Program「越境」探究学習プログラム~つながる・未来を考える~
総合的な探究の時間において、「越境」をキーワードに、学校の枠を越えてさまざまな企業や大学、自治体等と連携することで、生徒が自身の文化・価値とは異なるものと出会い、刺激を受けて自己や社会の枠組みを変革していく力を育むことを目指す。
実地研修や生徒の問題意識につながるプロジェクトを実施し、生徒一人一人の興味関心に応じた探究活動を行う。生徒が、社会を構成する当事者として自己と社会のつながりを実感し、「つながることで未来を考える」と同時に「今の自分とつながる未来を考える」ことができるプログラムとする。
〈プログラムの一部〉
1年生:企業や自治体の講演を聴き、現場を取材する研修の実施。研修で疑問点を解消することを目指して参加する。
2年生:「提言」実際の社会的事象からテーマを決めて探究活動を行い、論文を書く。「創造」文章・音楽・美術・書道における表現方法を論理的に学び、社会の課題と芸術の関係性や、社会への問題意識と文学との関係性について考える。
3年生:探究活動の集大成としてポスター発表を行う。
その他、「未来の医療を創るプロジェクト」、「真庭バイオマス研修」、プログラムの発表の場として「成果発表会」などを計画。

活動レポートReport
学校・学年・教科の越境が生む新たな学び
広島大学附属福山高校の探究活動のキーワードは「越境」。1年生前半は「学校を越境」し、社会課題解決に取り組む企業を訪問・取材する。対象は、地元企業や卒業生のつながりで協力を得た5企業。学校で講演をしてもらった後、生徒たちはグループで議論を重ねながら取材準備を進めていく。当日は半日かけて事業を見学・取材し、その内容を2学期の初めに発表。後半はその経験をもとに、各自で探究テーマを決め、発表と相互評価を繰り返していく。これらの授業には、全教科の教員が伴走についている。「探究を担当する教員のメーリングリストを作り、毎週、次回の授業内容や生徒との関わり方をメールで発信して、教員の意識や取り組み方の方向性を合わせています」と、研究部の川中裕美子先生は話す。
2年生では「提言」と「創造」という科目のどちらかを選択。「提言」ではアンケート・インタビュー等の一次データ収集にも挑戦し、興味・関心に基づくテーマで個人研究を行う。「創造」は国語・音楽・美術・書道の授業をローテーションしながら、社会課題と結びつけた表現方法を練る。こうした探究活動の集大成として、3年生では「提言」のポスター発表や「創造」のクリエイティブな表現で成果を発表する。
2025年度の探究発表会は「学年を越境」して、3年生の発表を全学年で見る校内の会と、校外の施設を借りて全学年代表の発表を全校で見る会を実施。学年代表を選ぶ際に、1年生から「自分が発表したい」という声が出てきたことは予想外のうれしい反応だったと川中先生は話す。「大舞台での発表に躊躇するのではと思っていましたが、逆に発表したい、選ばれたいと楽しみにしているようでした。1年生後半で発表と相互評価を頻繁に繰り返したことで、発表に自信が付いたようです」。発表会後の感想も、下級生からは先輩の学びを探究に活かす機会になった、上級生からは下級生からの評価が励みになったと好評だった。
もう一つ取り組んでいるのが、異なる教科の教員が連携して取り組む「教科の越境」だ。「教員自身が協働して考えるよい機会となっています。先日は英語・国語・理科で連携して、詩を解釈する活動を行いました。生徒が葛藤しながら、答えが一つに定まらない課題に取り組むことも、探究学習につながっているように思います」と川中先生は成果を語る。学校・学年・教科という三つの視点からの越境を促す取組は、確実に生徒や教員の変容を生み出している。
広島大学と連携した「未来の医療を作るプロジェクト」や岡山県真庭市での「バイオマス研修」(写真)などの、生徒が任意で参加できるプロジェクトも実施。学校や地域を越境し、社会課題に向き合った経験を探究活動に活かしている
1年生の企業訪問の様子。取材先は、広島県福山市に本社を置くデニム生地製造メーカー。国内で唯一のデニム生地の紡績・染色・織布・整理加工の一貫生産ラインを持つ。紡績工程の様子を見学させてもらった
企業で取材した内容を報告し合う1年生