カテゴリー 32020年採択

国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学

対象者数 100名 | 助成額 2000万円

http://www.nagoya-u.ac.jp

Program名大みらい育成プロジェクト:国際環境で地球規模の問題に挑戦する

 本プログラムでは名古屋大学の外国人教員と留学生が中心となり、英語を基本言語とした講義、グループ演習、プロジェクト型学習を実施する。

 近年、新型ウイルスの感染爆発や地球温暖化による異常気象など、世界規模の難問が多発し、解決を希求する気運が若年世代にも高まっている。

 状況分析力、計画立案力、解決提案力、多様性理解力を養成し、総合的な問題解決能力と国際的なコミュニケーション能力を磨き、世界規模の問題の解決に向けて国際的に活躍できるリーダー人材の育成を目指す。

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主体性を有する人材を育成

  2022年3月19日、名大みらい育成プロジェクト(NU-Mirai)に参加した愛知・三重・岐阜の高校生16人が名古屋大学内のホールにて、五つのグループに分かれ英語で10分間、自分たちの研究のプレゼンテーションを行った。発表を終えた生徒たちは「約8カ月間の成果をここで出し切ることができた」「苦手だった英語でプレゼンができて自信が付いた」「社会課題に対して新たな視点を得ることができた」と興奮冷めやらぬ様子で感想を話した。同プロジェクトを主宰する名古屋大学大学院 理学研究科の杉山 伸講師は「1週間前に合宿を行ったのですが、その時に比べ、格段にいい発表になっていて驚きました。内容がブラッシュアップされていることと合わせて、研究内容をしっかり咀嚼して自分のものとして発表していましたね。そのことが一番大事だと思います」と話す。

   NU-Miraiは、2016年に名古屋大学が採択を受けた科学技術振興機構の助成によるグローバルサイエンスキャンパス(GSC)事業をベースとして2020年度にスタートした。GSCは、卓越した意欲・能力を持つ高校生などを募集・選抜し、高度で体系的な理数教育プログラムを開発・実施する機関への支援を目的としているもので、2016年から3年間実施し、2021年にも名古屋大学は再度採択を受けている。第1~3ステージまで設けてステージごとに生徒を選抜していくシステムは同じだが、GSCは理系生徒を対象、NU-Mirai は地球規模の問題解決をテーマにして文系・理系関係なく受け入れている点と、名古屋大学のグローバル30国際プログラム※に在籍する幅広い分野の外国人教員と留学生のリソースを最大限に生かしている点が異なる。

※国籍に関係なく、外国の教育制度に基づいた教育を受けてきた学生を対象に開講されたプログラム。英語で行われる講義のみを受講して、卒業単位を取得できるため、日本語能力に関係なく留学生でも入学できるようになった

2022年3月19日に行われたプレゼンテーションは全編英語で行われた

「潜在的な主体性」に注目

 2021年度のNU-Mirai では、「潜在的な主体性」への取り組みに重点を置いた。「いわば主体性に必要な基盤で、このような特性がそろっていれば、仮に今主体性が発揮できなくても、将来は発揮できる可能性があるという考え方です」と杉山さんは話す。NU-Mirai は、当初国際コミュニケーション力・国際問題解決能力の獲得を目的としていたが、初年度に1年実施してみて、そうした力の根っこにある主体性が最も重要だと気付かされたという。大学で研究室に入ると、言われたことはやるけれども自分から動くことがない。いい会社に就職できるかどうかで動く学生が多い。そうした以前から感じていた課題ともリンクした。「これまでAO入試などで主体性を評価する際は、自由研究のレポートや何かしらの大会に出たというアウトプットだけで判断する傾向が強く、その本人の能力自体を評価することがほとんど行われていませんでした。そこで、われわれは気付く力・論理性・目的意識・柔軟性・責任感などを潜在的な主体性の採点基準に加えました。まだ完全なものではないですが、評価・分析・改善点の反映を行い、“異端・先端”がより自然に出現する教育環境を構築する方法を探りたいと思っています」と杉山さんは話す。

  第1・第2ステージの評価の際に関連する項目を取り入れ、また21年度に実施したエンパワーメントプログラムの中では特にこの「潜在的な主体性」の評価を重視した。こうした結果を分析し、評価方法の精度を高めている。

  将来的には、「潜在的な主体性」を1回の講義を受けて書いた小論文と1日の問題解決ワークショップで判断できるようにしていきたいと杉山さんは話す。「それが確立できれば、大学にとっても、入学してからも主体性を持って伸びる生徒の獲得につながります。一方、生徒自身にとっても『潜在的な主体性』を身に付けるべく努力してきたことは、結果的に入試の結果に生かされなかったとしてもその後の人生で役に立つはずです。双方にとってメリットがある教育環境の実現を目指していきたいと考えています」。

3月19日の発表会後には、杉山さんから参加者へ修了書が送られた。8カ月間にわたってさまざまな課題・研究をしてきた16人の絆は深く、「ここで友人がつくれたことが何よりも大きい」と話す生徒も多い。

3月の発表会の1週間前には、県内のホテルで2泊3日の合宿が行われた。コロナ禍でなかなか会う機会がなかった中、深夜まで議論を続けるなど、濃い内容の3日間となったという。その様子は、参加した留学生が映像にまとめている。https://miraiikusei.bio.nagoya-u.ac.jp/news?id=cG9zdDoyNzQ=

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