カテゴリー 12021年採択

宮城県南郷高等学校

対象者数 74名 | 助成額 100万円

https://nango-h.myswan.ed.jp/

Program地域支援活動『とどけよう 花と笑顔と 南郷魂』
ボランティア活動を通して地域に貢献し、学び楽しみ続ける生徒を育成するプログラム  

 学校が立地する大崎耕土は、冷害や洪水に対応するため古くから「水管理システム」と呼ばれるさまざまな水の利用の工夫があり、そこで生息する生物多様性や地域文化・農文化が認められ世界農業遺産に認定された。本校ではこの世界農業遺産を理解する目的で現地視察をはじめ、過疎と少子高齢化問題が深刻で維持管理作業に大変苦労している現地の実態を知った。

 そこで若い高校生が地域理解と情報発信、そして世界農業遺産継続のためのさまざまな活動支援をしようとプロジェクトを開始。学校全体として講演会を企画し、 全生徒が大崎耕土について学び、興味関心を高め、総合的な探求や課題研究を活用し、学年の学ぶ目標を設定した。1学年は大崎耕土全体の水管理システムを学習、2学年は環境問題や屋敷林に関わる生物多様性の学習、3学年は伝統文化・食文化と観光資源を学習するという3部構成を計画。

 さらに生徒会・農業クラブ活動として有志を募り、維持管理作業支援や希少作物の栽培研究を活動に取り入れ、活動の輪を広げていく。これらの活動を通じて持続可能な支援活動と地域理解、さらには地域への世界農業遺産に対する理解を高め、地域と共に持続可能な世界農業遺産を目指していきたいと考える。

鬼首菜採取のための刈り取り

イノシシ等害獣防護柵設置支援

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活動レポートReport

世界農業遺産「大崎耕土」で 自然と農業の共生を考える

  「礼譲和協」の校訓のもと、地域の人々とのつながりを最高の教材と捉え、企業や大学とも連携を深めながら生徒一人ひとりの世界観を広げることを大事にする同校。普通科と農業・工業・商業を学ぶ産業技術科を置き、地域社会に貢献できる人材育成を目指している。
 同校が位置する美里町は世界農業遺産「大崎耕土」の最東部にあたる。ここでは冷害や洪水に対応するための伝統的な「水管理システム」による農業が行われてきた。しかし、少子高齢化でその維持管理は厳しさを増すばかりだ。

 そんな現実を知った同校では、令和2年度から、この大崎耕土をまるごと教材化し世界農業遺産の継続を支援する活動を計画した。それが「大崎耕土『世界農業遺産』支援プロジェクト」だ。農業や生物多様性、自然環境保全、伝統と生活文化を総合的に学びながら、情報発信し、生徒のコミュニケーション能力や自己有用感の育成にもつなげるのが狙いだ。
 1年生は、堰(せき)や水路、ため池などの巧みな水の利用方法を現地視察・調査しながら学ぶ。2年生は、生物多様性と環境を知るために田んぼの生き物調査などを行った。3年生は、伝統文化や食文化と観光資源をテーマに学ぶ。9月には「鳴子漆器」づくりを体験した。
 プロジェクトをけん引するのが、生徒会と農業クラブの生徒による支援活動だ。江合川の上流域にあたる鳴子方面を中心に、害獣防護柵の設置作業や伝統野菜「鬼首菜(おにこうべな)」の収穫作業、稲刈り、介護施設の除雪支援活動など、地域の人たちと交流しながら年間を通して活動を続けてきた。

 今夏、世界農業遺産の国内第1号である佐渡島への視察も行った。トキの野生復帰の取組や田んぼアートなど、自然環境と共生した農業のあり方に触れ、生徒たちは「10年後の大崎耕土の姿」を考えるようになった。「今のままが続くこと。地域の取組や携わる人をなくしてはいけない」「自分たちも手伝いながら大崎耕土の田園風景を残したい」「卒業しても関わりたい」と語っているという。
 学校の農園で鬼首菜の栽培研究が始まり、学習成果の発表も積極的になってきた。「生徒たちは自分たちの目で見て課題の本質を理解している」と、匹田哲弥校長は生徒たちの成長に目を見張る。今後も支援活動をてこに全員参加型の地域理解と支援を広げていきたいとしている。

長尾康子(教育ジャーナリスト)

鳴子地区の稲刈りで、自然乾燥の杭掛けを支援する。

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