に活用して、対面/オンライン併用の講習と交流を充実させていくしかないという。「関西圏での開催は可能と考え、現在計画しています」(金氏)。
本プログラムを受講しても、特別な資格が得られるわけではなく、もちろんコーディネーターやファシリテーターへの道がすぐに開けるわけでもない。それでも講座に参加する人が多いのは、そうした人材が集まるコミュニティに参加して得られるものを期待するところも大きい。それはプログラムを実行するミエタにとっても同様で、こうしたプログラムを将来にわたって継続していくことで、質の高い探究学習の計画・運用を可能にする育成プログラムのパッケージ化と同時に、それを実践する人材のプールを進め、将来的には数百人から数千人単位での人材コミュニティ創出を狙っている。
「探究教育を先生方だけに背負いこませることなく、専門人材によるサポートが学校教育において当たり前になるようにすることが、私たちの願いであり目標です」(金氏)。
