カテゴリー 12021年採択

京都市立堀川高等学校

対象者数 480名 | 助成額 150万円

https://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/index.php?id=300605

Program「よって、」と書けばいいわけじゃない。
~論理的言語能力と将来の学びに向かう心に火をつける~

 1・2年生全員が履修する総合的な探究の時間に、さまざまな分野を学ぶ大学生、大学院生、論文執筆経験者をティーチングアシスタント(TA)として招く。生徒一人ひとりに対して専門性の高いアドバイスや論理展開についての確認を行ってもらうとともに、執筆後の論文添削指導も行ってもらうことで、生徒自身が興味を持つことや明らかにしたいこと、自分が明らかにできたことを他者に伝え切ることの喜びを知り、その喜びを得るために必要な言語技術の習得への意欲を高める。 

 本校での総合的な探究の時間の評価は、課題意識・知識・論理性・多角性・計画性・表現力・汎用性などの観点で行っているが、教員による評価と生徒の自己評価の間でギャップが見られるのが論理性である。自身の発見の意義を他者に正確に伝えるためには、論理展開が重要であり、伝え切る喜びを感じるためには、生徒自身が自らの文章をより論理的なものに修正することができるようになることが必要である。

 また、論理的であるということの定義を教員・TA・生徒の間で共有することも重要であると考える。複数のTAが一人の生徒が執筆した論文を見ることにより、論理展開の誤りや不十分な点を幾つかのパターンに分類し、論理性の不足を生徒に理解させることを重視した、生徒の能力の見取り方・評価法・指導法の研究を行いたい。

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ティーチングアシスタントの 活用で生徒の論理的表現を向上

  全国に先駆けて1999年に探究科を設置し、難関大学への進学実績を飛躍的に伸ばしたことで知られる堀川高等学校。同校での探究活動は「探究基礎」と呼ばれ、HOP・STEP・JUMPの三つに分けられている。1年生前期のHOPでは、生徒はHR単位・教員2名体制で、課題設定・論証の筋道・引用のルールなど、論文展開の基礎を学ぶ。STEPにあたる1年後期からは8~9のゼミに分かれて調査方法などを学び、JUMPの2年生前期では個々に課題設定をし、論文を発表・完成させていく。

 探究活動の運営は、教員による「研究部」と生徒約40名で構成された「探究基礎委員会」が協同して実施。ゼミ発表会の準備・運営・冊子の発行、学校説明会での「探究基礎」の紹介など、生徒自身が運営に関わっているのが特徴となっている。

 もう一つ特徴的なのが、ゼミにティーチングアシスタント(TA)を導入している点だ。地元大学の大学生・大学院生がTAとなり、教員1~2名と共に各ゼミ10名前後の生徒に対して指導に当たる。TA導入の狙いは、「生徒の論理的表現」の強化にある。「生徒の論理展開には、因果関係が確立されていない、また『よって』『従って』という接続詞を使って強引に自分の立てた仮説にもっていって、他の可能性を検討しないなどのいくつかの傾向が見られます。生徒に論理性の不足を認識させ、軌道修正していくには、一人一人に寄り添って指導していく必要があり、その役割をTAに担ってもらっています」と研究部部長の濵田 悟先生は話す。またTAが教師と共に、論理性が欠けている表現方法のパターン分析や指導法の研究なども行い、有効な指導法の見出しにつなげているという。TAは主に教員の人脈をもとに採用してきたが、今回三菱みらい育成財団の助成により、大学へ公募をかけ、採用人数を増やす予定だ。

 TAの充実とともに、同校は来年度に「探究基礎」の大きな見直しを予定している。1年次のHOPで生徒の自由度を上げ、かつ、より実践的に探究の型を学ぶ「理数探究基礎」を新たに開講。またJUMPが終わった2年生後期には、個人またはグループでさらに探究活動を進めるか、または後輩の指導に当たることで俯瞰(ふかん)的に探究を捉える選択制度を設ける。また3年生も自由選択で探究活動を行えるようにしていくという。20年以上の実績を基に、さらに生徒自身が自主的に学びのスタイルを確立できる仕組みを追求している。

2年次のゼミ発表会の様子。コロナ禍前は地域住民や教育関係者なども見学に来ることもあったという。生徒たちはここで出た意見をもとに論文をブラッシュアップしていく。

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