カテゴリー 12021年採択

栃木県立宇都宮女子高等学校

対象者数 560名 | 助成額 200万円

http://www.tochigi-edu.ed.jp/utsunomiyajoshi/nc2/

Programキャリア形成に資する探究活動

 「総合的な探究の時間」において、1年次は「探究基礎」として、実社会や実生活と自己との関わりから課題を立て、課題に対する仮説の立て方、リサーチクエスチョンの設定、情報収集の方法、データの分析、考察、まとめの方法など、探究の過程や手法をグループごとの課題研究で学ぶ。2年次は「探究実践」として、自ら設定したテーマについてリサーチクエスチョンを立て、研究を進め、報告書にまとめ、口頭発表での議論の中から研究内容の精度を上げていく。研究の集大成として校内外に向けた成果発表会を行い、下級生はこの発表内容を見ることで、その姿勢を継承し、探究の精度を高めようとモチベーションを向上させていく。 

 さらに、これらの経験を基盤として、課外活動として取り組む「自由研究」へと発展させ、自身の探究の深化を図っていく。 

 これらの探究活動でのグループワークや議論を通じて、新たな価値を創造し、より良い社会を実現しようとする態度を養い、キャリア形成に必要な「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」を高めていく。

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現存最古の公立女子校、 戦後「自由研究」と連動

 1875(明治8)年創設の栃木女学校を前身とする「現存する公立女子校として最も古い」(学校案内)県立宇都宮女子高校。2008~17年度のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)を経て、現在は総合的な探究の時間で2年間の探究活動を行っているが、根底には新制高校発足当時から続く教科外活動の「自由研究」がある。
 自由研究は、誰かの研究をなぞるのではなく、これまでの自分の学びを基盤として、新たな問いを設定し、答えを導き出していくための過程を経験するという、学問の一端を体験することが求められる。もちろん取り組むかどうかは自由だが、20年度当初は全校生徒の4割に当たる347人が応募。187人(126の個人とグループ)が作品提出に至った。17年度に100を割った応募数が回復したのも、SSH後の総合探究が影響しているという。

 1年次の全生徒と2年次のSSクラスを対象としたSSHは、地元の宇都宮大学や文系学部志向が強かった生徒の視野を広げ、やりたい研究を目指して医学部も含めた全国の難関大学を志望するようになった。総合探究では、そうしたノウハウを文系にも広げ、全教科横断型の探究活動を目指す。「キャリア形成に資する探究活動」をねらいとし、①「漠然とした興味・関心・疑問」を「自分なりの結論が導ける問い」にするプロセスを学ぶ②結論を導くために何をどうすればよいのか、自分で考え、立案し、実行できる③得た情報を多角的・批判的に検討し、集めた証拠から論理的に結論を導ける④自分が探究活動を通して得たこと、学んだことを他に分かりやすく伝える――という過程を通じて、四つの能力(人間関係形成・社会形成能力、自己理解・自己管理能力、課題対応能力、キャリアプランニング能力)を高める。

 1年次は「探究基礎」として「成人年齢」「環境汚染」「里山・郷土」(20年度例)など与えられたテーマについて4人グループで「探究の型」を学び、2年次は「探究実践」として個人やグループで設定したテーマで研究。いずれもスライドや動画、ポスターにまとめて発表する。
 自由研究は佳作以上が増加単位として認定され、優良賞以上は研究集録に掲載されるが、最優秀賞はめったに出ない。19年度に「ジェンダーとファッション」で13年ぶりに受賞した舘野知紘さん(当時3年生)は在学中に起業し、英国の大学に進んで芸術を専攻している。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

和傘について発表するグループ。歴史から構造まで考察し、文理融合の研究成果の好例だ。

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