カテゴリー 42025年採択

駒澤大学

対象者数 100名  | 助成額 236.8万円

Program Join 禅プログラム~禅のこころでつなぐ世界と地域~

 本プログラムは、駒澤大学がその建学の理念である「禅」を基盤として計画する、国際交流と地域活性化をテーマにしたPBL(Project-Based Learning)型のパイロットプログラムである。
 本プログラムは、日本人学生と留学生が共に参加し、禅思想の基礎や実践に触れることを通じて日本文化への理解を深めることを目的としている。具体的な活動として、本学の教育の特色である教養教育を基盤とし、多様な分野の専門家の教育資源を活用した講義と指導、禅寺及びその周辺地域での体験・実習などが組み込まれている。これらの多様な学びを通して、国際的なコミュニケーション能力、異文化理解、そして地域社会や災害支援への貢献意識を高めることを目指す。
 最大の特徴は、国際交流と地域活性化・被災地支援に、駒澤大学ならではの教育資源である「禅」を掛け合わせている点である。冷静な判断力と他者への共感力を養い、共生の精神を育むことで、現代社会の課題解決に取り組む真のリーダーシップを備えた人材の育成を目的とする。
 このプログラムは3年間の試行を経て大学の正式な科目化を目指しており、将来的には、参加学生が国内外で日本の文化や地域の価値を発信するなど、大きな社会的波及効果が期待できる。

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活動レポートReport

禅の精神で取り組む国際交流・地域活性化・被災地支援

 全7学部17学科の学生が一つのキャンパスで学ぶ駒澤大学では、学部をまたいだ幅広い学びを得やすい環境を活かして、2025年に「Join禅プログラム(以下本プログラム)」をスタートさせた。本プログラムは、仏教系大学として「禅」の精神を建学の理念とする同大学ならではのリソースを活かし、国際交流と地域活性化、被災地支援という現代社会の重要課題に取り組む全学横断型のPBLプログラムだ。参加する学生は多様な国籍・学部・学年からなり、それぞれの関心や背景を理解し合いながら、協力して一つのアウトプットにつなげることを目指している。

 スケジュールは9月から半年間の集中型。仏教学部の石井清純教授を中心に、経営学部、グローバル・メディア・スタディーズ(GMS)学部、総合教育研究部から、自身の専門分野と禅を結びつけたいと手を挙げた5人の教員が参加している。本プログラムが生まれた背景には、石井教授がゼミで取り組んできた「禅の国際化」という研究がある。海外における禅の広がりを文献から読み解いたり、海外の禅僧を招いた講演会の開催などを行ってきた石井教授が、この研究を全学規模に展開したいと考え、同じ思いを持つ教授陣に声を掛けて、研修や実習を組み込んでいき、本プログラムの骨格が出来上がった。

 また、もう一つの背景として、同大学で2024年から始まった「教養パスポート」の存在もある。これは、全学共通科目からなる文理融合プログラムで、多様な教養科目の中から専攻には関係なく、興味のある科目を自由に選んで受講できるシステム。必要な単位数を修得することで、修了証とオープンバッジが授与される。本プログラムとの連携としては、前述の5教員が担当する科目に、本プログラムの受講者をスポット参加で受け入れるなどの連携を取ることで、プログラム運用における負荷低減を図ることができる。本プログラムの運営主体は、教務部学務課教育支援係で、学内調整から学生募集まで幅広い業務を担っている。

2025年に同大学で開催された数学の国際学会の際に行われた坐禅会。海外での禅への関心は年々高まっているという

永平寺や能登の被災地など、
同大学の縁の地でのフィールドワークを実施

 プログラムは大きく3つのフェーズ(基調講義・フィールドワーク・グループワーク)で構成され、前半は禅の基本精神をはじめ、禅の国際化、災害支援、プロジェクトマネジメントの方法や海外での実例などについて、基調講義とディスカッションを行う期間である。それと並行して希望者による、永平寺や總持寺祖院、2024年の大地震で被災した能登地域でのフィールドワークを経て、後半は3班に分かれてのグループワークに取り組む。

 2025年度は想定していた20人を上回り、留学生4人を含む34人が本プログラムに参加した。曹洞宗大本山の永平寺における禅体験には13人が参加。坐禅だけでなく、禅をテーマにした持続可能な観光に取り組む地域の活動や、門前町の復興に向けた取り組みについての講演も伺った。

 能登地域のフィールドワークでは8人が現地に赴き、廃材の撤去やICT支援などを行った。また、記憶を未来へつなぐことを目指し、昔の街並みやお祭りの写真を集会所に展示するイベント「思い出サロン」の開催にも協力し、地元の方々から被害の実態を直接聞く機会も設けられ、現地でしか得られない生々しい現実と向き合った。能登にはもともと永平寺と並ぶ大本山の總持寺があり、同大学にとっても縁の深い場所。同寺が明治期に焼失して横浜市に移転した後に、地元の方々の願いで別院として再建された總持寺祖院と門前町も、地震によって甚大な被害を受け、未だ復興途上にある。「被災地支援に関しては、柴田邦臣GMS学部教授が、以前からゼミのテーマとして取り組み、能登半島地震の際も発生直後から活動していたため、本プログラムでもその一環として受講生に参加してもらいました」と石井教授は話す。

