カテゴリー 12021年採択

北海道鵡川高等学校

対象者数 150名 | 助成額 200万円

http://www.mukawa.hokkaido-c.ed.jp/

Programむかわ学プロジェクト

 本校では、これからの社会で求められる力を育むことを目的に平成29年度から学校設定科目「むかわ学」を設定している。学校だけでなく、地域全体を学びのキャンパスとして捉え、地域の教育資源を活用して探究的な学びを行う地域課題解決探究学習であり、3年間を見通した系統的なプログラムである。

 むかわ町は、日本屈指の恐竜化石であるカムイサウルス・ジャポニクス(むかわ竜)をはじめとして、雄大な自然環境、メロンやシシャモなどの豊富な特産品、歴史、文化、観光などのさまざまな分野の地域資源に恵まれている。それらを教育資源として活用し、課題を設定していく。教員によるゼミ活動や、学年ごとに段階を上げた探究活動、さらには町の専門家の方々を招いたグループワーク等を通し、社会に出た際に、多様な人材と協働するコミュニケーション能力を養い、グループを率いるリーダーシップを涵養する。多くの自治体が課題としている地域創生に取り組む人材の育成を目標としていく。町への提言や新たなビジネスプランの発表だけにとどまらず、実際に町の企業ともタイアップし新たな事業や商品開発などにつなげ、地域活性化、地域創生の源となるような取り組みへ発展させ、それを担うことができる人材の育成を図っていく。

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人材育成の期待受け 地域を学び提言まで

  「恐竜(カムイサウルス・ジャポニクス=通称・むかわ竜)とシシャモ(日本固有種)の町」がキャッチフレーズの、むかわ町。2010年にノーベル化学賞を受賞した鈴木章・北海道大学名誉教授の出身地としても有名になった。湿原、野鳥、和牛など豊かな自然や動植物、特産品に恵まれている。野球の強豪校でもある鵡川高校は、連携型中高一貫教育(03年度から)に加え、17年度から学校設定科目「むかわ学Ⅰ~Ⅲ」(各1単位)を実施している。

 地域全体を学びのキャンパスと捉え、講義やフィールドワークなどを通して大人たちから地域を学び、高校生の視点で課題を設定。各種調査やインタビューなどを通して課題を検証し、地域への提言まで行う一連のプログラムとなっている。「実現までが探究」(企画総務部長の山岸拓教諭)との考えから、オリジナルのパン「恐竜コロネ」や韓国風のり巻き「むかわキンパ」など人気商品も開発された。恐竜研究の第一人者、小林快次・北大教授のサポートによる化石の発掘やクリーニング作業も目玉だ。

 18年9月の北海道胆振東部地震では大きな被害を受けて人口流出が進んでおり、町の魅力創出や発信、関係人口・交流人口の増加も喫緊の課題となっている。そんな地域の将来を担う人材を育成するため、同校への期待は高まるばかりだ。20年度には町や企業、大学等と連携した「鵡川高校魅力化コンソーシアム」も設立された。「むかわ学」の取組は、小中学校にも拡大。第2次むかわ町まちづくり計画や第3次むかわ町社会教育中期計画(いずれも21年度から)にも、その充実が明記された。

 15年1月の暴風雪による高波で被害を受けたJR日高本線のうち苫小牧―鵡川間(約30分)が残されたのは(鵡川―様似間は21年4月に正式廃止)、町が通学定期代を全額補助していることも大きい。駅前に無償の公営塾も開設され(町内の高校生すべてが対象)、内閣府の「地域みらい留学365」(2年生の国内留学、全国15校)にも参加。高校側でも「チャレンジスタディ」やデュアルシステムの実施、育成を目指す資質・能力の精選(19項目から8項目に)とルーブリックや行事対応表の作成などで期待に応えようとしている。
 大人と関わることを通して生徒が落ち着くとともに自己肯定感も高まっていると、むかわ学が始まった年に着任した山岸教諭は実感している。地域活性化を学ぶため、札幌の大学に進学する生徒も出始めた。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

10月16日のオープンキャンパスで販売した限定50食の「むかわキンパ」は30分で完売。テレビ局の取材もあった

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