カテゴリー 12021年採択

福井県立大野高等学校

対象者数 369名 | 助成額 200万円

http://www.daiko.ed.jp/

Program持続可能なコミュニティ「D-Kompas」の構築
~オール大野による学校サポート体制を確立し、生徒の主体的学びを支援~

 「D−Kompas」とは、「大高(大野高校)という名のコンパス(羅針盤)」という意味で、「Kompas」はオランダ語。大野高校のルーツでもある幕末の大野藩の藩校「明倫館」では他藩に先駆けてオランダ語を学ばせ、最新鋭の洋式帆船「大野丸」で交易を行うなど、その「進取の気象(気性)」の精神を受け継ぐよう校歌にもメッセージが込められている。 

 本プログラムの目的は「主体的に行動できる人材の育成」と「学校サポート体制の確立」。

生徒の主体性を育成するために、次の二つのプログラムを実施する。 

 一つ目の探究学習では、3年間の系統的な「探究学習プログラムD−Kompas」の完成を目指す。二つ目は生徒自主活動時間「D−Time」として、生徒が自分で考え、学習をはじめとする活動に取り組む時間を創設する。「緩く縛る」をコンセプトに「学びの自走化」を目指す。 

 そしてこれらを運営する上でのサポート体制「D−Kompasコミュニティ」を確立する。地元の自治体・民間企業、大学等の研究機関、OBなどを大高の応援団として結び付きを強化する。 

 学校は、生徒が自ら進むべき道を見つけ、自らの力で進んでいけるよう、羅針盤の役割を果たす。本プログラムの実施により、生徒一人ひとりを大切にし、それぞれの個性を伸ばすことができる学校づくりを目指す。

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活動レポートReport

探究活動の運営を支援する 外部との連携を組織化

 「大高(だいこう)」の愛称で知られる大野高校は、2020年度から探究学習プログラム「D-Kompas」を展開している。生徒が自らの力で進んでいけるよう、学校は羅針盤(オランダ語で「Kompas」)の役割を果たしたいと考える。生徒の主体的な学びを支援するため、23年度には学校のサポート体制を確立したいと助成事業に応募した。
 サポート体制の内容は主に四つ。▽自治体、民間企業、大学、OB組織等外部との連携▽生徒の自主活動「D-Time」における希望制講座の充実や教材整備▽地域への情報発信▽同窓会等からの支援・協力依頼――の四つだ。校内には専門のコーディネーターを置いて外部との連絡を取りやすくした。

 1年次の総合的な探究の時間は、地元大野市の課題や取組をクラスごとのテーマとし、グループ探究をして市長に政策提言をおこなう。2年次はSDGsの17の目標に関連付けた個人探究を行い、3年次の1学期に論文にまとめる。どの学年においても、外部講師やアドバイザーの派遣を増やし、生徒たちは助言を受ける機会を数多く持つことができた。
 生徒の自主活動「D-Time」の希望制講座は、21年度は年間20時間を試行し、22年度は週3コマで実施している。教養的内容を中心とする「アカデミック講座」、職業や学問の発見につながる「キャリア教育講座」、教科の発展的内容を扱う「チャレンジ講座」を準備し、21年度は日本科学未来館などからの外部講師による専門的な講義やワークショップで、生徒の知的好奇心に火をつけることができた。
 また、「D-Time」では生徒が理解度や進度に合わせて各自で学習を進められるよう学習支援サービスに全員が加入。自主的な学習に取り組める環境を整えている。

 大野市には、仕事を互いに助けあい、さまざまな地域との絆を大切にする「結(ゆい)」を大事にする文化があり、「結の故郷(くに)」と表現される。人との結びつきの強い土地柄を反映し、同校の取組に対する、行政や地元新聞社などの協力や理解には手厚いものがある。21年度は同校出身で東京在住者有志の会「912」の協力も得るなど、ネットワークのさらなる拡大を実現できた。
 福井県では私立高校の実質的授業料無償化が導入され、県立高校の魅力化が喫緊の課題となっている。22年度以降も、外部の応援団との連携を強化し、「D-Kompas」プログラムの充実を通して、持続可能な学校体制の構築を目指す考えだ。

長尾康子(教育ジャーナリスト)

空家活用をテーマにした1年生のフィールドワーク。

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