 プログラム後半は「禅の国際的普及」「禅×アート」「震災復興」の3つの班に分かれてグループワークを行い、学内で成果発表を行った。多様な学生が集まり、互いの意見を尊重しながら共通の目標に向かって協力し合う経験は、学部ごとの学びでは得られない刺激をもたらしたようだ。「禅の国際的普及」の班では、禅の体験型テーマパーク「ZEN BOX」という空間をはじめ、作務衣型の安眠パジャマ、竹の感触でデジタルデトックスをサポートするスマホストラップ、廃プラスチックを利用した修行時に使う入れ子椀(応量器)を参考にした省スペース食器など、禅の精神を現代の生活に落とし込んだサービスや製品の提案を行った。「禅×アート」の班は、仲田資季教授(総合教育研究部)による「教養ゼミ」に参加する形で、禅の静けさとつながり、気づきを視覚化した造形作品とプロジェクションマッピングを制作し、学内外で広く注目を集めた。「震災復興」の班は、実際に能登で体験した活動の報告に加え、新しいクラウドファンディングの仕組みの提案などを行い、ハード・ソフト両面での継続的支援の必要性を訴えた。

 第1期のプログラム受講者からは、「普段交流のない他学部の学生や教員、留学生などと意見を交わすことで視野が広がった」、「個人的で静的なイメージがあった禅だが、身近な生活にもその思想が反映していて、国際的にも広がっていることを知った」、「坐禅による内的修行だけでなく、被災地での泥出しやICT支援など、実際に行動に移すことも禅における崇高な修行だと実感した」など、新たな発想につながる感想が多く見られた。また石井教授も、「永平寺での禅体験に感銘を受け、学内の坐禅の授業にも積極的に参加するようになった留学生もいます」と本プログラムが継続的な学びにつながっている手応えを感じている。

能登のフィールドワークでは被災家屋の廃材の運び出しなども行った

「思い出サロン」に掲示する写真の整理などにも参加した

永平寺での禅体験。精進料理を禅の作法に則って頂く

大本山・永平寺に足を踏み入れると、学生たちは一様に厳粛な面持ちになった

2年目の受講者数は増大。新たな試みも進行中

 2026年度の受講者募集は既に終了し、2025年度を上回る56人が登録済み。交換留学生の参加を加えれば60人近くに達する見込みだという。スケジュールは25年度と同様だが、受講者増加への対応と、より参加しやすい授業を目指して、新たな工夫が加えられている。

 座学パートに関しては、オンデマンドの講義を一部取り入れることでスケジュールを短縮し、グループワークに時間を割けるようにした。また永平寺、能登でのフィールドワークに加え、横浜市鶴見の總持寺での禅体験も企画している。「キャンパスからも近いので、日程の都合がつきにくい学生も広く参加できるようになるでしょう」と石井教授。

 グループワークには、青木茂樹経営学部教授による「プロジェクトマネジメント」が新たに加えられ、4つの班に分かれての活動となる。また、講義や授業内の各種講演、フィールドワークなどでは、可能な範囲でオープン参加を受け入れ、より多様な参加者との知識や経験の共有が促されるように計画が進んでいる。

 能登での震災復興に限っては、民俗学的にも貴重な「ごうらい祭り」の開催に合わせて、活動を7月に前倒しして実施した。これは指導教員を通して、現地の方々からお願いされていたもので、地域との交流が成功している証。「駒澤の学生さんのおかげで3年ぶりにお祭りができました」と感謝の言葉を頂くとともに、現地のメディアにも大きく取り上げられた。 

「学部を越えた教員が集まってこのようなプログラムを行うのは、本大学では初めての試みでした。また、永平寺・總持寺での参禅研修会も、学生の保護者向けには毎年行ってきましたが、学生向けに行うのは初の試み。いろいろ試行錯誤しながら進めています」と石井教授。それぞれの教員が担当する授業やゼミで個別に続けてきたリソースを中心として、そこに「禅」という思想的要素を加え、教室の中では得られない学びを、学生が実際に見て、聞いて、体験することで本プログラムが成り立っている。

 本プログラムは3年間の試行期間を経て、正規科目としてカリキュラムに取り込むことを目標としているが、現時点では学内調整中の段階。しかし、成果発表会や学外メディアへの露出の影響もあり、社会的認知度は着実に上昇し、受講者数も大幅に増加した。今後も引き続き、受講生の学習成果はもちろんのこと、フィールドワークで訪れる地域の方々との交流なども効果的に発信していくという。「大学のホームページやSNSを利用し、動画資料を含む情報を積極的に学外に向けて発表する体制が整いつつあります」と石井教授。学内においては交換留学生への周知にも力を入れ、よりグローバルな交流の場としての機能も強化していきたいと語る。

 

 

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