Program「インクルーシブ防災」から「地域の魅力発信」へ
~探究的な活動が高島市を動かす~
滋賀県立高島高等学校では、総合的な探究の時間を「高島学」と名付け、高島市役所の市民生活部や健康福祉部と協働で、防災および地域のもつ魅力、課題等についての様々な探究活動を行い、発信を続けてきた。
また、高島市においては、災害発生時に高齢者や障がいのある人を、「誰一人取り残さない地域」を目指す「インクルーシブ防災」の取組みが進み、その評価は、海外から視察が訪れるほど高い。
今回の教育プログラムでは、これまで本校が積み上げてきた「高島学」の取組みに、高島市の先進的な「インクルーシブ防災」の取組みを組み合わせ、「災害時に高校生がどのように共助に参加できるか」についてより実践的な探究を行っていく。
さらに、「地域の魅力発信」では、これまで市役所と協働で行ってきた「市内移住希望者」へのイベント企画や、琵琶湖の環境保全の等の探究を、ICTを活用することで、より発信型の取組みへと進化させる。加えて、インクルーシブ防災の取組みをも発信することで、住みやすく安心して暮らせる街としての高島市の魅力を伝える。

活動レポートReport
探究活動の見直しで育む「本物に触れる学び」
高島高校は、文理探究科と普通科のA類型(基礎学力重視)、B類型(進学特化)の三つのコースを設置。探究活動として、文理探究科とB類型は市役所や地域の機関と連携しながら活動し、A類型はワークブックで学びを進めてきた。「しかし、A類型の生徒が大学入試の面接時に『どんな探究をしてきたのか』と聞かれてもはっきり回答できなかったという事例が出たため、2024年度に本校の探究活動を見直すことにしました」と、橋本貴之先生は話す。
まずは1年生を対象に探究活動の基礎力「読み解く力」を育成。A類型の生徒は、図書室の本を紹介するポップや紙芝居作りに取り組むことで、活字に触れる機会を増やした。9月には、1年生全コースでビブリオバトルを実施。「普段はおとなしい生徒が、あんなに堂々と発表できるとは」など、多くの教員から驚きの声が聞かれたという。
2年生のA類型では、市役所や地域の専門家と連携し、防災、福祉、高齢者問題のいずれかのテーマに取り組む。B類型と文理探究科は、4人1組の班を作り、生徒の関心と担当教員の専門性を踏まえながらテーマを決め、琵琶湖のマイクロプラスチック調査や、地域に残る和算の研究など、多岐にわたるテーマについて取り組む。3年生は全コースでそれまでの集大成として卒業レポートを作成している。
これまでも外部と連携していたが、「見直しの際に重視したのは『本物に触れる、現地に行く』ことです」と橋本先生は話す。A類型では防災グッズの使い方や有効性の検証、また車椅子や妊婦体験スーツを使ってみるなど、生徒に「体験」を促している。またB類型と文理探究科では、復興の現状を肌で感じるために、初めて県外に出て、能登半島地震の現場を訪れた。
並行して全校の活動を地域全体で支える仕組みとして、市町村や高等教育機関、産業界等とのコンソーシアム構築も進行中だ。
26年度からの本格始動を前に、25年度には、地域で得た学びを還元する場として、A類型の2年生が探究で得た防災の知見を小学生に伝える「防災フェス」を企画。高島市はすべての人々を取り残さない「インクルーシブ防災」を掲げていることもあり、市との連携も図っている。三谷忠義教頭は、「人口減少などもあり、各方面からの高校生に対する地域の担い手としての期待は大きい。日常からまた有事にも自分たちで考えて動ける人材育成策として新たな探究活動を推進していきます」と力強く語った。
地盤が隆起したため利用できなくなった能登半島の漁港を訪れた生徒たち。改めて地震の影響の大きさを実感した
津波によって陸地に乗り上げた船の調査も行った