カテゴリー 22021年採択

株式会社 教育と探求社

対象者数 500名 | 助成額 681.8万円

https://eduq.jp/

Program探究活動を実践に移し、社会実装する部活動プロジェクト 「MIRAIB.(ミライブ)」

 生徒たちが自らの探究活動を、社会実装していくための部活動プロジェクト。全国の高校に「社会実装部」を設置。 

 リーンスタートアップやイノベーションなどの知見を盛り込んだ活動のためのプログラムを提供、社会人メンターが定期的に関わり、相談会やセッションを通じて、生徒たちの企画の社会実装をサポート。 

 年に1度、生徒たちの社会実装の活動を発表・共有し、学び合うための全国大会を開催し、「探究を社会実装へ」というムーブメントを起こす。 

 生徒が社会に働き掛けることで、自らの価値観を更新し、社会参画意識を育む。やがて、社会を変革する。その循環創出に向け、3年間で1,000人の活動参画を目指す。

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授業でともった“探究の火”を絶やさない

 学習指導要領の改訂により2022年度から全国の高校で「総合的な探究の時間」が導入されている。これに先立ち、正規課程の授業とは別に、課外活動である「部活動」という形で、探究学習の成果を社会に実装していこうというプロジェクトがスタートした。教育と探求社が提供する「社会実装部」改め「MIRAIB.(ミライブ)」である。

 教育と探求社は、社会に先駆けて2005年から探究学習プログラム「クエストエデュケーション」を提供してきたパイオニア。同社が今回、新たにMIRAIB.を提案する背景には、17年にわたる活動を通じて感じた「期待と限界」があるという。

「私たちは全国の学校に探究学習を提供する中で、子どもたちが想像以上の力を発揮するのを目の当たりにしてきました。子どもたちの豊かな発想やアイデア、そして大胆な行動力を、実際の社会で発揮してもらえたら、どれだけの成果が生まれるだろうと、大きな期待を抱いていたのです。その一方で、授業という枠組みの中では、継続的な活動時間を確保することが難しいという限界も感じていました」と同社創発部でチーフエヴァンジェリストを務める松本 優也氏は語る。

 実際、ある大手企業から探究学習の成果を評価された高校2年生のグループが、同社と共にアイデアの事業化に取り組もうとしたところ、周囲から「来年は受験に専念すべきでは」との声が挙がり、活動が立ち消えになったことがあったという。「せっかくともった探究の火が、授業や受験といった制約のために消えてしまうのは、あまりにもったいない。そこで、授業を通じて提供するクエストエデュケーションとは別に、より自由度の高い課外活動を舞台にしたMIRAIB.を立ち上げたのです」(松本氏)。

教育と探求社では、「何かを授けるのではなく、子どもたちが本来持っている力を発露させる」というスタンスの下、中学校・高校に探究学習プログラム「クエストエデュケーション」を提供。17年間に全国ののべ2,000を超える学校で、35万人以上が受講している。

自ら社会に働き掛ける体験が、これからの社会を生きるための学びとなる

 MIRAIB.では、生徒が主体的に参加し(参加は高校単位)、自由に活動できるという部活動ならではの特徴を生かし、探究学習を一歩進めて実社会での実践につなげていく。「探究活動の実践といえば、箱庭内でのシミュレーション的なプログラムが一般的ですが、MIRAIB.は実践そのものより、実社会と触れ合う中での学びを重視しています。自ら社会に働き掛ける体験を通じて、社会を変えていけるという実感を持ち、将来、主体的に社会へ参画していける人材を育成することが狙いです」と松本氏は語る。

 こうした体験を促すには社会との接点が必要となるため、MIRAIB.に参加する生徒たちには、社会人メンターによるサポートを提供。週に1度の定期的なミーティングはもちろん、SNSなどを駆使して随時連絡でき、プロジェクトの進め方やチーム内の悩みを相談したり、実践に向けたアドバイスやヒントを得たりと、貴重な機会となっている。

 また、日々の課外活動として行われる「チームミーティング」を円滑に進めるため、実践活動の基軸となる教材「ワークシート」を提供。自分たちの興味やアイデアを整理し、具体化に向けた計画作りの指針として活用してもらっている。

 社会人メンターとの「セッション」と、生徒主導での「チームミーティング」を繰り返すことで生まれた成果は、年度末の「実践共有会」で発表される。生徒たちにとっては活動の節目となる場でもあり、そこで卒業とするか、継続するかも生徒たち自身で決定する。また、ここでの評価によっては、次の活動に進むための奨励金が得られる場合もある。

 これら三つの活動を通じて、生徒たちは授業による探究学習で点火した心のエンジンを、実社会への実装へと駆動させていくのだ。

「セッション」を通じて生徒をサポートする社会人メンターは、MIRAIB.の活動主旨に賛同したボランティア。いずれも社会の第一線で活躍する企業人や起業家で、彼らとの対話そのものが、生徒たちにとって貴重な糧となるはずだ。

「MIRAIB.」はまだプロトタイプ、参加する生徒たちと共に完成させていく

「MIRAIB.に参加する生徒たちには『まずやってみることが大切』と伝えています。頭の中で考え続けるだけ、失敗を恐れて完成度を高め続けるだけでは、何も始まりません。不完全でもいいので、まずは最低限の機能を持つプロトタイプを作って、実社会で試してもらうことで、初めて得られるものがあります」と松本氏は語る。

 社会実装とは、実際に社会で使ってもらい、役立ててもらうこと。自分たちのアイデアや企画が実社会でどんな役に立つか、大人の眼で評価・批評されることで、生徒たちは新たな発見や気付きを得る。時には「企業に問い合わせをしても返事がない」「イベントを開催しても参加者が集まらない」など、社会の厳しさに直面することもあるが、そうした体験を受け止め「なぜ、そうなったのか」「では、どうすればよいのか」と考え、次の一歩へとつなげていくプロセスこそが、かけがえのない「学び」と言えるだろう。

 こうしたリーンスタートアップの思想は、MIRAIB.というプロジェクト自体にも当てはまる。象徴的なのがプロジェクト名だ。もともとは「社会実装部」としていたが、先生方にリサーチしたところ、主旨には賛同いただけたものの「ワクワク感がなく、生徒を誘いづらい」との声があり、未来を感じさせる名称にしたという。現在も、先生方からの声を踏まえ、名称を変えていくことも検討中だ。

 もちろん、こうした試行錯誤は内容面にも及んでおり、初年度の参加者から寄せられた声を基に、教材の内容や実行スケジュールなども逐次、見直しつつあるという。

「MIRAIB.は、参加してくれる全国の生徒たちと一緒に作り上げていくプロジェクト」と松本氏が語るように、今後も生徒たちの声を基にMIRAIB.は進化していくだろう。そして、より多くの生徒が参加し、その活動を活性化させることが、さらなる進化へとつながっていく。そうした好循環の中から、これから社会で活躍する人材が次々と輩出されることに期待したい。

「子どもたちに国際交流の機会を」との思いで、都内の女子高校生4人が立ち上げた料理イベント「グローバルキッチン」。初回は集客に苦労したものの、セッションでの振り返りを通じて改善した結果、2回目は参加者が倍増し、地域から大きな注目を集めた。

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